褥瘡治療薬の包括的ガイド:基剤と主薬の特徴を踏まえた使い分け
褥瘡治療において、創の状態や治癒段階に応じて適切な外用薬を選択することが重要です。外用薬は「主薬」と「基剤」から構成されており、それぞれの特徴を理解することが効果的な治療につながります。以下に、基剤の分類と主な薬剤の特徴をまとめます。
1. 基剤の分類と特徴
疎水性基剤(油脂性基剤)
特徴:油分のみで構成され、水となじまない。少量の滲出液を創面にとどめ、保湿効果と創の保護効果がある。
適応:上皮化段階の創に適している。
主な薬剤:
亜鉛華軟膏:軽い収れん作用、抗炎症作用
アズノール軟膏:抗炎症作用、創面保護
プロスタンディン軟膏:刺激が少なく、肉芽形成に優れる
親水性基剤
a) 乳剤性基剤
特徴:水と油を界面活性剤で混ぜたもの。水中油型(O/W型)と油中水型(W/O型)がある。
適応:O/W型は乾燥した創面、W/O型は滲出液が適正な創に適している。
主な薬剤:
オルセノン軟膏:保湿効果
ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀):経皮吸収に優れる、抗菌作用
リフラップ軟膏:保湿効果
ソルコセリル軟膏:創傷治癒促進
b) 水溶性基剤(吸水性基剤)
特徴:水分を吸収して溶解する。滲出液を吸収する。
適応:滲出液の多い創に適している。
主な薬剤:
アクトシン軟膏(ブクラデシンナトリウム):滲出液吸収、肉芽形成促進
ブロメライン軟膏:滲出液吸収、壊死組織除去
ユーパスタ軟膏(ポビドンヨード・精製白糖):感染制御、肉芽形成促進
2. 治療目的別の主な薬剤と特徴
感染制御
ユーパスタ軟膏:ヨードによる殺菌作用、肉芽形成促進
カデックス軟膏(カデキソマー・ヨウ素):感染制御、滲出液吸収
ゲーベンクリーム:銀による感染制御作用
壊死組織の除去
ブロメライン軟膏:壊死組織除去
フランセチン・T・パウダー(トリプシン、フラジオマイシン):壊死組織分解除去
デブリサンペースト(デキストラノマー):壊死組織吸着除去
肉芽形成促進
プロスタンディン軟膏(アルプロスタジル アルファデクス):肉芽形成作用
ソルコセリル軟膏:創傷治癒促進
アクトシン軟膏:上皮形成促進
褥瘡の治療では、創の状態(乾燥、滲出液の量、感染の有無など)に応じて適切な基剤と主薬を選択することが重要です。例えば、滲出液の多い創には水溶性基剤の薬剤を、乾燥した創には油脂性基剤や乳剤性基剤の薬剤を選択します。また、感染が疑われる場合はヨードや銀を含む薬剤を使用します。
創の状態は時間とともに変化するため、定期的な観察と適切な薬剤の変更が必要です。この包括的なガイドを参考に、個々の患者さんの状態に合わせて最適な治療薬を選択してください。