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番外編 エルアレス

The blue sky of the outlook


アリサの服を新調する

服を買いに行くも、相応の値段。

店頭に並ぶ帽子にアリサが興味を持った。

ライトシーダーの色合いと太めに伸びた後ろの紐が可愛いらしく、アリサによく似合う。

アリサ
「アリサこれだけで良い!」
エノク
「え?でも、服どうするの?」
アリサ
「ほら、あの人!ユノ!」
エノク
「あ」

アリサはユノに以前服をカスタマイズしてもらっていたのを憶えていたのだ。

しかし、代わりの生地は、当然ない。
流石にユノでも一から作ってもらう訳にはいかないだろう。

そこで。

エイマにユノへの発信を頼み、電話で生地専門店を教えてもらう事にした。

すると‥

ユノ
「それなら余った生地で作ってみるわよ」
エノク
「ユノ‥良いの?」
ユノ
「今回は特別。てゆーか、とっくにもう出来てんだけど」
エノク
「え!どう言う事⁈」
ユノ
「前のカスタマイズで、サイズわかってたから」

すると、アリサに見せてあげてと服を画像添付してくれた。

アリサの目がキラキラ輝いている。

じゃ、後で寄ってね〜とユノは電話を切った。

アリサと目を合わせて一目散に女子寮に走った。

ユノの部屋の前
速攻でインターホンを鳴らす。

ユノ
「はいはい待ってた‥キャァ‼︎」
アリサ
「ユノ、大好き‼︎」

玄関を開けたユノにアリサが飛び付いた。
私は目が点になった。


早速買ってきた帽子とユノが用意してくれた服に着替え、じゃじゃんとばかりにお色直しで現れた。

エノク
「本当、ピッタリ」
ユノ
「成長期まで余裕あるくらいはサイズに余裕持って作ったわ」
エノク
「お、お見事です‥」
ユノ
「エノク、ちょっと外散歩しない?エルアレスまで」

エル?何だろう。
そう聞いたら

ユノ
「え?世界樹まだ見てないの⁈」
アリサ
「アリサ案内するよ!」
ユノ
「まあ、ちょっと歩く先だけど」

私達の寮は少しカーブを描く構造になっていて、エントランスの突き当たりまで見えない。

その先に世界樹が聳え立つのだと言う。

オノ・ラン線の車窓から見えないのは保護区として仕切られ、構造上カーブを描く様に通っていたから見えなかったのだ。

早速寮を出て広場に出ると、アリサが嬉しそうに飛び出して行った。

エノク
「アリサ、待って」
アリサ
「早く〜!」
ユノ
「元気ねー」

こう言う所は変わって無い
私も大概だけど。

しばらく無言で歩く。
ユノは私とどんな話をする気なんだろう。
そう思いながら2人で歩くと、突き当たりのフェンスの先で遮る様に聳え立つ巨大な大樹の幹が現れた。

澄んだ空気
自然の輝き
心がみなぎる不思議な力
そこへと近付いて行く‥

私は歩調を早め、大樹の元に駆け寄った。

巨大な一本の樹‥
直径にして約1km
高さは分からない500mくらい
とにかくデカい。

フェンスにたどり着くと、巨大な木の根が俯瞰に根付き、緑色の泉と光る光点が無数に漂う。

よく見ると、それが光点ではなく、生き物が飛んでいる姿だと分かった。

ユノ
「見えた?アレ妖精じゃ無くて精霊族よ」
エノク
「凄い‥こんな場所があったなんて」
ユノ
「いつも忙しそうだから、みんな気を遣って見守ってたのよ」
エノク
「え?わ、私を⁈」

私はそんなつもりは無かったのに、毎日落ち着きの無い性格と生活に、一歩下がって見られていたのだと言う。

全然気付かなかった‥

エノク
「ごめんなさい、私‥」
ユノ
「ううん、私凄いなって思うの」
「私らなら、エノクの様に判断して生きるなんて出来ないわ」
エノク
「 」
ユノ
「デニッシの時だってそう‥私だったらパニックになって殺されてた‥」

ユノが震える声で涙目になる。

思えば行き当たりばったりで、考える事、行動する事ばかりだった。
普通ならアリサやシャルと同棲など
普通の学生なら引き止めないだろうし、直感で自ら真っ先に考え、行動など出来ないとユノは涙ながらに話す。

エノク
「ユノ‥」
ユノ
「踏みつけられて、目を失って、石にまで変えられて‥それでも分かり合えると思った?」
エノク
「 」
ユノ
「エノクの様に思えない‥私」

ユノは泣いている。

エノク
「理由なんて私‥説明出来ない」
「私の知らない所で誰かが傷つくのは嫌。怪我人はいなかったの?」
ユノ
「出たわ。私怖くて‥」

あの日、教室にまで攻め寄ったデニッシ族。

私がこれからどうなるかを歪んだ笑みで喋り出し、クラスに詠唱を唱え始めた刹那。

温厚なネグロ
冷静なビオラ
ふわふわしたネネが

デニッシ族に魔法や肉弾で返り討ちにしたそうだ。

教室に血痕が付く。

タケが必死になって静止させた頃には、デニッシ族は反撃も出来ず横たわっていた。

同情しかない‥

それでも、私は引け目を取る訳にはいかない。
彼らのおかげで、私のクラスの危機を救ってくれたのだから。

ユノも無事では済まなかった筈だ。

今は、ユノのもらい泣きで
黙ってハグする私が

精一杯の配慮だった。

エノク
「ユノ、ありがとう」
アリサ
「アリサも、ありがとう」


ユノは無言で震え泣いていた。


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