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25. 仮面夫婦
もちろん、当時の私は夫が私のことを疑ってるとは夢にも思っていなかった。
自分のことしか見えてないし、自分のことしか考えていなかった。
「おはよう」
翌朝、いつもと変わらない夫だった。
子供達も義両親の家から帰ってきて、みんなで食事。
傍目には、ごく普通の家族。
私も夫も笑顔だ。
心なしか、二人ともいつもより機嫌がいい。
いつもより仲良くできる。
なにしろ、昨夜久しぶりに一緒に寝たからね。
いろんな意味で、お互い、覚悟したからね。
自分の笑顔が、夫の笑顔が怖い。
なぜなら、腹の中はお互い完全に違う方向を見てるのだから。
本当の仮面夫婦のスタートだ。
『やっぱり離婚したい。』
ともう夫には言わない。
夫が言ってた通り、密かに着々と準備をすすめることにした。
まずは、仕事探し。
そして、子供達の学校、幼稚園などどうするか。
転校させるか、学区内で引っ越しするか。
どんな所を借りればいいか。
広さは?家賃は?車はどうする?
名前はどうしよう。
大切なお金。実際の補助金や福祉は?
調べること、考えることはたくさんあった。
そして、こんな時に頼りになるのがブログだった。
私は再びブログの更新を再開した。
たくさん質問し、たくさんアドバイスをもらった。
逢ったこともない見知らぬ人達が、親身になって私の話を聞いてくれて、一緒に悩んでくれた。
昼間、教室にはちゃんと通っていた。
以前にもまして力を入れた。
夫に疑われないように、家事も一生懸命した。
ご飯もたくさん作り、曇りのない笑みで夫を迎えた。
一緒に晩酌をして、みんなでテレビを見た。
夫が子供達をお風呂に入れ、
私がバスタオルを持って待つ。
そして、歯磨きをさせて、夫におやすみなさいを言わせて、2階へあがる。
上2人は子供部屋、末っ子と私は和室。
寝かしつけながら寝てしまう……ふり。
ここまでは、今までと一緒。
夫の扉が閉まり、数分してから…1階へ降り、
でも、もう外へは出かけない。
代わりに、暗いリビングでパソコンを開いた。
毎晩、みんなが寝静まってからが、私のブログの時間になった。
夜な夜な、カタカタ、キーボードを打っていてた。
そして、夫が、私と同じように最新の注意を払って階段を降りてきて、
息を殺して、私の様子を見ていたなんて、、
全く気づく余地すら、あの頃の私にはなかった。