社会課題から次のビジネスチャンスを探る-ソーシャルデータ編
いつも大変お世話になっております!VALUENEX技術・市場調査部の菊池と申します。
前回は「社会課題から次のビジネスチャンスを探る-社会科学論文編」を執筆しました。今回は社会課題解析シリーズ第二弾ということで、twitter等のSNSやECサイトに投稿された口コミやレビュー等のソーシャルデータを用いた解析について書きたいと思います。
上記記事でも書いたように、ソーシャルデータは世間一般の人々が今何を考えているかを知るのに適したデータソースですが、具体的にどういった知見が得られるのかご紹介できればと思います。
ソーシャルデータの収集について
ソーシャルデータの解析に入る前にソーシャルデータの収集方法について説明します。
VALUENEX の俯瞰解析サービスは特許や学術論文を用いた技術解析に用いられることが多くあります。特許や学術論文を利用する場合、お客様が契約されている有償データベースからダウンロードしたデータをご利用いただくケースがほとんどです。また、公開されている無償データベースをご利用いただくことも可能です。詳しくはこちらやこちらの記事をご参照ください。
一方で、ソーシャルデータについてはどうやってデータを収集するのかイメージがつかないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ソーシャルデータの収集方法としては主に下記3種類が挙げられます。
業者からの購入⇒ソーシャルデータを販売している業者から購入する方法になります。購入費用はかかりますが、データの取得は容易です。
自作プログラムやAPIの利用⇒自作のプログラムや無償で公開されているAPIを用いてウェブサイトから情報を抽出する方法になります。注意点としては、抽出対象によっては相当な作業工数がかかる可能性があることと、抽出元のデータを利用可能な範囲等を利用規約を見たり運営元に連絡するなどして確認する必要があることが挙げられます。
自前(自社)のSNSからの情報取得⇒自前(自社)で運営しているSNSがある場合は比較的容易にデータを取得できるのではないかと思います。
ソーシャルデータ解析の実施例
データの収集ができたところで解析に入ります。本記事では自動車に関する口コミデータを解析した例をご紹介します。
下図は自動車に関する不満約3万件をVALUENEX Radarによって可視化した結果です。図内の1つ1つの点が不満1件を表しています。自動車に関する不満は、内装装備、エンジン・足回り等に関する不満の領域に分かれることがわかります。
自動車メーカーごとの年次変化を見てみましょう。
トヨタ車に対する不満は以前はパワー不足と燃費に関する不満を中心に幅広い領域でみられましたが、直近で目立つのは燃費に関する不満のみとなっていました。商品の改良によって多くの不満を解消できているものの、燃費については消費者の不満が残ってしまっていることが見て取れます。
日産車についても直近にかけて不満が減少していますが、燃費、パワー不足、充電については不満が残っています。特に、充電に関する不満は2011年以降新たに出てきておりトヨタ車ではみられなかった不満となっています。これは日産が他社に先駆けてEVを量産販売していたことが原因であり、他社と比べて劣っている点ではないと考えられます。
技術との比較
日産車に対する不満で目立っていた充電について技術開発状況を把握するために、トヨタ、ホンダ、日産3社の充電に関する国内特許約9,000件を収集し、VALUENEX Radarによって可視化しました。
活物質に関する基礎技術から充電率推定、充電施設の感知といった情報処理系の技術まで幅広い技術が含まれています。
トヨタと日産の年次変化を見てみましょう。
トヨタは、活物質と受電器を中心に電池や充電器の性能に関する基礎技術に関する特許を直近にかけて多く出願していて、充電に関する基礎技術を積極的に開発していることがみてとれます。
日産は、活物質以外の基礎技術に関する出願があまり多くありません。一方で、2011年以降、トヨタがあまり出願していない充電ポート制御装置や充電施設検知に関する特許を出願しています。これらの技術は充電に対する消費者の不満に応える形で開発されている技術であると推測され、他社も追随、あるいは参考にするべき領域かもしれません。
おわりに
ソーシャルデータ(+技術)の解析事例をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか(本記事の解析はnote向けに内容を省略しています。詳細について知りたい方はVALUENEXまでお問い合わせください)。
冒頭に書いたように、ソーシャルデータは世間一般の人々が今何を考えているかを知るのに適したデータソースです。一方で、技術情報と違い、新しい発見に関する情報を含むものではありません。ただソーシャルデータを解析しただけでは「ふーん、それで?」といった結果に終わってしまうことも多くあるかと思います。ソーシャルデータから得られた情報を土台にしつつ、技術情報等のその他の情報を組み合わせて解析することで、技術や商品の開発に有用な情報を得られる可能性が高くなります。
もしソーシャルデータの解析について迷うことがあればぜひ、VALUENEXにご相談ください。
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