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The blue sky of the outlook59


天魔重工会社はお休み。

私は収入と相談して、アリサと買い出しに行く予定です。

学費の貯蓄も順調に溜まっていく。

エイマにも早々に学費を払うべきか相談したが、夏休みの終わりを目処に精算出来れば良いと言ってくれた。

そう言ってもらえるとありがたい
安定した生活が出来た。

アリサに思わぬ変化が出てきたのは
その頃かもしれない。

アリサ
「お姉ちゃん」
エノク
「ん?」
アリサ
「タケにコレ返してあげて」
エノク
「これは‥」

タケのお兄さんの端末。
預かってもらってそれきり。

アリサ
「大事な形見だから」
エノク
「すっかり忘れてたわ」
アリサ
「アリサ、自分の端末持つ」
エノク
「え?」
アリサ
「だから、今日は役所だっけ?一緒に行って」
エノク
「一度は捨てたんだっけ?」
アリサ
「お姉ちゃん〜」
エノク
「わかったわ。行きましょ」


アリサはユノに新しい服を作ってもらい、お気に入りの帽子をかぶっていた。
ユノの才能に驚くが、アリサが嬉しさのあまりユノに飛びついたのは驚いた。人見知りなアリサがここまで心を開いたのは私も嬉しい。

玄関に施錠した時、端末が鳴り出した。

エイマ
「先生から電話来てます」
エノク
「何かしら?」ピッ
「あ、もしもし‥」
ディール
「エノク、学校から預かっていた手紙を渡そうと思うの。少し時間良いかしら?」
エノク
「手紙?ですか?」
ディール
「宛名は‥中等部の子かしら?ルティ‥」
エノク
「ルティ⁈わかりました!部屋番は?」

先生はお退けた声で答えると、
直ぐに部屋番を教えてもらい、私はアリサと走った。

玄関前
インターホンを鳴らす。

エノク
「先生!」
ディール
「アンタ走って来たでしょ?落ち着きの無い」
エノク
「あ、すみません‥」
ディール
「はい、コレよ」
「それで、この子?例の」
エノク
「あ、はい」
アリサ
「アリサです」

アリサが先生をじっと見つめている。

ディール
「無茶するわね。バイトまでするなんて」
エノク
「楽しいですよ」
ディール
「見ればわかるわ。色々あった顔してるわね」
「この後はお出かけ?」
エノク
「アリサの端末を再発行してもらう為に役所へ」

それを聞いた先生が、未成年ではバイトしても門前払いされる事がある為、保護者も同行する必要があると言う。

そこで

ディール
「私も行った方が良さそうね」
エノク
「あ、良いんですか?」

先生と役所に行く事になった。
電車に乗って中央都市部へ向かう。

揺れる電車。

エノク
「プライベートで行動するのは初めてですね、先生」
ディール
「まさかとは思ったけど、デニッシ族とも同居してだなんてね」
エノク
「シャルの件は、すみませんでした」
ディール
「まあ、私も嫌な大人には思われたく無いのよ」
「言いにくい事情はあるんでしょうけど、相談なさい。こう言う事は」
エノク
「そう言ってもらえて嬉しいです」
アリサ
「お姉ちゃん、手紙読んで良い?」
エノク
「良いわよ、はい」

手紙と一枚の写真が出て来た。
写真にはルティとシャルを囲むように、私の知らない家族が写っている。

アリサ
「読んで」
エノク
「えっと‥」


先輩、先日は妹の為に有難うございます。私とシャルは、ランドシップを越えて、中層の田舎の集落の方にお世話になっています。
異種族家族の為、私達の事情を説明した後、快く受け入れてくれました。
上層から勤めていた方々が帰郷してこちらに戻って来た為、家族で賑わっています。ほとぼりが覚めて落ち着きましたら、先輩達にいつか会って友達になって下さい。
写真を撮ったので、一緒に送らせて頂きます。

ルティの表情に緊張が解けて
穏やかになっている。
シャルの明るい笑顔も戻っていた。

手紙を読んだ後の写真の光景を見て察した私とアリサの涙腺が緩んだ。

エノク
「良かった‥」
アリサ
「家族になったんだね、シャル」
ディール
「素敵じゃない」
エノク
「はい‥」

幸せそうな写真
憧れる
私達も負けてられないと
思った。

窓から役所の巨大なタワーが見える。

仰ぎ見る私達。

そして
ラグラの大きな節目がゆっくり近付いてくるのを未だ私達は知らないまま‥

その時を迎えようとしていた。

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