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マインド・トリガー4

夜の橋の歩道

欄干

上には鉄道が走る

その下に露店を開く占い師。

絡む酔っぱらい。

酔っぱらい
「聞いてくださいよ〜」
占い師
「占って欲‥酒臭っ!」

顔真っ赤に泥酔し
ズレたメガネのせいで
見えずらいのだろう

占い師を舐める様に
ジロジロ見る。

占い師が端末を手に
警察を呼ぶ準備をする。

酔っぱらい
「うぃ〜吐きそうだ」

椅子にもたれかかる酔っぱらい
立派な営業妨害だ。

酔いでぐるぐる回る
酔っぱらいの動きが止まり、
我に帰る。

慌てて椅子から
倒れ込む男が何か
恐ろしいものでも
見た様にその場から突然
逃げ出した。

そして最後の叫び

酔っぱらい
「た、助け」

ビクンと体が跳ね上がると、
酔っぱらいは崩れる様に倒れる。
そして沈黙した。

行き交う通行人が
ギャラリーから
野次馬へと変わる。


その事象、初めてでは無く
私が事態の深刻さを
知った頃には
色々と手遅れだった‥




昼休みの屋上

相変わらずの射撃練習。

マンネリ化しそうな習慣に
キッドさんもそろそろ
痺れを切らす。


私に聞いて来た。

キッド
「神崎、もっと効率よく練習出来ないもんかな?」

「うえ?」
キッド
「だからトリガー使いとしてもっと効率化した練習法をそろそろ導入すべきだと思うんだ」

「空き缶じゃ標的として非効率」


私は少し考えた
この年齢では道楽としては
ありがちな解答をする。


「ゲーセンとか?」
キッド
「 」

「うえ‥ほら、ガンシューティングとか」
キッド
「 」
「名案だ‥」

「え?」
キッド
「良し、放課後行ってみよう」
「神崎、時間大丈夫か?」

「まあ」



そんな訳で放課後、
私とキッドさんで
ゲーセンとやらに行ってみた。

中央区のビル街。

フロアを占領する規模
デカデカと広告や
ポスターが貼られ
ネオンがチリチリと光る。

扉の奥から
音楽と
効果音が漏れている。

キッドさんが小声で呟いた。

キッド
「‥来て良かったんだろうか」
「あ、神崎⁈」

私は扉の前に立つ。

自動ドアが開くと
一気に押し寄せる
音楽と効果音とタバコの煙の波。

物々しい喧騒と空気に
二人で目を見開く。

立ち並ぶ一台一台の
ビデオゲーム

90年代のゲームセンター
そのものの雰囲気。

ゲームに集中している者
談笑して盛り上がる者

ギャラリーが数名腕を組んで
終始見守っているのか
しかめ面で順番待ちなのか。

それぞれの行動を見せ

賑わう男達。

私は1人だけ浮いてる気がした

驚く程女の子がいないからだ。

ズラリと並ぶゲーム台
ぬるぬるとデモ画面が流れる。

その奥に大型の
ゲーム台が見える

キッド
「あれか?」

「あれかな?」

私達の声が聞こえずらい。

とりあえずジェスチャーで
歩き出す。

男性の視線を感じ
キッドさんから離れず歩く。

男の子って歩調早いんだ
小走りに付いて行く。

かなりの大型の
台が見えて来た。

2人分がゆったり
座れるシートに
ヘッドマウントが
一体化されたマシン。

大型のゲーム台の説明では
こうある

キッド
「このゲーム台‥量子チップを搭載してるぞ」

「量子チップ?ゲームにも?」
キッド
「人工知能が俺達に合ったプレイ環境を提案してくれるらしい」

つまり、
こちらでわざわざ
設定して
プレイしなくて良いらしい。

それは複数用意され、
飽きさせない工夫がされている。

プレイヤーは
椅子に座って思考する
だけで操作する。

精神感応だけでゲームができる。

キッド
「凄いな。神崎」

「やってみよ」

私達のプレイが
ギャラリーに
筒抜けだけど
キッドさんは見せつけてやろうと
自信たっぷりに椅子に座る。
頭部から胸部を覆うほどの
ヘッドマウントが
椅子に座った私に
覆い被された。



ゲームまでの流れは
スムーズに行われて

扱う武器、
プレイ環境などが
人工知能により提案され、
私は迷わずトゥーハンドを
選択した。

キッドさんも
アサルトライフルを選択して
設定画面から次に進む。

アバターとしてでなく
自分そのもので反映される。

ハンドガンの威力は
マグナム程じゃ
無いかもしれない。


ゲームがスタートする。

キッド
「神崎、始まったな」
「うん」

会話もギャラリーに
筒抜けなんだろうかと
思いながら標的に注視する。

どんな標的だろうと
考えながら歩く。

脳内で移動できる様だ

仮想空間の中を動き回る。

すると空から
地上から
地面から

わらわらと
標的がやって来る。

キッド
「撃って良いのか?」

「どうだろう?」

襲って来た
バーチャルの
仮想空間を遠距離から
狙うにはある程度
慣れが必要な筈。


「近距離から慣らす必要があるかな?」
キッド
「ああ、それは俺も思った」

目前まで迫って来た
標的をゼロ距離で撃ち倒す。

色々な角度から
襲って来る標的を倒す度に
イメージ出来る戦略。

動きに慣れてきたら
敵の動きも
戦略的になって来る

気がつけば楽しんで
サバイバルする様に
なっていた。




時間を忘れて

気がつけば夜

キッド
「しまった!もうこんな⁈」

「うん」
キッド
「すまない。時間大丈夫か?」

別に門限は無い。


私は気にしてないと答える


「そう毎日出来るわけじゃないけど、楽しかった」
キッド
「ああ‥あ、ありがとうな神崎」

「うえ?」
キッド
「その‥今日みたいに楽しんだ記憶、あまり無かったんだ」
「今まで」

「え‥」
キッド
「俺も楽しかったんだ」

視線を合わせづらくなる
二人で赤面した。


「じゃ、また」
キッド
「ああ、ま、また明日」


今日はここで別れた。

救急車のサイレンの
音が聞こえるが
その時は何も感じなかった。

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