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Ragura Floating World34

初めての
奈落への落下



フェンスに
よじ登る時間など
無かった

私の首元から
頭を出す
ミタマ

弾丸の様に
真っ直ぐ
抵抗無く
男の落下速度に
到達する

追いついた!

しがみつく

絶対離すものか

ミタマにママの所へ
歩道の通り
車道に出ない様

ポータルを
出す様頼む

少し考え
理解した
ミタマは

落下速度で
ポータルを形成し

突っ込んだ




ポータルから
射出される

今までに無い
速度で

ママの近くで
発生したポータルから
勢いよく飛ばされ

男と一緒に
打ち付けられ
転がり込む

身動きが取れない

身体の痛みを
感じ取る

視界は真横になって
状況を把握した

真横の世界で
ママが叫び
駆け寄って来る

通りすがりの
知らない男性も
心配して
駆け寄って来た

男性
「大丈夫ですか⁈」
「酷い怪我だ」
マヤ
「急いで病院に!」
男性
「大丈夫、任せて下さい」
マヤ
「え?」

男性は手をかざし
詠唱する

男性
「シュタルククーア!」
エノク
「 」
「ん‥」

淡い輝きに満たされて
身体中の痛みが
引いていくのを
感じ取る‥

身体が動く

男性
「もう大丈夫。
動けますか?」


エノク
「ん!」
「ミタマ⁈」


潜り込んだ
ミタマは無事
だろうか⁈

私の首元から
ヒョコッと
頭を出す

エノク
「おじさん!ミタマ!」
「ありがとう‼︎」

ミタマは
元気に私の肩へと
移動した

身を投げた男も
無事‥



安堵する




それで終わる
筈が無い

ママの形相が
変わり
男を睨み付け
掴みかかる

マヤ
「ちょっとアンタ‼︎」

「⁈」

胸ぐらを掴み
無理矢理立たせて
フェンスに詰め寄り
ママが叫ぶ

マヤ
「どんな理由か
知らないけど、
投げ出して良い命なんて
無いのよ!」
エノク
「‥‥」

私は起き上がると
身を投げた
男を見つめる
ママの力強い
ベクトルは続く。

非難や罵倒では無い

生きる為の熱いベクトル

私の大好きなママの
力強いベクトルが

男に向けられ
響いた

私は更に男を
じっと見つめる

ママは続けて言う

マヤ
「生きるって、流れに
乗ってるって事なの。
その流れをアンタ‥
自分から止めようと
したのよ⁈」
「生きるよりも、
死ぬよりも
辛い選択をする
事になるわ」


「 」
エノク
「‥凄く怖い選択」
マヤ
「そう、あっては
ならないのよ」


掴みかかる握力を
緩めるママ

崩れ落ち
脱力する男

言葉を失い
項垂れた‥

此処で私は初めて
視線を変え

回復してしてくれた
エルフの男性は

その場から
姿を消してしまった。

エノク
「助けてくれたのに」
「行っちゃったね」
マヤ
「見返り求めず
駆け寄ってくれたわね」
エノク
「でもありがとうは
言えたよ」


そうね
と、言いながら
ママは男性が
去って行ったであろう
方角を見つめ呟いた。

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