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連続小説「アディクション」(ノート17)

ギャンブル依存症から立ち上がる

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

〈「論客?」〉

えー、実はまだ初日ですw

朝イチでスタッフから胸糞な説明を受け、そして挨拶と着席時にアレコレ聞かれたり、脇でデカい声でギャンブルの話をされ、午前の講義で変な動画を垂れ流され、引き続き院長診察で「リテラシー」がどうたら言われたのち、なんか変なアドレナリンが出て、ここにいる奴等に劣ってるなんてあり得ないと意固地になりかけてた状態で昼食となりました。

正式な自己紹介的なことは、昼食後のミーティングで時間を取るらしいのですが、おおむね挨拶もしたので何を話せばいいのか考えながら、弁当箱の蓋をあけたら、隣のシマから、

「ああ~、嫌だ」

「森永さん、納豆ですか?」

「今日は最悪だ、だ、誰か貰ってください。助けてください。」

どうやら、必要以上に納豆は皆要らないようなので、挨拶がてら、

「私が貰いますよ」

「ほ、本当ですか?屑星さん、ありがとうございます」

「お安い御用です。」

「あ、森永です。今後ともよろしくお願いします。」

「屑星です。ご丁寧にどうも。」

納豆のパックを森永さんからもらって自席に戻ると、待ってましたとばかり峰さんが、

「こういう形でファンの方と再会できるとは思いませんでした。」

「いやいや、私もびっくりしましたよ」

「幸か不幸か、屑星さん以外に競艇は誰も知らないんですよ。」

「あのギャンブル好き2人は競馬専門か。今はどういう状況なんですか?」

「いわゆるスタート事故を連発し過ぎたため、無期限出場停止となってます」

「それは、厳しいですね」

「で、本来なら1年停止で済むのですが、それが原因で睡眠障害を起こし病んでしまったので、精神科で治療を受け、メンタルが回復することが復帰の要件です。公営競技も組織としては役所と同じなので、社会復帰してよい旨の診断書を出してもらうまで通い続けることになります。」 

前例は聞いたことはないのですが、大怪我からの復帰の場合は、医師の診断書をもって競走会の許可が必要なので、精神疾患も同じ扱いになると思われます。

ただ、かなり回復が近づいて、近々ここの通院も終了するとのことです。

さて、午後のミーティングで私の自己紹介をすることになったのですが、「アディクションの話はするな」ということなので、そうすると何を話していいかと、近況もまもなく強制退去を控えてと、大っぴらに言わないほうが良さそうだしということで、役人時代の話をすることにし、少しエピソードトークを付け加えて話を終わらせたところ、

「歴代の総理で一番人柄が良いのが●さんだなんて、信じられません!」
と、森永さんが食いついてきました。
「私の知ってる情報とは、全然違いますぞ!屑星さん!あなたは何者ですか!」

(おい、スタッフ止めろよ。まぁ「何者」って公務員ですけど、、)

