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面倒なだけと嫌われるFMEAだけど...

安心してください。近い将来、実に面倒なこの書類は無くなっているはずです。

もう何年も前の話ですが、製造物責任法の社内セミナーで衝撃を受けました。すでにご覧になった方もいるでしょうが、米国で燃料系機器の設計不良が元で大火傷を負った被害者の凄惨な状況と、莫大な損害賠償を支払うこととメーカー、精神的ダメージを受けた設計者を描いたビデオにです。

燃料系の設計部で品質委員をしていた私は、この頭を殴られた様な衝撃を部内に伝えねばと思い、主催元から即座にビデオを取り寄せました。他人事に思えなかったこともあり、設計者にとっては製造物責任、特に黙示の保証を理解する上で格好の教材になると確信できたからです。そして、FMEA担保責任を果たす唯一の手段であると伝えたかったのです。

なぜか?

ご存じのようにFMEAは、担当する製品開発チームが、考えられる不具合を洗い出し、予防策を設計に反映するものだからです。大切なのは、そのことだけじゃなく、設計過程において確かに担保責任を果たしてきたという記録、証拠となるからです。ですから、面倒ですが、FMEAは真面目に、愚直に、適切なタイミングで実施しなければなりません。

適当にやり過ごしてしまえば、逆に設計の瑕疵を裏付けるだけの記録、証拠となってしまいますからね。こうなってしまったら本末転倒です。そう、社内規準に沿ってシートを完成させればいいというものではないんですね。

ところがです、

入手したビデオの画像が悪かったことも災いし、部内でのインパクトは思いのほか薄いものでした。担保責任、製造物責任とはどの様なものか理解してもらえた実感はなく、拍子抜けというか、人の心に訴えることの難しさを痛感しました。

頭を悩ませた私は、ことあるごとにFMEAの重要性について語り続けました。まさに、闇雲にといった感じで… でも、伝わらないんですよね。

人間誰しも面倒臭いことは苦手です。私だって、FMEAは簡単に実施できると思ったことはありません。FMEAシートを簡単に作成できる方法はないものか、色々と悩みました。世の中にはFMEAの作成支援ソフトなるものは存在しますし、良い?ソフトが出るたびに、あるいは社内専用ソフトが開発されるたびに紹介されました。

でも、結局は使う人次第なんですよね。そこには俗にいう属人性という側面が、どうしてもつきまといます。

結局、たどり着いた結論は " FMEAシートを作成するのは工夫次第でなんとかなる。大切なのは、実施する人自身が目的をきちんと理解し真面目に運用すること " 、これにつきます。FMEAは簡単には実施できないけど、目的は簡単に理解できます。そして、目的を理解すれば自分なりに効率的にシートをまとめることができます。効率的というのは、 " 自分が担当する製品に見合った方法で " という意味です。そのことに気付いてほしいのです。

なので、私は " FMEAの目的をいかに簡単に理解してもらえるか " を追求し発信し続けています。

誰しもがその目的を悟ったとき、もはやFMEAという呼び名は無くなっている様な気がします。実はそれくらい、設計者にとっては当たり前のものですから。

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