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The blue sky of the outlook37

ナーシャの病室を訪ねた。
看護婦さんから余計な会話は記憶障害に影響する為、控えるよう言われた。
恐る恐る病室を覗き込む。

頭部が‥とても痛々しい
ボケっと窓の外を見つめて‥
胡座をかいていた


私に気付く。

ナーシャ
「エノク‥?見舞いに来てくれたの?」
「眼鏡なんてかけたっけ?」
エノク
「私も入院中で」
ナーシャ
「え?何で⁈」

何て説明すれば良い?
私はナーシャに説明したかった。
嘘なんてつけない。

エノク
「大丈夫。順調に回復してるから」

だから‥
そこまで言おうとした瞬間

ナーシャ
「なんで泣いてるの?」
エノク
「え?アレ‥?」
ナーシャ
「どうしたの?」
エノク
「ん‥自分でもわからない」
ナーシャ
「エノクも‥覚えてないの?」
エノク
「 」

助けに来てくれたナーシャに
お礼も言えない。
どう話せば良い?
そんな私をナーシャは逆に励ましてくれた。

リハビリが順調に進み、
だいぶ体が動くようになっていく。

日常に支障をきたす様な昏倒は
見られなくなっていく。

やっとここまで来れた。
退院の日。

最後の診察で医師が説明する。

医師
「暫くは眼鏡をかけて過ごして下さい。視力が回復すれば眼鏡も処分して頂いて構いません。リハビリは日々の生活の中で積極的に行動すればそれがリハビリになるでしょう。退院おめでとう」
エノク
「はい!ありがとうございました!」

荷物整理も大丈夫。
端末‥大丈夫、持ってる。

暫くエイマとも話してないわね。
診察室を後に一礼して病院の入り口までやって来た。

ロビーに見慣れた人影。

ユノとミオ⁈
アリサも一緒だ
私の元にすっ飛んで来る。

アリサ
「お姉ちゃん!」
エノク
「アリサ、お待たせ」
アリサ
「ユノとミオ姉ちゃんと節約レシピ教えてもらったんだよ!」
エノク
「二人共、ありがとう」
ユノ
「手先が器用なのねアリサ」
ミオ
「意外に料理腕あげたのよね」

ちょっと悔しけにミオが言う。
アリサが得意げに笑う
少し打ち解けているのを見て安堵した。
相変わらずべったり私にくっつく。
シャルは、もうこの町をルティと離れて何処かで暮らしてる筈だ。
その話題にはあえて触れない。

ミオ
「眼鏡女子ですなぁ」
エノク
「へ、変⁈」
ユノ
「もうずっとかけてれば?」
エノク
「え?い、いやぁ〜」

アリサもにやにやしている。
入り口のガラス越しにみんなの姿が見えた。
そこにはタケもいた。
ネグロと親しげに話し、こちらに気付く。

エノク
「あ、もう夏休みだったけ?」
ミオ
「そうよ。ちなみにアリサの話は冗談、レシピはこの先生!」

ネネ
「入院中話せなかったね。エノク」
エノク
「ネネ、もしかしてアリサにレシピ教えてくれた?」
ネネ
「アリサ料理上手くなったよ」
アリサ
「今度お姉ちゃんにアレ作ってあげる!たんいん祝い‼︎」
ユノ
「退院祝いね」
アリサ
「それ‼︎」

アレってなんだろう?
そう思いながらみんなが集まっている外に向かい、みんなと歩き出す。

外の風が心地よく吹く。
私の日常が戻った瞬間だった。

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