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資格の力でキャリアをアップ!

副題:業務独占・名称独占資格の違いと給与への影響を分析


はじめに

この記事の目的

 例年10月~11月は多くの資格の試験が実施されます。この記事では、「資格所持と給与の関係」を分析します。資格を多く取得している人と、取得している資格が少ない人、または全く取得していない人との間に給与の正の相関があるかどうかを探ります。特に、国家資格の分類(業務独占資格、名称独占資格、必置資格、技能検定)が給与にどのような影響を与えるのかを解説します。訪問看護や教育職、技術職などの具体的な職種を例に挙げ、資格取得が収入やキャリアにどう影響するのかを明らかにし、適切なキャリア戦略を見つける一助となれば幸いです。


資格所持と給与に関する一般的な認識

 一般的に、資格を所有している人は、持っていない人よりも給与が高いという認識があります。しかし、その相関の強さや影響度は、資格の種類や職種、業界、地域によって異なります。資格は大きく以下の4つに分類され、それぞれが給与やキャリアに与える影響も異なります。
また一部の資格は、これらの分類が重複する場合があります。例えば、一級建築士は、業務独占資格であると同時に、特定の事業に従事するための必置資格でもあります。また、弁護士のような資格は、業務独占資格でありながら、名称独占資格でもあります。このような資格は、業務の独占性とその名称を使用する権利が結びついているため、特に高い専門性や責任が求められる分野であることが多く、給与やキャリアアップに強い影響を与えることがあります。

  • 業務独占資格: 特定の業務を行うために必須の資格で、有資格者以外はその業務を行うことができません。

    • : 医師、弁護士、公認会計士、一級建築士など。

  • 名称独占資格: 特定の名称を使用することができる資格で、有資格者以外はその名称を名乗ることができません。

    • : 栄養士、保育士、中小企業診断士、マンション管理士など。

  • 必置資格(設置義務資格): 特定の事業を行う際に、法律で設置が義務付けられている資格です。

    • : 衛生管理者、食品衛生管理者、宅地建物取引士、施工管理技士など。

  • 技能検定: 技能の習得レベルを評価する国家検定で、合格することで「技能士」と名乗ることができます。

    • : ファイナンシャル・プランニング、知的財産管理、鋳造、⽯材施⼯、建築⼤⼯など。

※一部資格は分類で重複しております。資格の側面が強く現れる分類で整理して記載しています。


資格所持の有効性

資格所持が収入に与える影響

 資格を取得することは、収入に対して有効な手段の一つです。特に、業務独占資格は、資格がなければその業務自体が行えないため、高い給与水準が設定されることが一般的です。例えば、医師や弁護士は国家試験を合格し、免許を取得することで初めて業務を行うことができ、その専門性や責任の重さから高収入が期待できます。

 一方、名称独占資格必置資格技能検定も、給与やキャリアアップに影響を与えますが、その度合いは業界や企業によって異なります。資格手当が支給される場合もありますが、その金額や影響度は様々です。

資格手当と給与アップのメカニズム

 資格手当は、資格を取得することで受けられる資格手当などの追加の給与です。しかし、その金額や給与への影響度は、勤務先の規定や地域によって大きく異なります。例えば、訪問看護の分野では、認定看護師や専門看護師の資格を持つことで資格手当が支給される場合がありますが、その金額は数千円から数万円と幅があります。

 また、必置資格を持つことで、事業運営に不可欠な役割を担うため、資格手当や役職手当が支給されることも多いです。企業にとって必要な資格であるため、保持者は重宝されます。
必置資格の代表例として、例えば宅建では業務に従事する者の数の5分の1以上の成年の専任の宅地建物取引士、要は事務所に従事する者が10人の場合、2人以上の専任の宅地建物取引士が必要となります。

職業別の資格と収入の関係

 職業別に見ると、資格と収入の関係は多様です。医療分野技術職教育分野では、資格取得が給与やキャリアアップに影響を与えることが一般的です。しかし、その影響度や仕組みは職種によって異なります。



具体的な職種と資格の関係

医療分野:看護師、医師、薬剤師など

 医療分野では、業務独占資格が多く、資格取得が就業の必須条件です。

  • 医師: 医師免許(業務独占資格)を取得することで診療が可能となり、高い給与が設定されます。日本医師会のデータによれば、医師の平均年収は約1,200万円とされています。

  • 看護師: 正看護師(名称独占資格)の資格を持つことで看護業務が行えます。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2022年)によると、看護師の平均年収は約480万円です。さらに、認定看護師や専門看護師の資格を取得することで、専門性が高まり、資格手当や昇進に繋がります。

  • 薬剤師: 薬剤師免許(業務独占資格)を取得することで、調剤業務が可能となります。薬剤師の平均年収は約550万円とされています。

教育分野:教師、保育士など

 教育分野では、名称独占資格が中心です。

  • 教師: 教員免許状(名称独占資格)を持つことで、教育職に就くことができます。公立学校の教師の給与は、経験年数や役職によって決まりますが、特別な専門資格(例:特別支援教育の資格)を持つことで、手当が支給される場合もあります。※例外規定があるためこちらに分類してます

  • 保育士: 保育士資格(名称独占資格)を持つことで、保育業務が可能です。保育士の平均年収は約350万円ですが、資格手当が支給される場合や、施設によっては給与に差が出ることもあります。

