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連続小説「アディクション」(ノート36)

ギャンブル依存症から立ち上がる

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

〈「進路」〉

私の借金問題にケリをつけている間に、ここ正力クリニックにおいては、秋の文化祭を終えたところで、落ち着いた日々を過ごしております。まぁメンバー自体はちっとも落ち着いちゃいませんが。

メンタルヘルスグループのおたけさんは、その文化祭前にここを卒業して行きました。新しい職場でポンコツな日々を過ごしていることと存じます。

そして柳田さんも復職の時期が決まり卒業間近。あかねんも年内には卒業するらしいです。あと相羽さんは、あおたんが卒業するタイミングで卒業するというワケの分からんことを言ってます。「論客・森永」と「帝王・隠善」はもうしばらくとのことなんですが、ボクシングプログラムの時に、柳田さんから色々と聞くことができまして、、

「相羽さんはもう常連なんすよ」

「あおたんのですか?」

「かなり寺のお布施くすねてまで、注ぎ込んでいるらしいですよ。」

「そりゃ、こっちのフロアに来たほうが良さそうですね。」

「あおたんも、ここぞとばかり稼ぐというか、いい「裏引き」捕まえたというか。あ、玉井さんも利用したようです」

「お店にお金入れなくていいなら、ここのメンバー使えばいい暮らしできますよねえ。確かに。」

「あと、、庄司さんも、、」

「なんと。てか、やばくね?」

「バレないようにするとか言って、私には、ていうか、相羽さんも知ってる。」

「それは、秘密保持という名の筒抜けってやつですね。」

あまりやり過ぎると、きっとここにはいられなくなるなと思いきや、この会話をした翌日から、あおたんはクリニックには来なくなってしまいました。そうなると相羽さんも卒業かw

ちなみに、魚さんも一度利用したらしいのですが、本●強要したらしく、出禁となってしまいました。

そういうわけで、皆さん色々と進路かあって忙しい日常に戻るといったところでしょうか。

私は、文化祭で出した「味噌ラーメン」がさらなる好評を呼び100食を秒速で完売させて調子付いていて、ラーメン屋になるために調理師の資格を取ろうかと目論見始めていたのでした。

裁判後、債権者に配当した後の退職金も残っていたので、これで専門学校に通い生活費も出せるだろうと、色々と計画を立てておりました。そして、専門学校入学のタイミングでここも卒業かなと。

ところで、アディクショングループのいつもの皆さんは相変わらずいつもの感じだったのですが、何と淡河さんが、アルバイトで働きに出るという衝撃情報が流れました。

「軍資金が尽きたからですか?」

「屑星さん、いくらあんたでもそういう聞き方は失礼だと思うけどな。」

「いやいやいや、淡河さんが働くなんて私には意味がわかりませんよw」

「何を言ってるかね?ボクほど勤勉な人間はこの世の中にいないだろうが。」

「来週、ジャパンカップでキタサンブラックにブチ込むんですよね?」

「そう、そのためには、、ん?何を言ってるかね。不謹慎な。」

などという茶番をしているんですが、この淡河さんみたいに、ギャンブルがあるからこそ労働意欲が湧くという方は、世の中にかなりいらっしゃるのではと考えております。

景気回復しても、淡河は働かない

消費税下がっても、淡河は働かない

働き方改革しても、淡河は働かない

五輪で盛り上がっても、淡河は働かない

しかし

ギャンブルがあれば、淡河は働く

私の脳内においては「ギャンブルは悪」という整理をしていますが、このように「ギャンブルは生きる支え」と考えている者の方が、私の考え方を持つ者よりは間違いなく多いと思います。

案の定、淡河さんは一週間くらいの日銭を稼いで、ジャパンカップ前日に仕事を辞められたそうです。確か生活保護以外でバイトして稼いだ場合、2万くらいまでなら認められると思いました。その辺の計算高さだけは、この人は腹立つくらい超有能でございますw

そして、私にとっては嬉しい情報が舞い込んで来ました。

「倉骨、出所したってよ。」

「お帰りなさい」〉

倉骨さんが出所を終え、クリニックに戻ってきました。

根市君と加茂川君は「兄貴分」の復帰を喜び、淡河さんは「融資元」の復帰を喜び、玉井さんは「女好き仲間」の復帰を喜び、魚さんは何だかよくわからないのですが喜び、まぁ捉え方は人それぞれですが、めでたい雰囲気となってます。

しかし、忘れてはならないのは、倉骨さんによる被害女性がまた一人増えたという痛ましい事実もございます。まぁ、賠償し和解はされており、当然二度と会うようなこともございませんが。

