わくわくする夢の話②
さて、印象に残っている場所二つ目は、学校のような場所。
その前に、夢に関係しているであろう私の記憶について書こうと思う。
小中学校の頃、学校では開かずの扉とか、異世界への入り口と噂されている扉が何個かあった。
私の小学校は、生徒数の増加により、校舎を増設した。
そのため、廊下にはつなぎ目があったりして、使われなくなった教室も出てきた。
私が6年生の年、これまでなんのためだったかもわからない教室二つ分ほどの部屋があった。
黒く目貼りされており、廊下や外からは中が見えない。
そんな空間に私のようなお調子者が黙っているわけでもなかった。
詳しい記憶はないが、なぜかその部屋に侵入できた時があった。
もちろん普段は鍵がかかっているし、だれも気に留めない。
しかし私は当時の友達と二人で中に入った。
季節は忘れたが、空気の流れはなく異様にひんやりしたその部屋は暗かった。
人が歩くことを想定されていないほどに大きな机がギッチリと並べられ、天井に着きそうなくらい電子機器や棚が積まれていた。
私たちは机の上に上がり、隙間を縫って入り口とは反対側の壁まで行くことに決めた。
這うようにしてゆっくり進むにつれ、パソコン室の匂いになったり、視聴覚室のカーテンのような匂いになったりした。
教室二つ分のその空間を抜けるのに何分かかっただろう。
私たちは実際の時間の数倍の時間を体感した。
反対側の壁についた時には、かなり心細くなり、早く戻ろうと友達を急かした。
来た道がわからなくなったらどうしようと考えると怖かった。
その空間が、来てはいけないと少年たちに警告していたのだろう。
廊下に戻ると、嘘のように明るい現実に引き戻された。
中学校は4階建てだった。3階までが学級教室で、4階は音楽室や、図工室などの特別教室。
だから授業がない時は基本人がいないし、昼は静かな場所を好む生徒や、大便を気づかれずに済ましたい生徒がいるくらいだった。
4階に登る時、必ず目にする扉があった。
構造上さらに上にいくはずの階段があって、そこへ入れないようにするための扉だった。
おそらくは屋上だと思う。
屋上自体は教室から見ることができたし、別段屋上へいきたかったわけじゃない。
しかし、その開かない扉と屋上を繋ぐその空間に私は非常に興味を奪われた。
この扉を開けたら、もしかしたら違う次元へ行けるかもしれないとか真剣に考えてみるのだった。
そして、そのフロアの一番奥にある音楽室。
校舎の端に背を向ける形で授業は行われていたが、背後の壁には3つ扉があった。
外から見ても、あきらかに奥行き3メートルはないその空間に通じる扉。
どんな場所なのか、私は確かめることができず今に至っている。
横幅は教室と同じその異様なほどに細長いであろうその部屋。
なぜ扉は3つもあるのか。
とまあこんなふうに、異様な空間に非常に興味がある私だが、この意識が潜在意識を形成し、夢でも印象的な空間を体験するに至っている。
さて、二つ目の夢に出てくる学校のような空間だが、基本は私の中学校に酷似している。
しかし渡り廊下の数や、学級の数は明らかに多く、実際ではありえないような迷路状になっていた。
夢でその校舎を歩いていると、ふと不思議な感覚に陥る。
目の前にあるはずのない階段が出現し、それをのぼって長い廊下を歩くと、誰もいない夕方の校舎があった。
私はその廊下を歩いていて、みんなもう下校しただろうとか、見回りの先生もここまでは来ないといった、一人だけの空間を確信した。
なぜか長居することはよくないと考えた私は、急いできた道を戻り、グラウンドへ出た。
今出たばかりのはずが、私は裏門にいた。
土を盛って作られた遊び場があって、それは中学校には見えなかった。
どちらかというと、私の小学校に近い校舎の形で、異様なほど夕焼けが濃かった。
そこで夢は終わった。
起き上がった私は、その夢の意味について寝起きの頭で考えたが、もちろんわからない。
いつかまたあの空間に行ける日を待つ。