ジンジャエールが飲める友
小学生の頃、あのシュワシュワの刺激がつよくて、炭酸飲料をあまり飲めなかった。
刺激に負けて、1口は飲めても続けて2口いけないのだ。
だからあまり炭酸を飲まなかった。
飲むとしたら、焼肉屋さんのドリンクバーでカルピスを飲むつもりが間違ってカルピスソーダを注いでしまったときくらい。
まだわたし子供だし、いつか美味しく飲めるようになるんだろうなーうんうん。いつか炭酸が飲める女子になること間違いなし!と余裕綽々の想いだった。
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たしかあれは小学校2年生の夏。近くの家に住むKちゃんと一緒に、Kちゃんのおばあちゃんの家で遊んでいた。
Kちゃんは、Kちゃんの弟と2人で喧嘩してはお母さんに怒られる、そんな活発な子。思ったことを素直に言えないような私はそんなKちゃんが友達としてすごく好きで、その活発さを羨ましくも思っていた。
そんなKちゃんは遊び疲れた午後3時頃、「喉乾いたァなんか飲も〜」と言い、Kちゃんのおばあちゃんの家の冷蔵庫の一番下の段をあけてジンジャエールの1.5Lのペットボトルをとって勢いよくコップに注ぎだし、ゴクゴク飲み始めたのだ。
……!!
なんてことなの……。あまりに自然な所作にわたしはみとれた。
まず炭酸以前に、冷蔵庫は親(家主)の管理下にあるものだと思っていたわたしにとって、子どもが勝手に開けてものを取り出してはいけないと思っていた。
しかし同い年のKちゃんは冷蔵庫から飲み物を勝手にものを取り出し、飲み干したのだ。その瞬間、いつにも増してKちゃんが大人びて見えた。
しかも、私の苦手な炭酸!しかもしかもジンジャエールだなんて…ジンジャー、たしか生姜という意味だったはず。生姜の炭酸なんて、超オトナの飲みもの!Kちゃんかっこいー!
と目を輝かせた私だった。
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そんな私もおとなになり、ビールやレモンサワーなどお酒を飲むことで自然と炭酸を飲んでいることにふと気がついた。
炭酸かどうかを気にせず、揚げ物だしレモンサワーかな なんて注文するおとなに。
Kちゃんは今でも炭酸をごくごく飲んでいるだろうか。遠い街に住んでいるからわからないけれど、今でも活発に、炭酸をごくごく飲んでいてほしいなと想いを馳せてしまう、そんな夏の夜だ。