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大きく伸びるために屈むこと

 経営者が一人前になるには、3Tと1Rのうち2つを経験する必要があると言います。3Tとは大病(闘病生活)、倒産、投獄です。1RのRは浪人生活(地位や職を失うこと)です。大経営者になった人は「大病」「倒産」「投獄」「浪人」という辛酸を舐めて、自分を見つめなおす時間を持ち、「事業とは何か」「人とは何か」という経営のコツを会得すると言います。私も一つだけ経験しました。

 令和4年は、コロナ禍とウクライナ戦争で未曾有の値上げラッシュ。そしてロシアとの友好関係の変化もあって、スーパーマーケットの未来は深い深い霧の中にあります。

 豚、鶏、牛とも肉の値段は1.5倍に跳ね上がっています。状況によっては、輸入豚、輸入鶏は入ってこない可能性があります。また、入ってきても、巨大食肉メーカーが加工品の原料として、仕入れを独占する可能性があります。

 「政府も馬鹿じゃないからこの事態を放っておくはずがない。いずれ価格は元の状態に終息するはずだ」とこの事態を楽観視していると粗利益率は1ケタ台に、逆に簡単に値上げすると、お客の支持を失います。

 輸入豚、輸入鶏、国産牛、交雑種牛、冷凍挽肉材、冷凍切落し材など安い原料を奪い合うことは愚かです。誰もが殺到しますから、価格は吊り上がり、欲しい数量を入手することは困難になります。

 私はこんな時こそ、伸びるために「屈め」とアドバイスしています。
牛肉は、値ごろ感のある交雑種牛ではなく、最高峰のA5和牛、しかも「雌牛・32ヶ月・コザシ」を狙うのです。

 また、効率重視の企業は和牛のセット仕入でもバラ抜きセットを仕入れます。友バラは脂身が多く歩留まりが悪いと考えるからです。整形にも技術を必要とします。要は効率が悪いのです。

 ところが、友バラを仕入れて、三角バラ、タテバラ、ごむすじ、インサイド、ササミ、カイノミ、リブフィンガー、カブリにサクどりし、三角バラ、タテバラを大トロカルビ、ごむすじ、インサイド、ササミをカルビ、カイノミをカイノミ焼肉用、カイノミステーキ用、リブフィンガーを中落ちカルビ、カブリをダイヤモンドカットカルビとして、「焼肉食べ比べセット」とすれば大ヒットします。

 冷凍の切落し材を仕入れることをやめ、リブロース、ミスジ、カイノミ、カタナカバラ、トウガラシから、「霜降り極上すき焼用」とすれば、大人気商品になります。

 豚挽き肉は、冷凍の挽肉材の仕入れをやめ、純生の挽肉を売り出せば大ヒットします。牛肉7に対して豚肉3の割合で合挽ミンチを作り、「黄金比ミンチ」とすればファンができます。

♪ブンたった~♪ブンたった~

 要は「効率」に目をつぶり、いったん屈んで、「本物:また食べたくなる商品」を追求すれば、結果として、新しいステージへと飛躍できるのです。
「効率」と「効果」を循環しています。「効率」だけを追求したらいずれジリ貧になります。行き詰ったら、壁にぶち当たったら、「効率」には目をつぶり、いったん屈んででも「非効率」に挑むことが、結果として、「効率」をもたらすのです。

 行き詰ったら、壁にぶち当たったら、いったん屈んでみることです。さすれば、大きく飛躍するヒントをつかめます。屈んで上を目指し大きく伸びるのです。

 何のために、上を目指すのか。それは物を売るのではなく“感動”を売りたいからです。

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