と、思いつつ、どうやら「アディクション」の私が攻められるのは気持ちがよろしいらしいので、

「説明しますけど、長くなりますよ」と切り返しました。すると、

「それでは、明日「メンバーレクチャー」というプログラムがあるので、そこで解説して下さい」
と、島貫スタッフから緊急提案という無茶振りをされました。

まあ、夕方の「学習タイム」で資料作ればできそうなので、「快く」了解しました。

〈「一悶着?」〉

そういうわけで、まだ初日です。

「ちょっと、どういうことですか?」

「だから、先生の日程が取れないのです。診断書はまだ書けません。」

「競走会に診断書を来週末に提出することに調整したの知ってますよね!」

「でも、先生が忙しいのです」

「何寝ぼけたこと言ってるんですか!調整は先月の早い時期からやってるんですよ!私の生活なんだと思ってるんですか!診察の時間すぐ取って下さい!」

「先生に、そんなこと言えません」

「あんた、何のためのスタッフだよ!」

「峰さん、今のは暴言ですよ?」

「は?こっちは困って言ってるんだよ。わかったよ。話にならんから選手会長から正力理事長に繋いでもらうよ」

「え、それは止めてください」

「別に関係ないだろ。診断書書いてもらうのにアンタが入る余地はないんだ。こっちは来週競走会に診断書を出さないと選手で復帰できないんだよ。」

休み時間、凄い剣幕で峰さんが事務スペースから出てきました。

「本当にマジでポンコツだわ」

「聞こえましたけど、診察時間は確保すべきですよね。怒られてでも」

「自分のポカのツケをこっちに回そうとしているんですよ。」

「選手会長から理事長に繋いで頼むのが早そうですよね。」

「そうならないのがいいんですがね」

「早く、選手挨拶で『東京支部塾長、江戸川平八である』が聞きたいですよ。」

「お、さすがですね。」

なんてやり取りしていると、もう一人のスタッフの庄司さんが峰さんのところにやってきて、

「今、僕の方から院長に話しました。明日の朝イチなら空いてるそうですが」

「あ、ありがとうございます。それでよろしくお願いします。」

「良かったですね。一悶着が解決して」

「そうなんですけど、自分じゃやんないんですよ。アイツは。」

「いやいや、でもファンとして嬉しい限りですよ。私はもう買えませんが。」

「あのギャンブルコンビに買い方教えてあげてください。僕も選手なので買い方とか教えるとヤバいですからw。そういうわけで、僕もここはすぐという訳ではないですが、あと少しになりますよ。」

「そうですか、では、しばらくはここで楽しんでいいんじゃないですか?」

「まあでも、あのスタッフは気をつけた方がいいと思います。」

「そうですね。特に私には「アディクション」ということでアタリが強いですからね。」

休憩時間が終わり、「学習タイム」において、森永さんと一悶着のあった「メンバーレクチャー説明資料」の作成に取り掛かりました。こういうプレゼンは公務員時代やり慣れていて朝飯前なんです。

そういうわけで、翌日私は「池上彰」になりますw

「池上彰?」>

「メンタルヘルスグループ」2日目をようやく迎えました。

私はそこに移動して早々にこのフロアのプログラムの「メンバーレクチャー」において、森永さんの要望に応えるべく、「内閣と国会」というタイトルで講義をすることとなりました。

このプログラムはメンバー持ち込み企画というか、何かネタがあったら一人約30分の枠で事前登録しレクチャーすることが可能で、基本的にどんなテーマでもよいことになっていました。

ただ、なかなかそういうことを積極的にやる人はいなくて、だいたいこのフロアに来て1回やればノルマ終了、という感じなので、この日も私のほかにレクチャーするのは峰さんだけでした。

峰さんは、「競艇」について皆さんに色々話したいことがあるらしく、これまで何度か色々な角度からレクチャーをされ、競艇の魅力については一通り語ったので、本日は「競艇場グルメ」について語ることとなっておりました。

はっきり言って、ズルいですw

明らかに、楽しいタイトルと楽しくないタイトルで、どう考えても皆さんの食いつきが違います。

しかもご丁寧に、「屑星さんのは、森永さんにもじっくり聞いていただくということで、後のほうにしましょう」という余計な配慮までされてしまいました。

レクチャーの内容は当然?割愛しますwww

峰さんのレクチャーは、実に皆さんの興味を引き、反響や質問も多数出ました。

聴いたメンバー全員が、平和島の「煮込み」と多摩川の「牛炊」だけは何が何でも食べてみたいということで、近々メンバーで競艇場ツアーに行こうなんて盛り上がる有様でした。私は行けませんがw

一つだけ気になったのは、これまで何度もレクチャーがあってどうして柳田&相羽の「遊び人コンビ」は競艇をやろうとしたかったのだろうということですが、実はこの2人、なかなかどうしてしっかりしていることが後で分かることになります。

さて、私の順番になりましたが、当然自分としてはやりにくい状況です。正に「M-1グランプリ」でドカンドカン受けて高得点が出たあとの登場みたいな感じですw

しかし、そこは「レクチャーの達人」の私です(筆者の実際とは全く異なりますwww)。

例の「カレー対決」の戦略について、あの曲者揃いのアディクションメンバーを説得した手腕は伊達ではありません。

時間も「私を困らせるため」に1時間も取っていただき、むしろ私にとっては好都合でした。短い時間でも行けますが、何時間でもやれといえばネタと蘊蓄は無限に語れます。

メンバーは全員、私のレクチャーを食い入るように聞いておりました。特にあの森永さんはメモまで取る始末でした。

まあ、テーマがテーマなので質問は峰さんのほどではありませんでしたが、興味深く色々なことを聞いてきた森永さんという方がいらっしゃいました。

レクチャーは無事終了。峰さんからは「屑星さんが池上彰に見えた」と言われていい気になっていると、私の方を島貫スタッフが憎らしそうに見つめていました。

今回はここまでとします。

GOOD LUCK  陽はまた昇る
くずぼしいってつ













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