S+AB戦略
最近おかしな話をたくさん耳にします。昨年の秋ぐらいから、コロナバブルが終わってSMの業績が振るわなくなりました。今期の決算は赤字になる企業もあるようです。顧問税理士の先生からは、「このままだと資金が底をつき倒産ですよ。売上げを2割上げないといけませんね」と簡単に言います。
いくつもの壁を乗り越えてきた経営者は、「売上げを2割上げる方法があるなら教えてほしい」と心の底で思っていても黙っています。「きっと、この先生は、来期、売上げが戻らなかったら、経費を削れ!と言い出すだろうな。経費を削っても赤字なら、今度は粗利益率を30%にせよと言ってくるだろう」と見抜いています。
ところが、経験の乏しいヒヨコ経営者は、この言葉を信じてしまうのです。売上げを上げる方法が分からない→経費の削減をする→優秀な社員からやめていく→従業員の士気はますます落ちる→慢性的な人手不足となるので、アウトパックの商品が増える→売場から人が消える→経費を削減しても赤字を解消できない。ますます売上げは落ちる→粗利益率を上げるため、鮮魚は、本鮪からバチマグロ、キハダマグロ、挙句の果てはビンチョウマグロを扱いだす、精肉は、和牛から交雑種、国産牛、輸入牛とグレードを下げていく→ますます客離れを起こす、という悪魔のサイクルに陥るのです。
売上げが伸びないのは、リピーターが離れて行っているからです。売場と商品に感動がないとリピーターは離れていきます。リピーターを増やすには、売場に出て、お客に「こんにちは!」と話しかけ、対話することがスタートなのです。
「売上げが減ったら人を増やせ!」とは須田泰三先生の箴言です。店の活気はお客が作る。売場に出て、お客に話しかける。感動がリピーターを生むのです。
マスコミは、某ディスカウントストア、某チェーンストアが安いと言っていますが、彼らが売っている商品は食品ではなく“毒物”なのです。そして彼らの売場には人がいません。
我々は、情報貧困者になってはなりません。こんな状況下でも伸びているお店があるのです。いかなる手段を使っても、辺境部分の変化に全神経を集中しなければならないのです。
我々の「まなざし」が、効率化、生産性向上、ディスカウントに向けられている間に、一部の企業は「S+AB戦略」「NBに依存しない品揃え」「付加価値を売る」ことで全く新しい市場を創造しています。
「S+AB戦略」とは何でしょうか。例えば、マンゴーで例えると、Sとは太陽のタマゴ、Aは宮崎マンゴー3L、2Lサイズ、Bは宮崎マンゴーLサイズになります。エビなら、Sは、活伊勢エビ、活車エビ、Aは特大ブラックタイガー、Bは大ブラックタイガーです。
松阪牛極厚シャトーブリアン、松坂牛ステーキ食べ比べセット(シャトーブリアン・リブ芯・ザブトン)、和牛希少部位焼肉食べ比べセット(三角バラ・インサイド・カイノミなど)、伊勢海老、アワビ入り刺身盛合せなど「S」は、母の日や父の日、ハレの日の華やかな食卓を演出します。買わずとも見るだけでお客は心をときめかすのです。「AB」は、切身を例にするとブロック、超厚切り、厚切りなど部位、厚さを切り分けます。
スーパーマーケットの基本は、商品のグレードを混ぜて、均一な商品を作り、価格を抑え込むことでした。しかし現在は、均一な商品では、お客の心に突き刺さらないのです。あえて段階(グレード)を設けることで、「おいしそう」「何これ!見たことがない」とお客の心が動くのです。
時代は、NBを安く売る時代、キャベツ、大根など常備野菜、サンマ、アジ、イワシ、イカ、カツオなど大衆魚、豚小間切れ、豚ミンチ、若鶏モモ肉、ムネ肉を安く売るだけではお客は魅力を感じなくなったのです。