島本 葉

https://kakuyomu.jp/users/shimapon/works 普段はカクヨムで短編を書いています。 こちらでは、ちょっとした雑記とかエッセイのようなものも書いてみたいです。

島本 葉

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マガジン

  • 島本のお気に入り

    気に入ったものを保存しておく用。島本の好みなものを入れています。 多分、小説やエッセイが多くなるかな

  • 島本の葉っぱ

    習作の小片。 500字~1,000字程度のもので、シーンの切り取りのようなもの。

  • 便りの先に(郵便碁)(短編小説)

    ──これは郵便を通じた碁のお話 急逝した祖父に届いていた一通のはがき。 『白 八十二手 12の三』 そこに書かれていたのは、囲碁の着手だった。 十話完結です。

  • 僕と姪の梅しごと(短編小説)

    ママの大好きなものを一緒につくろうか 四歳になる姪っ子はとても可愛く、我が家の中心だ。 初夏のある日、忙しいママのために僕と姪っ子で梅ジュースを作ることにした。

最近の記事

  • 固定された記事

囲碁を題材にした短編小説。「碁敵と書いて友と読む」約5,000字

碁敵と書いて友と読む 「池上くん、10月で辞めるんだって」  社内の休憩スペースに設置された自動販売機に少し縒れた千円札を苦心して突っ込んでいると、数名の女性社員が弁当を広げながら会話しているのが耳に入った。  思わず目を向けてしまう。  彼女たちの話によると、池上が近々退職するらしいということだった。  大手の代理店に転職するとか、家庭の事情だとか、嘘かホントかわからないようなことを交えて、少し声を抑えながら話していた。  退職?  池上が?  池上は前は同じ部署で働いてい

    • (エッセイ)ルービックキューブはじめました

       さて、みなさんはルービックキューブをご存知でしょうか。エルノー・ルービックという方が考案された立方体のパズルで、小さな立方体が3×3×3になっており、1列ずつ回して6面すべての色を揃えるというもの。1面を揃えるだけならまだ簡単なんだけど、6面全てとなるとこれがなかなか難しかったりするのです。日本では1980年にブームになったので、子どもの頃に家にあったよという人も多いかも。やったことあるかしら?  島本、最近ルービックキューブはじめました。  今回はそんなお話でございます。

      • (短編小説)サーモンフライ

         賃貸の契約を終えて外へ出ると、太陽がほぼ真上からキツめの日差しを投げかけていた。愼也は手でひさしを作るようにして目を細める。乱雑に放り込んでいたキャップを伸ばしながら被って顔をあげると、目の前には広がるのは見慣れぬ町並みだった。  ――来月から広島に行ってもらえるかな。  急に呼び出された会議室で部長に言われたのはどれくらい前だったか。そこからの日々はあっという間に過ぎ去っていき、転勤の日は間近に迫っていた。今日はなんとか家を決めておかなければと、これから住むことになる

        • (掌編)霧の朝【シロクマ文芸部】

           霧の朝、静寂な町にトッ、トッ、トッとカブのエンジン音が聞こえてくる。新聞配達だろうか。どこか懐かしいような、心地よい一日の始まりを感じさせる響きだた。  図書館で借りた重みのあるハードカバーから顔を上げる。返却期限が近づいたため、少し読んでみて気に入らなければそのまま返してしまおうと思っていた。それなのに、気づけば朝を迎えていた。  カップの底には冷めきったココアが少しだけ残っていた。  物語に心が入り込んでしまって少し腫れぼったくなった瞼にカップをあてると、じんわりと熱が

        • 固定された記事

        囲碁を題材にした短編小説。「碁敵と書いて友と読む」約5,000字

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        • 島本のお気に入り
          10本
        • 島本の葉っぱ
          32本
        • 便りの先に(郵便碁)(短編小説)
          10本
        • 僕と姪の梅しごと(短編小説)
          5本

        記事

          (短編小説)星空の約束

           夜道を歩きながら、あ、これは夢だなと思った。  今歩いているのは、見知った住宅街の道だけど、もうこの街には住んでいないのだ。通学路だった道を、見覚えのあるブロック塀を横目に進んでいく。時間はかなり遅い時間なのか、周りの家の電気も消えて、自販機や街灯からぼんやりと光が広がっていた。  ふと気づくと、ぽつんとバスが一台止まっていた。煌々と明かりを放つ車内。暗闇にオレンジ色が映えて、そこだけやけに暖かそうに見えた。  次の瞬間、僕は手ぶらのまま車内に足を踏み入れていた。この展開の

          (短編小説)星空の約束

          (短編小説)冬至

          1  十二月にもなれば暦の上だけでなく、気候的にもしっかりと冬になる。今日は日差しがあるな、と油断していると想像以上に冷たい風が吹き付けるのだ。 「寒い、寒い」    と、連続して口にする。まるで暖かくなる魔法の呪文のように。この時期になると私だけではなく多くの人が唱えるこの呪文だが、ご存知のように全く効きはしない。  例えば吐く息が白くなった。自転車に乗るときに手袋が欠かせない。赤い帽子のおじいさんがショーウィンドウに添えられる。最近はそういったことで冬という季節を認

          (短編小説)冬至

          先輩(140字)

