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豊かな風情、複雑な課題

ある日の昼下がりのこと。出先でブックカフェに入った。

多彩なジャンルの本の中に1冊の本を見つけた。

都心近くにあるローカル線、小湊鐵道を扱った本である。著者は「ゆる鉄」の言葉を広めた鉄道写真家中井精也。気になって読んでみた。

昭和レトロ感満載の駅舎に車両、都心からアクアラインを隔ててすぐの場所とは思えない自然豊かな風景は圧巻の一言。こういう光景が残っている路線というのは、観光で訪れる側からするとありがたい。

とはいえ、本数が少ない、街の中心から遠い等の理由により、地元の方にとっては利用する意味をなさない路線も多い。また、日常利用には適さない構造の駅も多いので、ある種発展から取り残されている、という負の側面が目が見え隠れするのも確かだ。

そして、この手の路線は押しなべて収益性の問題を抱えている。だからこそ、利便性も低いとも言えるのだろうが。

どれだけ風情豊かな光景が残っていても、観光路線ではない。あくまでも「公共交通機関」の1つである。

収益性から見れば廃止すべき、しかし、公共交通の観点から見れば、必ずしも廃止すべきとは言い切れない。難しい問題だ。鉄道もバスもタクシーも人手不足ですらある。他にも課題はあるのだろうから、ある種八方塞がりの問題なのかもしれない。

また、本を読みながら、こうも思ってしまった。

この先ローカル線が廃止されていくとすれば、いずれ映画やドラマの撮影にも支障をきたす可能性が出てくるのではないか、と。

単にローカル線の風情を褒め称えるだけでもダメ。そして、単に収益性を優先するだけでもダメ。

特定の視座だけに立つのではなく、市民生活・経済・文化・観光など複層的な視点から課題を捉えなければ、解決の糸口すら見えない。いや、それでも見えないかもしれない。

この手の課題は数多く存在する。どこから手を打てば良いのやら、と言いたくなることも多い。

当座の策、試しの策を打ちながら、中長期的な在り方を探すしか、案外ないのかもしれない。経営学的にはNGに近い発想ではあるが。

それにしても、何故に豊かな風情の写真を見ながら、こんなことを考えたのやら。。。

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