Impulse Response(IR)とは?できる事/できない事
※記事を一部、加筆修正しました(2021/7/21)
・Impulse Response(IR)って結局何なの?
・IRは何ができるの?何ができないの?
そんな疑問を解決します。
Impulse Response(IR)とは?
名前の通り、インパルスに対する応答の事なのですが、つまりは入力に対してどんな反応が返ってくるかを表したものになります。
分りやすい例を挙げると、お風呂で手を叩くと音が響きますが、それがどんな風に響くのか(=リバーブの特性)を表したのがIRです。
上の図はIRの時間波形です。(0で)入力があって、応答時間の分遅れて高域が丸くなった(EQのかかった)アタック音が聞こえ、その後しばらく残響が続いています(このようなIRを畳み込むリバーブを、コンボリューションリバーブといいます)
ただ、ギタリストの場合は、IRというとリバーブよりもキャビネットシミュレータのイメージが強いかと思います。キャビネットの場合、応答時間と残響はほとんどゼロなので、EQとしての効果だけが残るわけです。
ちなみに、このような短いIRを使ったEQは、デジタル処理の世界ではFIRフィルタと呼ばれています。
時間領域と周波数領域
上の図は同じIRを、横軸:時間で表示したもの(左図:時間領域)と、横軸:周波数で表示したもの(右図:周波数領域)です。
(本当は位相特性も関係するのですが)この2つはお互いを計算で求められます。つまり、「右のような特性のEQが欲しいなー」と思ったら、その周波数特性のグラフを作れば、計算で左のIRに変換することができます。
このIRをエフェクターに読み込めば、欲しかったEQとして使えます…というのがFIRフィルタの正体です。
IRで”できる”事
前述の通り、EQとリバーブです。実際に測定したデータを使えば、その測定条件でのEQ/リバーブの特性を完コピする事ができます。
IRは、どんな入力に対しても一定で効果がかかります。数式で書くと、y=axの”a”がIRです(xが入力、yが出力)。グラフが直線なので、このような場合を線形といいます。
「コンサートホールで録音したリバーブ」や「キャビネットにマイクを立てて録音した音」は、使用機材、セッティング、測定位置さえ変えなければ、線形と見なせます。これらのIRを使うと本物と聞き分けられないくらい完コピできるのは、応答が線形だからです。
IRで”できない”事
とても簡単に書くと、EQとリバーブでできない事はIRでもできません。
コンプや歪みのように、同じ音でもレベルの大小によって反応が変わる場合を非線形と言います。常に一定の効果をかけることしかできないIRでは、そういった非線形な反応を再現はできません。
あとは、ピッチシフターのように周波数の高低によって反応が変わる場合も再現はできませんので、変声器のような効果をIRで作ることはできません。
ちなみに、歪みと変声器については、IRによる補正を知りたての頃に試してみてガッカリした記憶がありますw
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