「で、どうなってるんですか?」

「玉井さん、いきなりなんですか」

「ボネさん、そりゃあ気になりますよ」

「魚さん、興奮しない。」

倉骨さんが、島野さんに告った直後に、問題行為を起こし捕まり、その後面会で島野さんと話してどうなったか、というのはそりゃあこのフロアの最大の関心事というわけでございまして。

島野さんは休憩時間は、事務スペースに引っ込んでいるというシチュエーションでございます。

「おい、ボネ、脈あるのか?」

「淡河さん、普通に考えてみてください。そういうことならボクはここには居られませんよ。」

「そうか。フラれたか」

「まぁ、早い話、そういうことです。」

「で、島ちゃん、他に男でもいたか?」

「そういうことは、話してくれません。「気持ちは嬉しいが、やめましょう」とだけで、後は全部水に流しましょうってことで終わりです。」

「ほう。ボネ、それでいいんか?」

「だって全く『脈なし』ですからw」

ということで、今までどおりというか、何も無かったことで収まったように私は思ったのですが、

「収まってませんね。」

玉井さんと、例によってお茶会をしており、一流バーテンダーの見解を拝聴することとしました。

「玉井さん、どう見てますか?」

「あぁ、あれは『脈あり』です。」

「えー、ホント?すごい!」

「魚さん、うるさいよ。」

こちらも例のごとく、鼻息を荒くして聞き入っております。

「島ちゃん、他に男はいないのかな?」

「たぶん、いや間違いなく、あの子は『未経験』ですよ。」

魚さんは、鼻血を出してしまい、店の紙ナプキンを丸めて鼻の中に突っ込みながら目を充血させて興奮しています。

「そうですか。で、それと『脈あり』とどう繋がるんですか?」

「面会の時にボネさんは、思いの丈を全部伝えたんでしたよね。」

「まぁ、それは島ちゃんもミーティングでそのようなこと言ってましたね。」

「たぶん、ここまで真正面に告白されて、『メンバー(患者)とスタッフの関係でいることが大事で、そういう恋愛関係でいることは許されません』なんて理由で振ることはまず無い。多分そこは一人の人間としてキチンと答えたと思ってます。オトコの扱い慣れてないからw」

「なるほど。別の答えをしたのでは、ということはあり得ますね。ただ、『脈アリ』ってのはどうなのかな?」

「基本的には、いい男じゃないですか。見た目も性格も。」

「ボクもそういう意味なら頑張ります」

「本●強要男は黙ってろ」

魚さん、メンタルだけは強いわ

「島ちゃんが、倉骨さんをそういうふうに見るのかな?」

「告白されて、そういうふうに見えちゃったんじゃないかな。」

「問題行動とかは、引っ掛からないんだろうか?」

「むしろ、島ちゃんなら、そういうところは守ってくれると思いますよ。多分、島ちゃんが付いてくれれば、ボネさんは一生問題行動を起こさないと思う。」

まぁ、倉骨さんは通信講座の塾講師としては超一流だから、問題行動以外のところだけで総合的に見ると、世間的には「結婚したい男」ってことになります。

「ボクも、もんちゃんが付いてくれれば、一生問題行動は起こさない。」

と、世間的にはどうみても「結婚したくない男」が脇でホザいておりますが。

「まぁ、この件については、我々もクリニックでは一切触れないことにしましょう。ここでは散々触れますが。」

「そうですね。魚さんもクリニックで喋っちゃ駄目ですよ。ここでならいくら喋っちゃってもいいけど。」

「わかりました。」

わかっていませんでした。 

翌日のクリニックの朝のプログラム前に、淡河さんが私の所に飛んできて

「屑星さん、ボネと島ちゃん付き合っているんだって?」

「淡河さん、それ誰の情報?」

「魚ちゃんが言いふらしてるよ。」

「えー、全くのデマです。てかあいつ、フィレオフィッシュにしてやるか。」

「あ、屑星さん。もういいですよ」

「ん、倉骨さん、どゆこと?」

「それ、本当ですから。」

倉骨さんとしては、何も無かった形でここに戻って来たかったようでしたが、隠し通すのもムリだと思ったらしく、魚さんが倉骨さんに問いただしたのが、むしろ「後押し」となって、魚さんに事実関係を認めてしまったとのことでした。

で、早速倉骨さんは、ここのクリニックを「卒業」し、島野さんと一緒に人生を歩む一歩を踏み出しました。

とはいえ、スタッフとメンバーのカップル誕生ということで、クリニック内はザワついて、そして島ちゃんどうなる?

今回はここまでとします。

GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ























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