『ああ、昔はよかったなあ…』と、つい口に出したくなるあなたへ
リンちゃんと私、最近雪山へ出かけてきました。
ただし行っただけで滑ってはいません。
では何しに行ったのか?
さてここからは、かの有名な高村光太郎先生の『智恵子抄』(ちえこしょう)を思い起こしながら読んでいただければ幸いです。
リンちゃん(↑写真の「京都かいらし堂」のおさるさんです)は、東京には雪が無いといふ。ほんとの雪が見たいといふ。
私は驚いてじっと彼の目を見る。
いま窓の外に広がる光景にあるのは、お馴染みのマンションが立ち並ぶ都心の光景だ。
するとリンちゃんは、遠くを見ながらまたこう言ふ。
生まれ故郷のバンコクには雪がない。
せっかくたくさんのスキー場と良質な雪がある日本に来たのに、どうしてエンジョイしないのか?
雪と温泉、それとカニを楽しむのがリンちゃんにとっての「ほんとの冬」の過ごし方だといふ。もちろんこれは、かいらしいおさるさんの話ではある…。
ちなみにリンちゃんが写っているのは、先週の新潟湯沢スキー場です。
「膝が悪いので」「骨を折るとまずいので」といつも通りの「沢山の言い訳」を並べ立てて、スキーもスノボもせずにただリンちゃんと雪を見に出かけたのですが、そこでいくつか気がついたことを述べます。
世の中もうインバウンドだらけでした。新幹線も、温泉も、レストランも、もちろんゲレンデも。もう日本はインバウンドのいない場所は京都のみならずどこにも無くなったと思います。
すると当然のことですが、これまでの暗黙知は通用しません。例えば夜中でも平気ではしゃぎまわる、ゆったり静かに露天風呂を楽しむなんてことはなくなり、ひたすら「うるさい」のです。
そんな無邪気に「円安を楽しむ彼ら」を見ると、つくづく日本は貧しくなったんだなと気づかされ、ついボクの一番嫌いなセリフが口をついて出てきてしまいました。
「ああ、昔はよかったなあ…」
実は子供の頃、父親からこっぴどく叱られた経験があります、この「ああ、昔はよかったなあ…」と言うセリフを父の前に呟いて…。
ええ、もちろんそれはそれは可愛かった子供の頃の私が言うのですから、それは単なる「冗談」に過ぎません。ですが、なぜかその時の父の怒りの琴線に触れたのでしょう、こっぴどく叱られた思い出があります。曰く、
「お前は何を口走っている。まだまだこれから先がある身で、今からそんなセリフは冗談でも口走るものではない!」といった感じだったと思います。
翻って齢67歳へと、あと10日余りでならんとする私は、そろそろこのセリフを口にしても流石に父に叱られないものなのでしょうか?
実はいまだに「そっと」しか口に出せないでいる私が、ここにいます。
だってそれを口にし出した日には、「先が短い」と自分で自覚している証拠な気がして、いけません。
まあ、そんな思い出話はどうでもいいですよね、ああ冷えてきたね、リンちゃん帰ってお家のお風呂に一緒に入ろうよ〜(つづく)