見出し画像

蒼穹の見聞録 短編

ショートストーリー編




輪廻の花咲く世界

突如現れた侵食者の猛攻は
輪廻全土を包囲する様に
波状攻撃を受けて
総力戦を展開
損害を被った。

此処は神々が集う楽園。

いえ、最後の砦。

被害を受けた輪廻の世界が
痛々しい情景を見せている。

抉れた大地に

あらぬ方向に
パースの定まらない摩天楼

ハーフパイプの様に抉れ
果てまで続く大地

クレーターも見える。

まさに惨状

私はエノク
蒼穹(そら)と共にこの輪廻で侵食者の猛攻から参戦し
悪鬼との接触で危機的状態

気がつけば私の義体は頭部を
半分失うほどの損傷を受けて

それでも

事なきを得ていた。

ごめんなさい

覚えていない

夢でも見ていたかの様に曖昧で。

悪鬼と戦ったとの
記録もあるけど
その詳細は、人類、宗教的にも
悪影響なので伏せられていた。

輪廻の遥か上には、膨大な量の水が流れる空中庭園があり、都市部である花弁の損傷が特に酷かった。

空中庭園に私は蒼穹と共にいる。
実際には保護。

私の最初で最後の母親であり、
女神でもある大御神遥華の庭園
短い芝生が風に揺れる。

通称「ママ」に、私にも何か
出来る事はないか聞いてみた。

ママ
「戦いに赴けば、悪鬼との接触は
避けられません」
「義体を破壊されてもまだ前線に出ようと?」
エノク
「‥‥」

ママの側近であり、参謀長官の
ラドゥウリエル先生。

通称「先生が」ママに提案する。

先生
「ならばその実力、テストして見ては如何か」
ママ
「テスト‥輪廻に実践投入出来なかったユニットがありましたが‥」
先生
「丁度良いですな。エノクに蒼穹、見せてみよ」

テスト‥?
すると、ママが遠くを
見通し、しばらくして呼んだ。

ママ
「金閣!銀閣!」
エノク
「え?最遊記の⁈」
先生
「テストには丁度良い」

澄み切った青い空に雲の彼方から
2つの球体が飛んで来た。

驚愕‥
純白な球体に刻印された
金閣
銀閣の刻印が見える。

すると、
巨大なポータルが発生する

数百メートル規模の巨大な
ポータルの発光が螺旋を描き回る。
そこから現れた3百mの
巨大ユニットに驚く‥

その形状は

エノク
「ひ、瓢箪⁈」
蒼穹
「これからどうするんスかね?」

そうだ、裏打ち合わせしないと
私は蒼穹に警告した。

エノク
「蒼穹、アイツに呼ばれても返事しないで。瓢箪に閉じ込められるわ」
蒼穹
「了解」

蒼穹が瓢箪にベクトルを向ける。
背中に停滞する
推進ユニットが発光し
リニアに浮上すると、
飛行を開始、瓢箪に接近した。

球体の金閣と銀閣が巨大ユニットの瓢箪の先端の窪みにガシャン、
とジョイントされる。



静寂‥風の音がする

‥?

「エノク」
エノク
「 」

無関心

「エノクエノクエノクエノクエノク‥」

連呼しても無駄
私はブレない

けど、それは
やがて呪詛へと変わる

同調圧力による
呼び掛けに罵倒‥

私は黙って耳を塞ぐ。

ここまでは予想通りだった‥
それなのに‥

呪詛は呪いの言葉に変換され、
魂に響く共振へと変わる。

人間ならば骨伝導、
もしくは脳内再生
精神的ダメージにも匹敵
いえ、それ以上に共振する。

私は涙で堪えたが、
共振のせいか義体が震える。

涙は真っ赤になり流れるレベル

マズイ、もう、持たない無理!

