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大好きな場所

私の地元はかなり田舎だ。

電車は通っておらず、栄えている街へ向かうバスも2時間に1本ほどしか通っていない。商店街はあるが9割を超える店はシャッターを閉じている。精肉店が1店と11時までの居酒屋が2店のみ残っている。スーパーは1つで町の人はほぼ全員そこで買い物をする。町を歩いていても人とすれ違うことはほぼなく、山や田んぼといった緑がそこら中に広がっている。私はそんな地元が大好きだ。

そんなかなりの田舎で高校卒業まで暮らしていたが、実のところ、大学進学で地元を離れるまでは、ほとんど不便がなく、そこまで田舎だとは思っていなかった。地元を離れてから唯一不便だと感じたことは、電車の乗り方を知らなかったことだ。大学進学のタイミングで地元を離れ、少し都会の街へ引っ越した。大学でできた友人と地元の話をしているうちに、私の地元がかなり田舎だということが浮き彫りになった。学校帰りにスタバに寄っておしゃれに過ごしたり、休日は電車に乗って買い物や映画を見て過ごしたりと、話を聞いていくうちに自分と同じ高校生だったのに、全く違う過ごし方をしていることを知った。
友人がそのように過ごしていたのに対し、私はというと、学校帰りはベンチに座り、友人と空が真っ暗になるまで話し尽くしたり、休日はポケモンGOで数少ないポケストップやジムを永遠と回っていたりした。

友人のようなおしゃれな高校生活もうらやましく思った反面、私の高校生活も最高の思い出であり、捨てたもんじゃないとも思った。世間的に見れば友人のような高校生活が理想的なものであろう。ちょっと電車に乗れば時間をつぶせる施設がそろっており、欲しいものもだいたい手に入るそんな暮らしだ。私が高校生の頃は、そんな過ごし方もできる高校生活があるということを知らなかった。今住んでいる地元でできることを当時の友人とすることで精いっぱいだったのだ。

初めて大学の友人の話を聞いたときは、自分の地元に何もないことを恨めしくも思ったが、たまに帰省すると、そんなことどうでもいいと思うくらい、18年間過ごした地元が大好きだと思わされる。鳥やカエルなどの生き物の声が静かな住宅街に響き渡る時間帯やいつもおかえりと声をかけてくれる町のおじいちゃんおばあちゃんたち、ちびっこがむじゃきにはしゃぐ声、夜になると星が信じられないくらい綺麗に見えること、この町のあらゆるところに思い出があり、地元を離れていては感じることができないことがいくつもある。

そんな私は現在大学4年生で、地元から車で1時間半ほどの県庁所在地にある企業への就職が決まった。(ちなみに、現在は実家から車で8時間ほどの場所に住んでいる。)仕事が始まれば、不安や悩み、葛藤など、今まであmり感じたことのない感情で心がいっぱいになるだろう。そんなとき、すぐに帰れる大好きな地元がそこにあるととても安心する。他の人からすると、何もない、ただのド田舎かもしれないが、私は大好きなそのド田舎に温かみや安らぎを求め、何度も帰省するに違いない。

終わり

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