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失ってみて、初めて身に沁みる現実とは

その私がエグゼクティブの採用をしていた頃のエピソードです。

数度にわたる面接を経て、いわゆる「オファー面談」となった際に幾度となく次にようなリクエストを候補者から打診されたことがあります。

「入社にあたって一つお願いがあるのですが、『通勤用の黒塗りのハイヤー』を用意してくれませんか?」

今まで会社からさし回されて自宅まできていた黒塗りの社有車が、今回の転職に伴い急に来なくなるのは「ご近所の手前まずい」とのこと。

「いや、それは自宅から最寄り駅の2〜3先の駅まででいいので、これだけはお願いします!」

こういう「他人の目が気になる」といった見栄っ張り方が、この先完全に引退したらどう自分の気持ちを納得させるのでしょうか?

会社での大きな個室や秘書、そんな社有車にある程度好きに使えた「交際費」といった諸々全ては、しょせん「あなた」のものではないのだという事実を、その「思い違い」を絶えず認識しておく必要があります。

また、ことあるごとに集ってきた職場の同期・同僚達にしても、それはあくまでも「職場での仲間」であって、必ずしも「友人」とは限りません。

もちろん、これまで良くしてくれていた「取引先」にしても、「あなた」がその会社のその地位にいればこそ、その現実もまた「失ってみて、初めて身に沁みる現実の一つ」と言えます。


◎ベストセラー『「クビ!」論。』で 1000人以上をクビにした経験を綴った著者。 その後、自らも幾度もの「クビ!」と転職を経験し、ついに定年に…… そして66歳、たどりついた境地とは!? 理想とはほど遠い年金支給額。人は定年を迎えた日から無価値になるのか!? 冷酷な現実を前に達した結論が、 「いっそ定年なんかしなければいいのだ。この先ずっと価値を提供し、 対価をもらい続ければいい、それも高く。でもどうしたら?」。 30代、40代のサラリーパーソンが 今後否応なく直面する「ジョブ型」雇用において、 考えておきたい「ジョブ型定年」と前後のライフプラン。 それまでに直面するであろう転職や給与、そして「クビ!」まで、 人事のプロである著者が余すところなく解説。 「ジョブ型」キャリアを「○金(まるきん)」で終わらせるための一冊です。ぜひお近くの書店でお手に取ってご覧ください。

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