技術職:エンジニア、建築士など

 技術職では、業務独占資格技能検定の両方が重要です。

  • 建築士: 一級建築士や二級建築士(業務独占資格)を取得することで、設計や工事管理が可能となり、高い給与が期待できます。一級建築士の平均年収は約700万円とされています。

  • エンジニア: IT分野のエンジニアでは、情報処理技術者試験(国家資格)やベンダー資格(例:シスコ技術者認定)が評価されます。資格を持つことで技術力を証明し、昇進や給与アップに繋がる場合がありますが、その影響度は企業の評価制度によります。

  • 企業の評価制度の多様性: 特にエンジニア分野では、企業によって資格の評価が大きく異なります。具体的な企業事例や業界動向を示すと、読者の理解が深まります。

    • : 「大手IT企業A社では、資格保有者に対して明確な給与テーブルが設定されていますが、中小企業B社では実務経験がより重視される傾向にあります。」

    • このように、同じ資格を持っていても、企業の規模や評価制度によって給与やキャリアアップへの影響が異なります。したがって、就職・転職の際には企業の評価制度を事前に確認することが重要です。


資格取得によるキャリアアップの事例

成功事例の紹介

  • 一級建築士の取得: 二級建築士から一級建築士(業務独占資格)にステップアップすることで、大規模な建築物の設計が可能となり、給与が大幅に増加したケースがあります。特に、建設会社では一級建築士の資格保有者を高く評価し、プロジェクトリーダーとして抜擢することもあります。

  • 訪問看護師の専門資格取得: 訪問看護師が認定看護師専門看護師の資格を取得し、専門性を高めたことで、資格手当が支給され、給与が増加した例があります。また、在宅医療のニーズが高まる中で、専門知識を持つ看護師は貴重な存在となり、キャリアの幅も広がります。

  • 保育士のキャリアアップ: 保育士が児童発達支援管理責任者(必置資格)を取得し、施設の運営に不可欠な存在となることで、給与アップや役職手当が支給されたケースがあります。

失敗事例の分析

  • 資格を活かせない環境: 業務独占資格を取得したものの、その資格が必要ない業務に従事し続けたため、給与に反映されなかった場合。

  • 技能検定の過小評価: 技能検定に合格したが、企業がその資格を評価しないため、昇進や給与アップに繋がらなかった例。中小企業では、資格よりも実務経験が重視される場合もあります。


意外な共通点と今後の展望

資格取得の動機と経済的背景

 資格を取得する動機として、給与アップキャリアの安定を目指すことが多いですが、その背景には地域経済や業界の状況も影響しています。例えば、地方では求人が少なく、資格を持つことで他の求職者との差別化を図る必要があります。

 また、業界によっては資格保有者が増加し、資格自体の希少性が下がっているケースもあります。そのため、資格取得だけでなく、実務経験や他のスキルとの組み合わせが重要となっています。例えば介護福祉士の資格保有者は年々増加しており、資格だけでは他者との差別化が難しくなっています。

未来のキャリア戦略

 今後のキャリア戦略として、以下の点が重要です。

  • 資格の種類を理解する: 自身のキャリアに必要な資格がどの分類に属するかを理解し、その取得を目指す。特に、業務独占資格は高収入に直結する可能性が高いため、取得を検討する価値があります。

  • 資格を活かせる職場を選ぶ: 資格の価値を認め、給与やキャリアアップに反映してくれる企業を選択する。企業の評価制度資格手当の有無を事前に確認することが重要です。

  • 継続的なスキルアップ: 資格取得だけでなく、経験や実績を積むことで、総合的な市場価値を高める。特に、IT業界や医療業界では技術や知識が日々進化しているため、最新の情報を学び続ける姿勢が求められます。

  • 複数の資格の組み合わせ: 複数の資格を組み合わせることで、専門性を高めるとともに、キャリアの幅を広げることができます。例えば、看護師がケアマネージャーの資格を取得することで、医療と介護の両面から患者をサポートできます。


まとめ

この記事の要点

  • 国家資格の分類(業務独占資格、名称独占資格、必置資格、技能検定)は、資格取得が給与に与える影響を理解する上で重要である。

  • 業務独占資格は給与への影響度が高く、資格取得が高収入に直結しやすい。

  • 名称独占資格必置資格技能検定も、給与やキャリアアップに影響を与えるが、その度合いは業界や企業によって異なる

  • 資格取得だけでなく、経験やスキル、適切な職場選びも重要であり、総合的なキャリア戦略が求められる。

結論

 資格を取得することは、給与アップやキャリアアップに有効な手段の一つですが、それだけに依存せず、自身のキャリア目標に合った資格を選び、その資格を最大限に活かせる環境で働くことが重要です。また、給与に影響を与える他の要因(経験年数、スキルセット、勤務形態、地域経済など)にも目を向け、総合的なキャリア戦略を立てることが必要です。

 今後も、資格取得によるキャリアアップは将来にむけての重要な戦略となるでしょう。しかし、資格の取得だけで満足せず、継続的な学習スキルの向上、そして適切な環境でその能力を発揮することで、より豊かなキャリアを築くことができます。


厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2022年)
日本医師会「医師の給与に関する統計データ」
国土交通省「建築士制度の概要」
文部科学省「教員免許状に関する制度」
経済産業省「IT人材の給与と資格に関する調査」
日本看護協会「看護師の給与と待遇に関する調査」

参考文献


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