よくわかんないけど、どうしてもそういう風になっちゃうんだよっていう話②
作家には、その人ごとに、
「よくわかんないけど、どうしてもそういう風になっちゃうんだよ」
みたいな、色とか癖ってものがあるんじゃないか、という話。
僕、商業デビューしてから、この部分について考える機会が増えた。
趣味で書いてるときは意識もしていなかった部分なんだけど、商業的な目線を身につけるほどに、「そういう風になっちゃうんだよ」の部分を、無自覚にネグっていくことが増えたからだ。
だって商業的にいえば、この部分ってあまり価値がないんだよな!
つまり、売上にあまり関係がない部分なのです。(文芸はまた別なのだが、昨今のエンタメ小説は作家の色というより、企画性が重視される傾向が強い(編集さんや編集部のカラーにもよるけど、傾向としてはね))
あくまで作家にとってだけ大事なもので……しかも本人もあまり自覚していない……というくらい曖昧模糊としたものであるわけで、商業的なお話をしている中では、サクサクッ! と置き去りにされていってしまう部分だったりする。
で、我知らず置き去りにしてしまうと、あとあと、
……あれ? 小説ってどうやって書いてたっけ……?
みたいな状態になったりして。
新人のころって
僕、デビューのとき、これやらかしちまって。
もともとは表現欲だけで書いてるタイプで、編集さんがついたときも、「なるほど、小説って売るんすね!」レベルの商業音痴だったんだけど。
商業的な目線をどんどこ吸収するうちに、もともと持ってた根っこの感覚を盛大にネグってしまって、気づいたら、……小説ってどうやって書くんだっけ……? となっちまった。
ま、新人作家あるあるではある。
鬼ごっこのときには、これ1冊書ききれたら趣味にもどろうかと思っていたし、編集さんの方も、爆死でもともとくらいの気持ちでやりましょう! といってくれたので、吸収した商業的な目線の多くを、いったんうまく忘れられた。(その中で残ったものは、きちんと自分の武器になったので、商業的な目線なんて不要とはまったく思わない)
そしたら、あ、そうだそうだ、こうやって書いてたんだ、っていう感覚がもどってきて、なんとか書ききることができたっていうか。
そうやって書けたものを認めてもらえたのが、一番うれしかったな。
メンテナンス
ここ数年、調子がいまいち。
それは自分の初期衝動というか、「そういう風になっちゃうんだよ」の部分を、またちょっとなおざりにしているからなのかもなーと思ったりする。
新人のうちはともかく、僕ももう6年目になるわけで、自分の調子はある程度、自分でメンテできるようにならなくてはいけない。
こうすると調子がよくなる、とか、こうすると悪くなる、とか。
自分の得意なものとか、不得意なものとか。
ちゃんと知って、自覚的になっておかないとなぁと思う今日このごろ。