彼は
白菫
これまでもこれからもきっと素敵な人に出逢うのだろうと思います。
だけれどその中で自分にとっての特別な人はそんなにいなくて、またさらにその中で自分のことを特別だと思ってくれる人はほとんどいないと思うのです。
そんなこと分かっているけれどそれでもいいんだって思えるほどに特別な人は、何度諦めようとしても諦めきれなくて、この束の間の幻想のような今だけでも独り占めしたいと思ってしまいます。
きっと叶わなくて儚く散ってしまう苦しいだけの想いだとしても今だけは夢を見ていたいと願うものなのだと思うのです。
過去にしがみついて、前に進めずに怯えている私をそっと包み込んでくれる優しい人なのです。素直になれず、落ち込んでいる私をいつも呆気なく、いとも簡単に笑顔にしてくれる不思議な人なのです。
その人は私にいつも言うのです。
「元気?心配してた」
その人は私にいつもくれるのです。
その人の苦手なキノコと
顔全部のシワというシワをくしゃっと縮めた、とっておきの笑顔を
このどうしようもない消えない想いをあなたどうしろというのでしょうか
きっとあなたは私のことを少し悲しそうに少し困ったように微笑みながら
「どうしようか」
って訊くのでしょう?!
そんな人なのに、
そんな人だから、
私は
ずっと世界に怯えたままで、
ずっと一人のままで、
ずっとあなたに惹かれたまま、
ずっとあなたは特別な人のままなのでしょうね
だから私はその人に感謝しようと思うのです。
きっと私はこの想いをもてたことを誇りにできるでしょうから
あなたの過去も経験も何も知らないけれど、
あなたに惹かれるばかりで、
そんな私は馬鹿みたいね
あなたに訊いたら答えてくれるの?
自分のことを悪い人っていうあなた
じゃあどうしていつもいい匂いがして
じゃあどうしていつも素敵な声で
じゃあどうしていつも優しくて
じゃあどうしていつも心配してくれて
じゃあどうしていつも私の中に入ってくるの?
どうして
教えて
悪い人なのに悪い人じゃないのはどうしてなの?
教えて
最近君は方言で話してくれるようになって
最近君は君からギュッと抱きしめてくれるようになって
最近君は甘えてくれるようになって
最近君は私の胸の上でいびきをかきながらぐっすりと眠ってくれるようになって
最近君は私を自分の職場に連れて行くことを躊躇しなくなって
どうしてそんなことするの?
勘違いしてしまうのに
分かってない、
君は何も、
私の気持ちなんか
でもね、
いいの、
そんな君が好きなの
どうしようもなくね
ごめんね