          「あれ? 先輩?」 横断歩道の向こうにいたのは前職でお世話になった先輩のようだった。 人違い、じゃないよね? こっちに気づいたのか、その男性が片手をあげた。あ、やっぱ先輩だ。私も嬉しくて手を振ってにこりと合図する。 「せんぱ──」 タクシーが停まりそのまま先輩(?)を乗せて走り去っていった。

          先輩(140字)

          ゆうれい?(140字)

          「ねえ、肩が重いと感じないかしら?」  霊感があるという噂の高見さんが背後からボソリと言った。なにか憑いてるとかそんな話? 「そんな感じしない、けどな…」  ビクビクしながら彼女から逃げるように教室を出た。なんか首や肩に違和感まで感じてきた。  帰宅して鏡を見た。  Tシャツが後ろ前だった。

          ゆうれい?(140字)

          ポケットの中には(140字)【シロクマ文芸部】

          木の実と葉っぱが娘のスカートのポッケから出てきた。 「あの子のポケットはなんでも出てくるのよね。小石、紙くず、アメ玉の袋。ダンゴムシはやめて欲しいけど」 「宝物かもよ?」 僕の言葉に妻はクスリと笑った。 「あ」 妻の手には僕のスラックスから出てきたのど飴の袋が。 「これは宝物かしら?」 了 こちらの企画に参加します。 ちょっとした日常のシーンを。 楽しんでいただけると嬉しいです。

          ポケットの中には(140字)【シロクマ文芸部】

          (短編小説)黄色い風船とスカート

          「じゃあ彩夏ちゃん、また学校でね。バイバイ」 「バイバイ」  病室から出ていくむっちゃんの背中を見送ると、急に部屋の温度が下がったような気持ちがして、泣きそうになった。学校帰りにお見舞いに来てくれたむっちゃん。この入院はそれほど長くないと言われているので、次に会うのは退院したあとだ。  時刻はまだ十七時を過ぎたところで、ベッドの上で動けない私にとって、この心がひんやりとした時間はまだまだ長く続きそうだった。  視線を下げて自分の身体を見る。  ベッドには包帯をぐるぐる巻かれた

          (短編小説)黄色い風船とスカート

          じゅげむじゅげむ(140字)

          「昨日落語聴いたんだ、あの『寿限無寿限無五却のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長」「その話長い?」「いや面白かったって話。そこで切る?」

          じゅげむじゅげむ(140字)

          しんごうの憂うつ(掌編小説)【シロクマ文芸部】約1,000字

           夕焼けは「まあ話してみなさいよ」と優しげに言った。今日は雲も少なくて、青い空の西の底から薄っすらとピンク色が滲み出すような、可愛らしい夕焼けだった。 「あそこにマンションができたんだけどね」 「うん、それで?」  ぼくがポツリと話しはじめると夕焼けはゆっくりとあいづちを打って先をうながした。 「駅の方に行くにはここを通ってもらえばいいんだけど、その前に渡っちゃう人が多くなったんだよね」  いまも青い光を灯してぴよぴよと鳴らしているのに、少し先の通りを横切るように子供

          しんごうの憂うつ(掌編小説)【シロクマ文芸部】約1,000字

          別れ話(140字)

          「もう別れましょう」 彼女が急にそう切り出した。 「どうして!? 考え直してよ」 彼女は首を横に振る。別れましょうの一点張り。それは困るのだ。 「僕、枕が変わると眠れないんだよ」 「私あなたの枕じゃないのよ」 「お願いだよ。他も試したけどだめだったんだ」 「そういう所よ」

          別れ話(140字)

          (短編小説)オセロを君と

           入浴後にお風呂を洗い終えてリビングに戻ると、ふんわりとコーヒーの香りが漂った。愛用しているコーヒーメーカーが抽出を始めたようで、しゅわしゅわという蒸気の音が心地よい。 「何読んでるの?」  香菜さんがソファでなにか読んでいるようだったので、声をかけながら背中から覗き込む。まだ濡れた髪はタオルでぐるぐる巻かれていて巻貝の帽子を被っているようだった。 「これ」  言いながら香菜さんが向けてきた表紙は、何年か前に映画になっていた作品の原作本だった。背表紙の片隅には図書館の蔵書を示

          (短編小説)オセロを君と

          風の色 (掌編小説)【シロクマ文芸部】約1,100字

          「風の色なんて無いよ。透明で目に見えないじゃない」  こぎつねの女の子は鼻をフンと鳴らしていいました。ふくろうオジイは愉快そうに目を細めて、フォフォフォと笑いながらいいました。 「それはどうじゃろうな。明日みんなにも聞いてみるといい」  次の日、こぎつねは森で出会ったさるのおじさんにたずねました。 「風の色かい? おいらは橙色だなぁ」  おじさんはひょいと手を伸ばして、木に生った柿を二つ取ると一つをこぎつねに渡しながらにやりと笑いました。 「なによ! 柿の色を聞い

          風の色 (掌編小説)【シロクマ文芸部】約1,100字

          秋(140字)

          「読書の秋って言うよね」 「言うね」 「読む量変わった?」 「いや、変わらない。平均週二冊」 「スポーツの秋って言うよね」 「言うね」 「運動してる?」 「いや、普段から一切しないぞ」 「食欲の秋って言うよね」 「言うね」 「いつもと違う?」 「毎日おいしい」 「365日秋じゃね?」

          秋(140字)