初めての心霊体験談
中学3年生の頃の話です。
その年、家族で引っ越しをしましたが学区内ということもあり転校せずに済んでほっとしていました。
一つ問題なのは学校から更に遠くなったこと。
通学方法は3通り。
徒歩、バス通学、自転車通学。
バス通学と言ってもバス停から家まで歩いて15分かかる。
そしてそこまでの道のりは人通りも車もちらほらしか通らない。
そちら側は電灯はあるけれど少し工業地帯にかかっていたので住宅の灯りは少ない。
何より当時流行っていた「テケテケ」が出るという噂がある所だったので断固拒否。
交通費も勿体ない気がした。
電灯を気にしているのは、
私は吹奏楽部に所属しており、強豪校とまではいかないけど、そこそこ名の通った部で練習はみっちり最終下校時刻まであり、辺りが暗くなる頃に帰っていた為。
自転車通学だと、一度学校で講習を受けなければならないというのと、ヘルメットを被らなければならないということ。
あと一年も満たない通学の為に、親に自転車を買って貰うのも申し訳ない気持ちもあった。
吹奏楽はそこそこお金がかかるのです。
消去法により、徒歩での通学に決定。
今まで20分強だった距離が40分弱に代わっただけのこと。
歩きや走るのも得意ではあった。
そう甘く見ていました。
予想外だったのが通学路である家の近くの小さな森の住宅街は、古めかしい建物が多く一軒一軒の距離が遠い。庭も広く建物が奥の方へと引っ込んでいるのと高い生け垣で囲ってあるので、家の灯りが全く道まで届かない。
そしてお寺もあるしお墓もお地蔵さまもある。
極めつけは、昔首吊り自殺があったという廃家もあった。
物音もなくしーんとしている。
聞こえるのは猫や虫の声。
時々車が狭い道を通り抜けるだけ。
ああああああこれはけっこう怖いやつだと気付きました。
樹木が生い茂り明るいうちは清々しいけど、日が沈むと一気に恐ろしい雰囲気に様変わり…
でも何とか通学するしかないと、その森の住宅街になると走り抜けたり車が通る時には人の気配でほっとしたりしながら帰宅していました。
時期ははっきりとは覚えていません。
暗かったので、恐らく日が短い冬だったのではと推測。
その日も部活帰りで 、辺りは日が沈みすっかり暗くなっていました。
森の住宅街の入り口が近付きいつもの如くドキドキしていました。
途中までは比較的新しい建物で電灯も多く家の灯りもあって怖くはない。
お寺とお墓の近くから始まる約2~300mくらいの一本道がとにかく怖いのです。
例の廃家もあるし一軒一軒が離れていて生け垣が高い。道も車がやっと1台通れるくらい。
そして電灯が切れているのか 、何故かいつもよりも暗さが倍増していました。
遠くに灯りが見えるだけ。
どうしてこんなに暗いのかと途方に暮れました。
何せ足元が見えない。
勇気を振り絞り 、
手探りならぬ足探り……歩き始めました。
すると、
一声に猫の鳴き声が響き始めました。
ここにたどり着くまでは猫の鳴き声も気配もなかったのに。
それに数匹どころではない。
「一体何匹いるの?」
猫を踏まないように少しだけ慎重に歩いていましたが、
なんだか本当に数匹ではないのです。
歩く度にいてしっぽを踏みそうになり咄嗟に避ける。
相変わらず鳴き声は止まらず。
道は暗いし何故か猫の集会が始まってる。
非日常的な世界に入り込んだような気持ちになりいても立ってもおられず走り出しました。
きっと猫の方が避けるだろうと息を切らし一本道を走り抜ける。
左右に分かれる道までたどり着き、ほっと一息つきましたが 、どうしても今日は地蔵さまのある道を通りたくなかったので、反対の右へ進みました。(どちらでも家に着く)
砂利が敷き詰められている駐車場と畑のあいだの下り坂。
駐車場側には生け垣があり、道は人がひとり通るくらいの農道というのだろうか?を下っていました。
家が見えてきたという安心感。
そして前からどうやら人が上がってくる。
人にやっと出会ったという安心感。
だんだんと近付いてきて、
「どうやら男の人だ」知らない人をジロジロ見るわけにもいかないし、そっと畑の方を見ながら道を譲るようにして歩きを緩める。
そろそろすれ違うかなと思ってもなかなか訪れない。
「ん??」
と前方に視線を戻すと誰もいませんでした。
「さっきまで男の人が上って来てたよね」
横道なんてどこにもない。
これは消えてしまったのだ。
と気付いた時、全力で疾走で家に向かっていました。
この事は誰にも話していません。
ただその夜高熱を出して次の日学校を休むことになりました。