見出し画像

プロジェクトメンバー_自己紹介 | 井上 陽人編

「風景をつくる宿」プロジェクトの生き物担当の井上陽人(いのうえ はると)です。
現在、兵庫県立大学院でサンショウウオの研究をしており、来年度よりWEEK神山で働く予定です。

今回から、プロジェクトメンバーの自己紹介記事を掲載していきます。
それぞれのこれまでの経緯や、プロジェクトに対する思いを綴ります。
ぜひご覧ください!

生き物の研究について

大学時代は、5種類の" ヌマエビ ”を対象に1本の川の中でどのように棲み分けているのかについて調査し、それぞれの種に必要な生息条件について研究しました。

海から川にやってくるヤマトヌマエビ


大学院時代は、希少種である” アベサンショウウオ ”を対象に繁殖場所の環境について調査し、保全策を検討しています。

産卵に備え、水辺に集まるアベサンショウウオの成体

これまでの研究から、多くの生き物は人の活動に大きく影響を受け、それらにうまく適応して生息していることが分かってきました。        (例えば、田んぼや用水路を利用する魚)

しかし近年、人々の生活スタイルの変化に伴い、身近な自然環境が管理放棄され、『”元”里山』が目立つようになってきました。耕作放棄地が代表的な例です。神山町でも多くの耕作放棄地が点在しています。

植物が繁茂する耕作放棄地(元々は農地だった)

これらの『”元”里山』は、多くの生き物の棲み処であると同時に、人々がつくり・受け継いできた日本の歴史的な風景でもあります。

神山町の風景と生き物

神山町の歴史的な風景の1つとして、急峻な地形がゆえに、石積みにより創出された居住地や農地が挙げられます。

山際に石積みによってつくられた宅地と農地

ここにある溝や水田は、神山町では貴重な” 水の流れが緩やかな環境 ”です。
緩流域を好むカエルやイモリの視点で見ると、石積みにより創出された土地にある水域は、重要な生息場所として機能していると考えられます。

アカハライモリの成体と幼生

耕作放棄により草や樹木が繁茂するにつれ、これらの水域は消失しつつあります。同じ風景の変化でも、人間目線ではただ荒れた土地が増えるだけですが、カエルやイモリの目線では棲み処が無くなるという風に大きな違いがみられます。このように、そこに棲む生き物の視点を持つことができると、風景をより細かいスケールで捉えることができます。

「風景をつくる宿」プロジェクトでは、宿周辺の管理されなくなった環境(川・森・農地 等)に再度手を加え、それぞれに価値のある風景をつくっていきます。

僕は生き物を研究していた経験から、人のみならず、そこに棲む生き物の目線で風景をとらえ、風景づくりの付加価値を皆様に提案していこうと考えています。

枯れた木で休むサシバ

WEEK神山との出会い

生き物好きな僕ですが、同等に古民家など歴史的な日本の風景に興味があり、田舎で働きたいと考えるようになり「古民家事業」や「地方創生」をキーワードに進路を探していました。大学の図書館で借りた「神山進化論」という1冊の本を読み、面白そうな町という印象を受け、何かいい出会いやアイデアを掴めるかも?と思い、実際に訪れてみることにしました。

そこで、WEEK神山の神先さんと出会い、”サンショウウオ”トークで盛り上がり、古民家事業に興味がある旨も伝えると、「インターンに来る?」と誘っていただきました。

インターンやその後の関わりについては、以下の記事を読んでいただけると幸いです。

これまでの関わりから、神山町の人や生き物にますます興味がでてき、神山で働きたいなと考えるようになりました。

「風景をつくる宿」プロジェクトでやっていきたいこと


これからWEEK神山では、多角的な視点で風景について考え、つくっていく実験的な取り組みが始まります。歴史的な風景は、農林業や庭の手入れなど多くの人の関わりによって作られてきました。よって、このプロジェクトは長期的に多くの参加者と実施していきたいです。

文系・理系の壁を越えた多くの学生や参加者と今後の日本の田舎のあり方を考え、学んでいくことを理想としています。

おわりに

神山町に足を運んだことで、進路に悩んでいた3年前の自分が考えていた以上に、面白そうな道に進むことができました。

社会が自然環境の大切さを見つめなおし始めた今日、会社や行政、学校など様々な団体や個人が環境について考えることが求められています。

このプロジェクトは、「風景」を見つめることで、僕たちが環境のために何ができるのかを改めて考える良い"きっかけ"となるのではないかなと考えています。また、まちづくりや自然に興味がある人にとっては、人脈の拡大や知識の共有の場、実践の場としても機能することが期待されます。

宿泊業だからこそできる田舎の取り組みを楽しんでいただきたいです。

それでは、神山の豊かな自然の中で皆様に出会えることを楽しみにしております!


いいなと思ったら応援しよう!