退職金とiDeCo:令和7年税制改正の影響
はじめに
私自身も50代ですが、そろそろ退職金の受け取り方や税金について真剣に考えるようになりました。退職金は私たちビジネスパーソンにとって重要な老後資金ですが、受け取り方やタイミングを誤ると、想定以上の税負担が発生することがあります。私自身は普通のサラリーマンをしながら節税に取り組んでいました。その一つである「iDeCo」「企業型DC」に影響する税制改正がほぼされそうなのでどう対応するか考えたいと思います。
令和7年度税制改正では、退職所得控除に関する変更が予定されています。本記事では、改正内容とその影響のポイントを解説します。
令和7年度税制改正大綱は令和6年12月27日に政府の正式な閣議決定。
閣議決定は「政府として実施方針が確定している」ことを意味します。
そして具体的な法改正案として提示されており、今後の国会審議を経て正式に法律として成立することが前提となります。
令和7年度税制改正の大綱(財務省へリンク)
1. 退職所得控除とは?
まずはおさらいです。これも見直しがたびたび出されますが・・・。
退職金を受け取る際には、税負担を軽減するために退職所得控除が適用されます。計算方法は下記です。
退職金の税金は優遇される仕組み:退職金は「退職所得」として扱われ、退職所得控除後の金額に対して税金が計算されます。
例:30年間勤続した場合で2,000万の退職金をもらった場合
退職所得控除額 800+70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
退職所得:(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2
(2,000万-1,500万)×1/2=250万 ←に課税(税金がかかる課税退職所得金額)
この場合は下記の表から10%のため25万で控除額97,500円のため
152,500円が所得税。実はこれに復興特別所得税2.1%ってのもあり3,202円、また住民税は250万×10%で25万ですから合計すると
152,500+3,202+250,000=405,202円が税額になります。
2. 令和7年度税制改正:退職所得控除の見直し
改正内容
・過去9年間に老齢一時金※や退職金を受け取った場合、退職所得控除が重複して適用されないように調整されます。
適用時期(未確定・前述したとおり国会審議次第): 令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払いを受けている場合
背景
・iDeCoや退職金の受け取りタイミングを調整することで不公平な節税が発生しないよう、ルールを見直した。
影響
・複数回の退職金受け取り:9年以内に複数回退職金や老齢一時金を受け取る場合、控除額が制限されるため、手取り額が減少します。
$$
\begin{array}{|l|c|c|} \hline \textbf{項目} & \textbf{改正前(5年ルール)} & \textbf{改正後(9年ルール)} \\ \hline \text{適用期間} & 5年間 & 9年間 \\ \hline \text{控除の重複} & 5年空ければ再度適用可 & 9年以内は制限される \\ \hline \text{書類保存期間} & 7年間 & 10年間 \\ \hline \end{array}
$$
例えば先ほどの仮にAさんとしてこの人がiDeCoをしており200万の積み立てがあったとします。
2024年12月28日現在の現行制度では
同時にもらった場合は2,200万となり
(2,200万-1,500万)×1/2=350万 税率20%で70万-427,500=272,500円
iDeCoの200万を60歳で貰い退職金を65歳とずらせる場合は
iDeCoの200万は非課税で退職金所得は前述のとおり250万では152,500円とできていました。
簡単に言うとこのiDeCoの給付金を先に受け取り、5年以上経ってから退職金を受け取る方法でずらし技を塞がれた(抜け道封鎖)改正となります。
いわゆる「iDeCo(イデコ)改悪」と言われています。
どう塞がれたかというとiDeCoは60歳で一時金でもらい退職金を65歳と5年間ずらすことは、まぁ現実的に可能であり、普通に指南されていた。
それが「勤続期間の重複排除の特例が適用されるのは、退職手当等の支払いを受ける年の前年以前9年以内に老齢一時金の支払いを受けている場合」となるため60歳でiDeCoもらっても70歳にならないと退職金控除が使えないことになります。
日本では60歳定年が7割を超えており、65歳までは原則勤めることはできますが70歳定年というところは継続雇用制度はあってもあまりありません。
ということで実質塞がれたというのが見解です。
上記の例の場合は所得税の課税が152,500円→272,500円と1.79倍となります。
iDeCoが500万だった場合は152,500円→427,400円と2.8倍になります。
最初からこの制度を使うつもりでiDeCoを開始して人生設計していた人は後出しじゃんけんで制度変更について、それは無いだろうというのが思いがある。
財務省側は8割は64歳未満で退職金をもらっているから影響は少ないと言っているが、それはiDeCo使っている人が少ない世代というだけのこと。
また「控除の公平性を確保し、税収の適正化を図る」という目的を掲げている。いわゆる包括的所得課税の理念で「包括的に把握し、すべての所得を適正に課税する」。退職金やiDeCoの受け取りタイミングを意図的に調整することで生じる不公平な節税を防ぐと言っている。今まで放置しておいて何を今更感ですね。
3.ではどう対応するのか?
すぐに減らす、やめちゃうとか短絡的に行動するのはNGです。
以下を考える。
1. 拠出時のメリットを確認
iDeCoは「拠出時」に所得控除が受けられます。これにより、毎年の所得税や住民税の負担が軽減されるため、現役時代の節税効果が非常に高い制度です。
ポイント:拠出時の節税効果が高い場合は、そのままiDeCoを継続し、拠出し続けることが合理的な選択肢となります。
2. 運用時のメリットを確認
iDeCoの資産は運用期間中、運用益が非課税となるため、長期間運用することで大きなリターンを期待できます。
ポイント:長期運用により複利効果を活かし、資産を効率的に増やすことが可能です。
注意点:運用成果は市場環境に左右されるため、リスク分散や資産配分の見直しが重要です。
3. 受け取りタイミングを分散
退職金とiDeCoの受け取りを9年以上空けることで、それぞれに退職所得控除を適用しやすくなります。現実的に可能な方は限られるが。
ポイント:iDeCoを「60歳」で受け取り、退職金を「70歳」にずらすことで、両方の控除を最大限活用することが可能です。
4. 年金形式で受け取る
iDeCoや企業型DCを「年金形式」で受け取ると、公的年金等控除が適用され、所得税・住民税の負担が軽減されます。
ポイント:退職金控除を大幅に超える場合はこっちも選択肢です。年金形式では、毎年一定額を受け取ることで、税負担が分散されるため、一時金受け取りよりも節税効果が高くなるケースがあります。
4.結論
はっきり言ってiDeCoする人の多くは「拠出時のメリットが大きい」(掛金は、全額が所得控除)と思われます。給付時は課税はされるが、課税をされたところでiDeCoをやらないより全然マシというところが現状です。
ただし退職所得控除額の計算について財務省は手を付けようとしている。
まぁその話はまた後日に。