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2月9日(午前)

今日人少ないのか……?

―というか、一台知らない車がある。誰のだ?

駐車場の隅の方に並んだ、スタッフの車。
なぜか一台分の隙間が空いて、二台とめられている。
その間の一台分の駐車スペースに、頭から突っ込むように車を停める。バック駐車は未だに苦手なのだ。車の運転をして、三年ぐらいは経ったが。まぁ、下手にバックで停めて、ぶつけるよりいいだろう。
「……」
車のエンジンを切り、マスクをつける。
そのまま、鞄の中を探り、腕時計を取り出す。
家を出る時点でつけておけばいいのは分かっているが……。
こう言うのもなんだが……手首が細くて、ベルトが、痛いのだ。
だから、極力腕時計は使わない。今なんか、携帯があれば時間の確認は容易だろう。
だがまぁ、ここの仕事の規約上、それができないので腕時計を使わざるを得ないのだ。
「……」
痛くなりすぎないように、緩めにベルトを締める。―それはそれで、ズレるので面倒なのだが。痛むよりはマシだ。
アナログの文字盤を見やり、時間がズレていないことを確認する。
安ものなので、割とズレてることがあるのだ。なんでだろうな。

まぁ、いいや。
今考えることでもない。

さっさと仕事に向かうとしよう。
エンジンを切った車の鍵を引き抜き(中古車だ)、車から降りる。
相変わらず、朝は寒い。
さっさと建物内に入るとしよう……。
「……」
駐車場を横切り、建物の入り口へと向かう。
重い自動ドアを押し開き、生暖かい建物内へと入る。
何も考えずに、スタスタと歩く。
「おはようございます」
「―ようございます」
挨拶も適当に、聞き流し聞き流されながら、事務所へと向かう。
さて、今日のシフト……。
うん。知ってたさ。いつも通りだな。
「はようございまーす」
「おはよー」
年上のおば様方から、軽い返事を返される。親しくもないし、子でもないから辞めて欲しい所……とは言いうまい。嘘嘘。そんなことない。
鞄の中から必要最低限の諸々を取り出し、残りをロッカーの中へと入れる。
鍵をしっかりと閉め、今日の業務開始。


とまぁ、初めて四か月ほどしかたっていないとはいえ、それなりになれた仕事。
程ほどにこなし、適当に流し、問題もなく終わらせる。
「……」
―これどうするつもりだ。
てか、あの車この人のか。
「……」
目の前にあるのは、自分のする分のタスクと、新人の人が放置したままに休憩に入っていったタスク。
タスクという程重々しいものでもないが。
「……」
え、コレ私がしないといけないのか?
いや、休憩に入らないといけないのはわかるさ。
わざわざ、他のスタッフが声掛けに来たぐらいだからな。きっと、時間を見ないで新しいタスク分のこれを持ってきたんだろう。それを見たスタッフがわざわざ。「休憩の時間では?」みたいなことを新人さんに言いに来たのがつい先ほど。
「……」
それで。
時計を見て気づいた新人さんが、同じ時間に休憩に入る他スタッフと一緒に、打刻をしに行って。
「……」
え、それで?
これは、どうするおつもり?
放置しておけば、誰かがすると思ている?
というか、なぜ、誰かに引き継いでと言うのを教えてやらない。
いかに短期のシフトの新人とはいえ、それぐらい教えるのが当たり前では?
「……」
はぁ。
えぇ、はい。
その一部始終を見ていた私がやればいいんですね。
やれば。いんですね。
まぁ、いいか。
放置して何か不本意なことを、思われるよりはいいし。
もう自分のやつはほとんど終わってる。
最悪、今から少々急ぎめですれば、時間内には上がれるだろ。
「……」
私は君らより勤務時間がはるかに短いからね。
やれることはやるさ。

新人のしりぬぐいとか、入りたての私の仕事じゃないっての。

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