見出し画像

Ragura Floating World27



初めまして


僕は「ネグロ」
いや‥

それとも
覚えている人は
いるだろうか?

何故
僕なのか?

正直驚いている



では‥今からその
全貌を説明する

それは

学生寮の世界樹
500年の長き
時を得て

封印から解かれた
魔王が世界樹に現れた

それも突如

膨大なルーンを
蓄えるこの
スポットに潜み
暗躍していたんだ

世界樹が聳え立つ
そこへ現れた母親と
幼い少女‥

エノク‥⁈
馬鹿な‥

信じられない

彼女は
もう‥

だが、しかし

エノクと同じ姿を見せ
それもエルフ族として
再び舞い戻って来た⁈

こんな事が‥

だが、
それは全くの
感動的な
転生の再会とは真逆の
展開で僕の目に映り

現れた

転送を
得意とする魔王

魔王は

浮世の世界を
この街を転々と
していたんだ



そしてたどり着いた
彼女を捕らえて

古代図書館に
転送し姿を現した

そう
つまり
たどり着いた先に
僕がいたから

こうして
全貌を説明している

魔王は
彼女の
右腕を握り潰し
彼女はダラリとしている



昏倒してるのか
彼女の
意識が無い



僕の前に現れた
魔王が

目を見開き
驚愕している
僕を凝視するなり
呆れて
見下ろしている

魔王
「こんな薄暗い
場所に燻っている
魔族が居たとは‥」
「落ちぶれたものよ」
ネグロ
「 」
「‥貴様。‥何と言う事を」

驚愕‥
許せなかった

ありったけの
ベクトルで睨む

どんな手を使っても
魔王が捕らえた
彼女を助け
出さなければ

だが

此処が古代図書館と
気付くと魔王は
更なる暴挙へと
行動を移す

僕の逆鱗に触れるには
充分な理由だった

魔王は
右腕を握り潰した
彼女を放り投げ
本棚へと
叩きつけた

まるで人形を
ぶん投げた様に

魔王を睨む僕は
指をパチンと鳴らす



全ては暗転し
魔王の姿
そのものを
消失させた

どうやって?
僕の方の
ベクターBOXさ

格納してやった

変わり果てた
彼女の生死問わず
G-bartを要請した

残念だけど

魔王はポータルを
使わずに転送して
此処へやって来た

つまり
ログが特定出来ない

母親に連絡する事が
出来ず、僕は
屋上へと彼女を
慎重に抱え上げ
屋上へと向かった

やがて現れた
G-bartが到着すると

彼女を搬送させた

僕に出来る事は
要請だけでなく
唯一連絡が取れる
タケの元に
残念な一報を
届けるだけだった

こんな‥

こんな事が

目の前で
起こってしまった



すまない

これ以上は

言葉に出来ない‥

僕は、此処までに
しておく



僕カズ

連絡を受け
パパとアリサと共に
搬送先の
病院へと駆けつけた

意識不明の重体で
変わり果て
運ばれたエノク‥

絶句する

マヤは取り乱し
号泣して
混乱している

パパがネグロと言う
人がG-bartを要請した
迅速な対応の末に
スムーズに
搬送された
との事だけど‥

生命維持装置は
エノクの生死を
繋ぎ止めようと
してくれている

危険な状態で‥

沈黙する廊下‥

落ち着いたのか
俯き黙り込む
マヤ‥

マヤ
「‥母親失格だわ」
カズ
「責めて無い」
マヤ
「あの子を守れ
なかったのよ‼︎」
タケ
「魔王相手にか?」
マヤ
「 」
「何も出来なかった‥」
カズ
「‥‥」
マヤ
「私‥エノクを
褒めてあげられ
なかったの」
タケ
「何があった‥?」
「次は魔王相手とは‥」
カズ
「ポータルを使わず転送‥」

ハッとする

パパにエノクを
助けてくれた
ネグロさんの
連絡先を教えて
もらう様頼んだ。

けれど
端末は処分すると
言っている

それでも
伝えなければ

ダメ元で連絡する



ネグロ
「はい」
カズ
「ネグロさん、
初めまして。
カズと言います」
ネグロ
「君は‥?まさか」
カズ
「エノクの父親です」
ネグロ
「君はタケの‥⁈」
カズ
「はい」
「助けて下さって‥」
ネグロ
「こんな事になるとは‥」
カズ
「ネグロさん、
魔王はポータルを
使わずに転送したと?」
ネグロ
「ああ、それが何か?」
カズ
「だとしたら‥魔王は」
ネグロ
「 」
「‥⁈」
カズ
「格納は不可能ですね」



ドクン‥


一斉に騒つく‥




カズ
「エノクが最悪な
状態だけど
もっと最悪なのは」
ネグロ
「倒すべきだった‥」
カズ
「それじゃエノクは
助からなかった」
ネグロ
「くっ‥」
カズ
「ネグロさん、それでも」
ネグロ
「?」
カズ
「エノクを選んでくれた」
「感謝します」
ネグロ
「君は‥強いな」
カズ
「はい」
「端末の処分は無駄なので
そのままでお願いします」



それともう一つ

魔王は恐らく

古代図書館を制圧して
籠城している
可能性がある事

ネグロ
「僕が離れた隙に⁈」
「まずい‥」
カズ
「学校から避難して下さい」
「今すぐ」
ネグロ
「‥了解した。
迅速に避難させよう」

事態は最悪だ

それでも



被害の拡大を
回避しなければ

もっと最悪だ‥

僕は静かに
端末の通話を切ると


グッと堪えた


緊急治療室を見る

変わり果てた
エノクが横たわる

潰れた右腕と

身体‥



それでも‥

幼いエノクは

生きようとしていた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?