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Ragura Floating World46



失態だ

男の子に
みっともない
失態を見せて
しまった

なのに
それで終わる
筈もなく

気持ちが
落ち着いた
その後も

泣きながら
食堂給食の
ハンバーガーを
頬張る羽目に

‥何でこの子
平気なの?
周りも咽び泣く
姿なのに

涙腺無いの?

聞いたら
泣いた経験が
無いと言う

感情を上手く
表現出来ないと
彼は言う

なら彼の分まで
涙を流そうと思い
嗚咽する

男の子
「泣く程美味い?」
エノク
「んん〜」

正確には
ん、に点々が付く
嗚咽で咽び泣く

さっさと通過して
くれないかしら?

19kmの巨大質量が
上昇通過
するまでには
昼休み丸々
経過するまで
一同の嗚咽は
止まらなかった‥

男の子
「まだ‥不愉快?」


エノク
「 」
男の子
「傷付けてしまった」

涙を飛ばし首を振る
頬張った分を
飲み込んで
彼に答える

エノク
「君の感情はあるわ」
男の子
「え」
エノク
「睨んだでしょ。
あの時、君の
ベクトルを
感じたの」
男の子
「 」
エノク
「私が変わった様に
君も変わるわ」


彼が少し
視線を逸らした

男の子
「名前」
エノク
「ん?」
男の子
「まだ教えて無かった」


遅い自己紹介

やっと
彼の名前が
聞ける

男の子
「スクエア」
エノク
「 」
「じ‥」

ドクン‥

じ‥
二乗?

エノク
「スクエア‥」
「君は‥まさか」
スクエア
「だから僕は怪物‥」
エノク
「 」


内包者

二乗された
魂を持つ者

名前まで
二乗されるなんて

それでも

私は引け目など
取らない

エノク
「宜しく、スク」
スク
「‥スク?」
エノク
「変?」
スク
「‥いや、良い」

少し笑う彼

優しい

そのベクトルは

花壇で向けた
あの笑顔の
ベクトルよりも

素敵だった

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