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16. 離婚の条件

そんなこんなで、夫が出ていってからの1ヶ月。 

すっかり蓮と遊び呆けていた私。

慣れというのは恐ろしい。

良心の呵責にさえ、慣れてくるようだ。

私は何食わぬ顔で、夫が出ていったことに安心して、どんどん罪を重ねていった。



『離婚してほしい』と夫に言えたことで満足してしまっていた。

『離婚したい』と、単に気持ちを伝えただけで、全く行動が伴っていなかった。

というより、実のところどうしたらいいのか分からなかった。

そもそも私は何の為に離婚しようとしてるのか。

もし、蓮に出逢っていなければ果たして離婚しようと思った?

答えはNOだ。

夫と離婚はしたかった。いつか。たぶん。

でも、きっと、できないと思っていた。

ところが、蓮に出逢って欲が出た。

熟年離婚なんてダメ。

やり直すなら、少しでも若いうちに。


本当にそうなのだろうか。

私は単に、W不倫をただの不倫に変えたいだけなのでは?


そうやって、グダグダ現実逃避している間に、夫は、この1ヶ月できっちり立て直してきた。

1ヶ月ぶりに見る夫には、義父が言ってた憔悴しきってる様子は何一つ見受けられなかった。

夫の反撃が始まった。



1番最初に夫に突きつけられた条件は

『実家に帰ること。』

それならば、子供達3人のことも安心だし、住む場所、金銭的にも不安がない。

確かにそのとおりだ。

でも、それが出来ないことは夫が1番知ってるはず。

実家の事情、私と母親の関係を知ってるのにも関わらず、しかも、それを私が嫌がることを知って言ってるのだろか。

まぁムリと分かっていたけど、一応、母親に相談してみた。

「りょうちゃんが、離婚の条件として、実家に帰れって言ってるけど……」

絶対に嫌だと即答された。

「親はいないと言えっていつも言ってるでしょう?」

一方的に電話を切られた。

それを夫に伝えると、

「じゃあ、離婚はムリだね。」

鼻で笑われた。


「ちなみに、仕事は決まったの?」

……。

「あなたが望んでするんだから、オレは一切援助しないよ。それでどうやって3人育てるつもりなの?」

……。

「どこに住むの?まさか、そのままあの家に居座るつもりじゃないよね?あれは、俺と俺の親の名義だからね。

仮にアパート借りるとして、そのお金は誰が誰がだすの?あなた、離婚したいって言うけど、ちゃんと準備してるの?

言っとくけど、貯金はあなたのものじゃないからね。ちゃんと、こっそりへそくりしてた?あなたは絶対そういうのムリだよね?

一人っ子で、何不自由なく育ってきて、留学までさせてもらって、でも帰ってきて。大阪出てきても、男の家に転がりこんで、別れたらまた別の男に養ってもらって。

ムリでしょ?あなたは。全然、自立できてないんだから。どうせまた、水商売するしかなくなる。そして、また男を頼ってしか生きていけない。

そんな女に、子供を託すわけにはいかない。俺がひきとるよ。」

「今まで、一切子育てに加わってないのに、どうやって育てるの?仕事だって不規則だし、ムリだよ…」

「それは、あなたには関係ない。

あなたがそうしたいんでしょ?子供3人を離婚という親の身勝手で傷つけて、不安定な環境におくことを望んでるのはあなたでしょ?

離婚は、そういうことでしょ?

確かに長男以外は、俺にはなついてないし、身の回りの世話も出来ない。親にも迷惑かけたくない。

だから、施設に預けるか、どうするかはオレが考える。あなたに預けるよりは安心できるから。

あなたは、甘いんだよ。世間を知らなすぎる。そんなあなたに、子供は渡せない。」


『あなた』と呼ばれることが辛かった。

いつも、あこって呼び捨てしてたのに。

夫が淡々と他人行儀に話すのが悲しかった。

私から言い出したことなのに。

「りょうちゃん」って、呼んでしまう私はやっぱり、甘いんだろうな。




私は、ブログで知り合い個人的にやり取りするようになっていた人に相談した。

『まだ子供が小さいから、必ずあこさんが養育権を持てるはずだよ。

養育費を払うのは義務だし、扶養手当も市からもらえるから、大丈夫。

子供を渡さないと言ったら、あこさんが、離婚を諦めるかもしれないと思って言ってるだけ。脅しに怯えてはいけないよ。

でもね、『子供は、母親がいないとダメ』ってのは嘘だよ。

母親が、子供がいないとダメなんだと思う。

だからって、なんでもかんでも子供の為にって、母親が我慢するのも違う。

子供は、お母さんが笑ってると幸せなんだ。

あこさんが、まず幸せじゃないと子供を幸せにはできないよ。

だから、もっとよく考えて。

まずは、あこさんが、どうしたいか。

何を捨てて、何をあきらめるか。

数えきれないほどのものを捨てるのが、離婚なんだよ。

だから、ちゃんと考えて。』



夫からは、早く、私のビジョンを提示するように言われた。

子供達と暮らしたいのなら、俺が納得できる人生設計を持ってこいと言われた。


夫の言ってることは、正しい。

………ぐうの音もでない。













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