連続小説「アディクション」(ノート18)
ギャンブル依存症から立ち上がる
この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。
<「異端児?」>
そういうわけで、私はここのスタッフに嫌われておりますw
ただ、なぜ嫌われているかということを少し考えてみましたが、「何かを嫌う」イコール「何かを守るものがある」だと常々考えております。
で、ここのチーフ的スタッフの島貫さんにとっては、メンタルヘルスグループのメンバーさんがここでプログラムを受け回復し社会復帰するまでに、少なくとも「支障となるもの」はなるべく取り除かなければならない、という発想はある意味当然だと考えられます。
で、これは後に柳田さんから聞いた話なんですが、うつ病の人にとって「元気な人が近くにいると、より憂鬱になり気が重くなることがある」らしいのです。
たぶん、静かにしていたい時間帯に、どんなものでも「不快な雑音」となってきて、能天気に元気に振舞われると余計に失望感みたいなのが増してくるのでしょう。
まあそういうわけで、何事にも臆することなく立ち向かう私って、間違いなく「元気な人」なんだろうなと。
そして「アディクション」という見方によっては反社会的な要素(詐欺、痴漢、薬物等)を持ち合わせている者がこのフロアであんまり「元気」に振舞われると、うつ病のメンバーさんの精神的負担が増えて回復が遅れる要因になるというのも、強ち否定できないとも思っています。
島貫さんがこのあたりを理解したうえで采配しているかどうか、そんなにリテラシーが高い人かどうかはわかりませんけど、とにかく私がここで「アディクション色」出すということは抑えるべき、という考えに基づき私の言動を監視に近い状態で注視しているというのはわかっているのです。
がだばっとしかし、私もいちおう「生身の人間」です。ましてやこの「精神科のクリニック」内で、ある程度ありのままの自分で振舞えなければここにいる意味もありません。
もちろん、社会復帰を前提に「がまんすることも訓練」という考え方もわからなくはないのですが、この時点での自分はまだ、公務員を退職もしてない、破産事件も解決してない、強制退去後の住居も決まってないという「ゼロ」ではなく「マイナス」の状況なので、「自分をしっかりさせる」ことが何よりの優先事項でした。
あと、「がまんする」ということが社会において本当に大切かというのも疑問なんですけどね。自分が言いたいことは基本自由に言ってもいいと思ってます。例えそれで仕事がクビになってもです(実際に社会復帰後それでクビになりましたがw)。
少なくともここのスタッフが自分に対して理不尽だと思ったら理不尽ですと聞き返すのはむしろ当たり前で、またその理不尽の理由がだいたい納得できないというか稚拙なことが多いのが一層私を反発させ、そしてこのフロアの「異端児」として仕立て上げられるのかなと思っています。
〈「裏切り」〉
おそらくというか、ここにいるほとんどの人は「人間関係」で病んでしまった人たちなんだろうと思います。該当しないのは、私と峰さんくらいでしょうか?
午前のメンバーレクチャーを終え、昼食を食べながら色んなことを考えているのですが、人間関係で一番傷つくことって、たぶん裏切られることなのかあと、同じシマで弁当を食べている、おたけさんと湯口さんを見ては思いついたりしていました。
さすがにアディクションとは違ってガヤガヤせずに、基本的には静かであり、隣のシマではほとんど生気がなく、机の上に頭をつけたままじっとしている人もいました。
結構気分が優れないというか「上がってこれない」人も相当数いて、ここにいる人もそれなりに心の闇を抱えているんだなあと思いました。
「おーい、ノブ」
「なんすか、峰さん?」
「弁当を残すなよ。」
「体重制限してるんですから」
「お前がそんなことしてどうするんだ」
「そりゃあ、モテなくなるからですよ」
「てか、モテてないだろ?」
「だから努力が大事なんです」
「ノブ、無駄な努力はするな」
「ノブ」と言われてるのは湯口さんで、元スポーツ新聞の記者。実は以前競艇の担当をしてた頃によく峰さんを取材していて懇意な関係にあったようで、ここではほぼ師弟関係を築いておりました。
「だって彼女欲しいんですよ」
「ん、お前いくつになった?」
「40です。ちょうど」
「あー、だったら彼女とかじゃなくて見合いしろよ」
「東京支部の女子選手紹介して下さいよ。」
「お前、巨乳好きだから該当者が無い」
「へー、女子選手ってそうなんだ」
「おたけさん、いきなりなんですか」
「まぁ、おたけさんも東京支部だな」
「峰さん、それセクハラよ」
「いやいや、おたけさんなら競艇選手になればいいトコ行けたと思うよ」
「あらそう?今から始めようかしら」
「うん、30歳未満なら大丈夫だよ」
「え、52歳未満じゃダメ?」
「なにそこで、正直に刻んだ数字出すんだよ」
それにしても、52歳で結婚詐欺って引っ掛かるんだなと、変に感心しながら聞いて居ましたが、確かに人生の終末を共に過ごす伴侶が必要という方もかなりいるので、それなりの詐欺はあるのかも知れません。
一方、ノブさんは、休職ではなく、実は退職していました。
例の件で上司を好意を寄せていた女性の目の前で殴り罵倒して自らケリをつけたそうです。大物芸能人のスキャンダルは記事にすると新聞社自体が倒れるようなネタということで、社から退職金を多少上乗せして貰って収めたそうです。
「バラしちゃえばいいのに」
「いや、殺されますから」
これも闇かw
ん、ノブとおたけさんでくっついちまうのはどうか?さすがにムリかwww
今回はここまでとします
GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ
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