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見込み型で入って受注型で出る。これが地方スーパーの生きる道

  事業には受注型事業と見込み型事業があります。スーパーマーケットで例えれば、チェーンストアは受注型、個店主義の店は見込み型です。受注型は競争の激化でジリ貧になるのは火を見るより明らかです。顧客の成熟化に対応するため品揃えを変え続けるとともに奇抜な商品を投入し続けなければなりません。一方、見込み型はダイナミックな価格設定と独自の品揃えで顧客を増やし続けるのです。

 「社長業」著者・牟田学氏は、事業には、受注事業と見込み事業の2種類あると言っています。ほとんどの会社は、このどちらかに当てはまります。特殊な例として両方の特徴を持つ会社もあります。受注型事業は、仕事の数量も値段も取引先が決定します。取引先に数量と値段が支配されるので基本的に大儲けができません。長期的にはジリ貧になります。これに対して、見込み型事業は商品の数量も価格も自分で決定できます。事業を拡大し、大儲けできる代わりに、売れなければ、大損します。

 チェーンストアは、個店単位で見れば受注型企業です。ライバル店と同じような品揃え、同じような価格、同じようなサービスでお客を奪い合います。競合店が増えれば、パイが減りますから、売上げも減り利益も減ります。何とか黒字にしようと値段を上げれば、客を奪われます。

 20年前に比べて、チェーンストアの1店舗当たりの売上高は半減しています。エコス(東京都昭島市:113店舗・1,360億円)では、20年前年商20億円であった店舗が現在は10億円を割っているそうです。創業者・平富郎氏は、「エコスは競合のない立地に出店する。競合がないから売価も高くつけられる。働き口も少ないから人件費も安く上がるからダブルで儲かる」と語っておられました。そういったへき地でも競合が進出したうえ、人口の減少と高齢化による購買力の現象がダブルで影響しているのです。

 我々の商売は、前半で見込み型、後半で受注型です。品揃えをしない、定番を設けないスタイルでスタートします。ヘッドピンを見つけて、ヘッドピンを2倍、4倍、8倍、16倍と伸ばしていきます。ヘッドピンとは野菜ならトマト、果物ならスイカ、メロン、桃、梨、ブドウ、リンゴ、ミカンです。鮮魚ならマグロ、精肉は霜降り和牛です。惣菜は弁当です。

 野菜の価格は一旦仕入れて原価を組み替えて、原価割れ、原価、ちょっと儲かる、普通に儲かるという4段階の値入ミックスを行います。「キャベツは80円で仕入れたけれど原価割れの65円で売ろう。ライバル店は130円で売るはずだからほぼ半値だ。キュウリは原価、ナス、ピーマン、人参はちょっと設けて、トマトで勝負だ」となるのです。

 精肉はパーツで仕入れてパーツの仕入原価に値入を入れた売価をつける店がほとんどですが、セットで仕入れて好き勝手な値段を付けます。半丸セット152kg、kg当り4,000円(608、000円)で仕入れてサーロインもロースもうでもモモも100g600円で売れば仕上がり752.400円、すべて売り切ることができれば、粗利益率は約19%です。

 「丸ごと1頭セール」「均一セール」を繰り返し、半丸1頭がフルセット2頭、フルセット4頭、フルセット8頭と伸ばしていくのです。フルセット16頭売れるようになった頃は精肉部門の月商は1億円を突破しているはずです。

 グロサリーはアンカー商品以外のNBの品揃えと特売をやめることです。アンカー商品とは、サントリー天然水2ℓ、カドヤごま油600g、カルピスピースボトル、揖保乃糸、マルちゃん赤・緑、おかめ納豆、中田田舎漬、R-1ヨーグルト、カルピス特選バターなどです。NBの品揃えと特売をやめ、御当地アイテム、ローカルブランドをEDLPで金カゴにて売り込みます。

 それ以外のNBを安く売りたければ、歳末やお盆商戦、創業祭で原価マイナス100円などで売ればいいのです。ネスレゴールドブレンド80g298円、ミツカン追いがつおつゆ1ℓ100円、日清キャノーラ油198円、マルちゃん3食焼そば99円、明治ブルガリアヨーグルト400g99円などです。それらは正規ルートではなくバッタルートから仕入れるのです。

 後半は受注型という意味は、リピーターを増やすということです。お客はいずれ成熟します。お客がお店に飽きないように奇抜な商品、新商品を絶えず導入し変化させるのです。さらに、お客の顔と好みを憶え、声掛けをする。売場に出るスタッフを増やし、親切さ、明るさでお客を楽しい気持ちにさせるのです。

 見込み型で入って受注型で出る。これが我々の目指すべきスタイルです。

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