見出し画像

27. 夫に尾行された夜 1


金曜日の夜、約束の22時半。
壁にかかった時計で時間を確認してから、外に出た。
そして、車を出すために門扉を開けようとした。

その瞬間、何かを感じて咄嗟に左方向を見た。


うちの家の前の道は向かって右側の方向に一方通行。
左方向の先には小さな川がある。
その川沿いには、大抵いつも、数台、車が路上駐車されてる。

だから、その夜もその川沿いに車が止まっていたが、べつにいつもと変わらない風景。

ただ、確か、さっき、人影が動いたように見えた。

ん?

よーく目を凝らして見ると、車のそばに立っていた人が、慌てて車に乗りこんだように見えた。

遠目だし、暗いし、はっきりとは見えないけど、、なぜか、妙に気になった。

私は首を傾げながら、門扉を開けた。

で、もう一度見てみた。

するとさっき人が乗ったはずの車のライトが点いてない。

あれ?おかしいなぁ…。

なんか気持ち悪いと思って、逆に急いで車に乗り込んだ。

そしてその川ではない方向、右方向に車を出した。



しばらくは住宅街の中をくねくねと。
街灯も少なく、一方通行が多いので、慎重に走っていった。

少し大きな道に出て、つきあたりの T字路。

ようやく信号。

止まって、左折のウィンカーを出した。

何の気もなしに、ちらっとバックミラーを見た。

あれ?

後ろの車…ライトついてないけど。。


信号が青になったので、左折した。

すぐに、今度は十字路の信号がある。

赤になってるのが見えたので、スピードを落としながら、ゆっくり止まった。

もう一度、バックミラーを見た。

やっぱり、後ろから来る車…ライトがついてない。

しかも、車間距離とりすぎでしょ。。なんなん?

不思議に思いながら、今度は右折した。

ライトがついてない車も、ついてきた。

相変わらず、異常に車間距離をとって。

わざと、スピードを落としてみた。

案の定、後ろの車も、落とした。

車の音楽を止めた。

心臓がドキドキしてきた。

あの車、、絶対におかしい…。


幹線道路につながる交差点まできた。

大きい道に出れば、夜でも車が普通に走っているので、車間距離あんなにとれないはず。

あえて、ウィンカーを出さずに信号を待った。

ゆっくり、近づいてくる後方車。

信号が変わらない。

やはり、車間距離多目で、後方に止まった。

バックミラーを凝視した。

見覚えのない車だ。

暗いので運転手の顔はもちろん見えない。


信号が変わった。

わざと、ウィンカーを出さずに右にまがった。

そこは幹線道路。車がたくさん信号待ちしてるので車のライトで明るくなっている。

ゆっくり曲がりながら、右の窓から、後方車の中を見た。

運転席の人より、運転席の後ろから顔を覗かしている人が先に目に入った。

その瞬間、パッとその人は運転席の後ろに隠れた。


えっ?!!

そのまま、走り続けたが車が多いので、その怪しい車は私の後ろをぴったりついてくるしかない。ルームミラーに目をこらす。

運転席の人……あの感じは、、おそらく夫の部下Nさんだ…。

助手席には誰もいない。

でも、間違いなく、さっき、もう一人いた。

2人で乗るのに、もう1人が運転席の真後ろに乗ってるのは、とても不自然だ。

つまり……まさか、、夫……?

だとすると、尾行されてるってこと?


なんで?

どうして??

心拍数が一気にはねあがった。


今度は早めにウィンカーを出し、その道沿いにあるTSUTAYAの駐車場に入った。

そう、あのTSUTAYA。

さすがに、怪しい後方車はついてこず、そのまま直進して行った。

頼むから、前と同様、レンタル返しに来たって思ってくれ!




急いで、蓮に電話した。

でも…出ない。

バイクかな?どーしよう!

とにかく、駐車場を出て、今来た道を戻った。

蓮との待ち合わせ場所は、さっきわざと通りすぎた。

そこは、地元の人しか知らない路地に入っていく道。

今のうちに、行かなくちゃ!

路地に入るために、右折した。

その道は細くて対向車ぎりぎり。

前方から車がきた。

あ!まさか?

なんと、あの怪しい車、TSUTAYAを通りすぎて、迂回してきたようだ。

見つかった!まずい!

すれ違ってすぐに、私はUターンをして、更に違う細い道に入っていった。


そして尾行されてると確信した。

さっきすれ違った時に、はっきりと運転手の顔が見えたのだ。

それは間違いなく、夫の部下だった。











いいなと思ったら応援しよう!