エノク
「ああああああうるさい‼︎」

蒼穹
「 」
エノク
「 」

私は終始青ざめ、
震える体で瓢箪を見る。

いつの間にか
縦四分割の扇状に

別れた瓢箪が四分割の
アームとなって伸びた

それに気付いた時には既に
フィールドを一帯に
展開されていた。

蒼穹
「え?しまっ‥!」
エノク
「ああ‼︎」

展開したフィールドが
私達を囲む。

コレは‥逃げられる筈が無い

蒼穹&エノク
「 」

先生からの通信が来た。

先生
「紀伝の情報を鵜呑みに
し過ぎた様だなエノク」
エノク
「 」
先生
「まあ、良い。此処からテストだ」
エノク
「ここから‥」
先生
「行動は任せよう、見せてみよ」

期待を込めた穏やかな微笑み
私に向ける最高のベクトル。

エノク
「はい!」




ママ
「テストなど」
先生
「此処で手こずる様では戦う資格も無い」
ママ
「人間の本質に戦う資格も無いでしょう」
先生
「確かに。されど二度と暴走はせんでしょう」
ママ
「⁈」
先生
「自ら暴走せしめたならば、それは一度きりでしょう」
ママ
「ええ‥」




周囲は四分割のアーム状
それ以外は黄金の
フィールドに囲まれている。

あちこちに黄金の雷光が
チリチリと鳴る。

アームの根本に
ついているであろう
弱点らしき半球体が
外殻に守られている。

私は外殻に守られている
半球体に向け聖釘を召喚した。

右手を突きつけ
ベクトルを定め発砲する。

真っ直ぐ放たれた閃光が
フィールドに当たる。

え?
跳ね返った⁈
マズイ‼︎

私は再び発砲

エネルギーを相殺する。

爆炎を上げ衝撃が走ると
蒼穹が吹っ飛ばされた
フィールドに当たると
ダメージを受けた。

蒼穹
「んがが!」
エノク
「蒼穹‼︎」
「ご、ごめんなさい‼︎」

バイタルリングに
ダメージが表示される。

半分も減っていた‥
次はもたない!

考えてエノク‥
大丈夫よ
方法はまだある!

あちらはまだ手の内を見せない‥
なのにもうこんな状態だなんて

外殻からポータルが
発生して次々と
ユニットが出現した。

ユニットから
一文字のフィールドが伸び
こちらに向かって来る。

私は少し考え
冷静に聖釘の質量をリサイズ
照準をユニットに向けて撃つ。

破壊

蒼穹と目で合図する。

蒼穹は照準

私は発砲

ユニットの数が増える

動きも変わる

速度も変わる。

聖釘の数を少しずつ増やし
ユニットの破壊に専念する。

その間、蒼穹と口裏合わせし

この後の戦術を提案する。

エノク
「良い?チャンスは一度」
「ミスったら外殻は開かない筈」
蒼穹
「了解」

蒼穹は36万の視点を持つ。

あらゆる視点から
ユニットに隠された
外殻が開くチャンスを
蒼穹に託す。

ユニットはサイズも
変わり始め、
ランダムに動き出す。

聖釘の数を半分まで増やして
サイズを変えず破壊する。

ユニットに速度が
一気に上がり出した
タイミングでようやく
外殻が開く。

ユニットが無数に飛んで来た。

蒼穹
「来た!」

蒼穹の合図と共に残りの聖釘を
出すと、外殻の発光に
ベクトルを定めた。
一点集中

一斉掃射した。

着弾する爆音と同時に
外部から離脱音が
聞こえたと思うと、
聖釘の閃光は
瓢箪ユニットを
一気に貫通する。

爆破

フィールドが消え
私達の直上で
ユニットが崩落する。

スレスレで奈落に落ちる
巨大なユニットを
避けるまでもなく

瓢箪が落ちる。

やがて落下地点にポータルが
出現すると、炎上して
落ちる瓢箪ユニットが
ポータルにより
飲み込まれて行った。

終わった‥

え?

先生が明後日の方向を向いて
ため息をついた‥

まさか‥
私と蒼穹は目を合わせる。

先生
「金閣銀閣は逃げ仰た様だが」
エノク
蒼穹
「 」


ママの拍手が聞こえ、
こっちを向いた。

ママ
「いいえ、合格です」
「殺生はさせません」

ママが微笑む

エノク
「ママ‥」
ママ
「最前線に蒼穹と一級攻防神
アカトリエルを配置」
「フィーの遊撃部隊を
後方に援護する配置で
行きましょう」
エノク
「あ、ありがとうママ‥」
先生
「蒼穹の修復もせねばな」
蒼穹
「サーセン‥」

蒼穹に私と交代させ
降下した
足元のバイタルリングが
私を照らす。

真っ直ぐママの元に駆けつけ
抱きついた。

ママも抱きしめる。

エノク
「大好き!」
ママ
「良くできました」

匂い、輝き、
全てが揺籠の様に
心地良い。

守りたい世界がある
守りたい存在がある

だから

この世界を終わらせはしない

絶対に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?