Ragura Floating World2
マヤと出会ったのは
まだ両方の耳が
健在だった頃。
それがある時
緊急入院
片耳を切り落とされ
絶命しかけた。
たかが耳片方だけと
思うだろうが
エルフにとっては
致命傷なんだ。
あれから
マヤは手のひらを
返す様にクールに
なった。
カズ
「悪かったな
いつまでも引きずって」
クソ
気分悪い‥
帰宅した
リビングにはまだ
パパ、イーノやロカの
姿は無い
ちなみに玄関は
オートロック式で
生態認識で開く
様になっている
鍵なんて要らないよ。
ママの笑顔の写真が残る
カズ
「ただいま」
掃除でもしようと
掃除機をかけようと
思った。
気分転換にもなる
そのタイミングで
着信が鳴り出した。
カズ
「何だよ」
マヤ
「屋上に出なよ。
面白いのが見れるよ」
カズ
「?」
全く、何だってんだ?
家を出る
エレベーターで
最上階へと向かった。
扉が開くと風と共に
周囲を見渡す。
真上の巨大な影
カズ
「あれは‥攻防神」
「移動しないで静止‥」
純白の守護神‥
いや、海上から現れた
ばかりで、守ってさえ
いないじゃないか。
元侵食者‥
ママの呪いの元凶
見下ろす
眩しいコアを睨んだ
俺を見下ろす様に光る
何だよ‥
お前と睨めっこ
する気なんて
無いのに
手の届かない距離で
睨んだくらいで
ママは戻って来ない
カズ
「お前に何がわかる‥」
「お前‥なんか」
その場にへたり込む
何だよ‥
急にどうしたんだ
涙が止まらない
何だこれ
睨み付けた輝きが
俺の何かを包む‥
思わず声を漏らす
カズ
「ママ‥」
声が震える
波が止まらない‥
着信
マヤからだ
マヤ
「どう?吐き出せた?」
カズ
「わからない‥」
マヤ
「攻防神のコアの
輝きはさ、心の穢れも
払ってくれるんだ」
カズ
「だかが‥」
マヤ
「そ、たかが心」
カズ
「 」
ビルの隣りの屋上を見る。
マヤの姿があった。
笑ってる。
マヤ
「ま、ゆっくり吐き出しなよ」
それじゃと通話を切った。
静寂
見上げると
攻防神のコアが
輝きを増していた
様な気がした。
カズ
「フン、お節介め」
しばらくすると
気持ちも楽になる。
攻防神はやがて
直上から移動を始めると
姿を消した。
気に入られた訳でも無く
同情された訳でも無く‥
一人屋上に取り残された。
たかが心か‥
あいつは‥マヤは
何処でこんな事
知ってたんだ?
わからないまま
俺は屋上を後にした。