
コーヒーかすの再生利用に対する課題「廃棄物処理法」
Value wayでプロボノ活動中の小川です。
前回の投稿で、地域住民やあらゆる事業者がコーヒーかすの資源循環に関わる未来像を描きましたが、その未来を実現するにあたり直面する課題があります。
前回の投稿はこちら「みんなでコーヒーかすを資源循環する未来を想像してみた!」
本日はコーヒーかすの再生利用を広げる上で直面する課題についてご紹介します。
これまで事例を紹介してきたように、コーヒーかすは様々な用途で活用できる資源ですが、コーヒーかすの資源循環が容易には拡大できない課題があります。
その1つが、「廃棄物処理法」による制限です。
<廃棄物処理法>
廃棄物は、
・事業活動に伴って発生する廃棄物処理法で定められた20品目の廃棄物
⇒「産業廃棄物」
・産業廃棄物に該当しない家庭や事業所から発生する廃棄物
⇒「一般廃棄物」
に分類されます。
レストランや喫茶店から発生する廃棄物は後者に該当します。
コーヒーかすを再生利用するには、レストランや喫茶店から収集が必要ですが、産業廃棄物と一般廃棄物では、廃棄物の種類が異なれば、収集や処理に関する許可にも違いがあります。
産業廃棄物の場合は、
処分を請け負うときは「産業廃棄物処分業許可」、
収集・運搬を請け負うときは「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。
都道府県知事、もしくは政令指定都市の市長に許可申請し認められた業者のみ本許可が交付されます。
一般廃棄物の場合は、
処分や収集運搬を請け負う際は、「一般廃棄物処理業許可」が必要です。
一般廃棄物処理業許可は市区町村に許可申請を行います。
一般廃棄物処理業許可は、「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。」をはじめ、複数の条件(※)が定められており、新規の許可取得のハードルが非常に高いです。
※参考)廃棄物処理法第7条第5項
市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000137

このような事情があるため、工場等から排出されるコーヒーかすの資源循環は進む一方で、消費に近いレストランや喫茶店から発生したコーヒーかすは資源化できるにも関わらず廃棄されている実情があります。
<解決方法>
レストランや喫茶店の中で出たコーヒーかすをそれぞれ事業者内で再生利用する場合は良いかもしれませんが、複数の飲食店やコーヒー店からコーヒーかすを収集・運搬して再生利用していくには、上記記載の通り、「廃棄物処理法」にまつわる課題があります。
そんな課題がある中でどのように資源循環を進めていくのか。
解決方法としてはさまざまな方法がありますが、大きく3つあります。
1. 有価物としての回収
廃棄物では無く、有価物として買い取る形でコーヒーかすを回収することは問題ありません。
しかし、この方法は事業として考えると回収コストが合わないことが多く現実的ではありません。また自治体ごとに「廃棄物なのか、有価物なのか」の判断に大きな差があるため、A市ではできてもB市ではできないということがありえます。
2. 廃棄物として、許認可事業者が回収
既に自治体から許認可を取得している一般廃棄物処理業許可業者が、コーヒーかすだけを分別回収するモデルです。
3.廃棄物だけど一般廃棄物処理業許可を必要としない特例
3-1.食品リサイクル法の適用
農林水産省が推進する食品リサイクル法においては、一般廃棄物の収集運搬業の許可について、以下のような特例を設けています。
1 「登録再生利用事業者制度(法第11条)」
大臣登録を受けた再生利用事業者の事業場に持ち込む場合は、荷卸し地の許可不要
2「再生利用事業計画認定制度(法第19条)」
大臣認定を受けた再生利用事業計画の範囲内においては、収集運搬に係る許可不要
但し、回収から再利用までの事前申請が前提でハードルがあります。
参考)食品リサイクル法における廃棄物処理法等の特例措置
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_6.html
3-2.再生利用業の指定を受ける
再生利用されることが確実であると市町村長が認めた場合は、許可を要しない事業者でも可能となります。
参考)廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第六条
再生利用に係る特例の対象となる一般廃棄物
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346M50000100035

Value wayでは、上記のような解決方法を用いて今できることに取り組んでいます。
一方、海外では、このような制約が改正された例があります。
<韓国でコーヒーかすが許可なくリサイクル可能に>
お隣の国「韓国」では、環境部がコーヒーかすを「循環資源」と認定し、廃棄物規制の対象から除外する制度を適用しました。
これにより、コーヒーかすのリサイクル手続きが簡素化され、許可なしで再利用が可能となりました。
韓国でもコーヒーかすは生活廃棄物として焼却・埋立処理されており、コーヒーかすは堆肥、建築資材、プラスチック製品など多様な用途で活用される可能性が高いにも関わらず焼却・埋立に伴う炭素排出などが問題として提訴されていました。
カフェが多い韓国。コーヒー消費が増加するにつれ、もちろんコーヒーかすの発生量は増加。しかし、日本と同じく許可を受けた業者だけが回収・処理できるなど法規制上、増えた排出量を積極的にリサイクルすることに制約がありました。
そこで、韓国環境部は、コーヒーかすを「循環資源」として認定し、廃棄物から除外することで、廃棄物収集・運搬専用の車両ではなく一般車両でも運搬できるように改正。より自由にリサイクルできるようになり、有用な資源としての活用を推進する体制が整備されました。

このように、法規制が改正できると事業者内での個々に限らず複数事業を跨いだ全体での大きな資源循環が実現しやすくなり、コーヒーかすを活用したビジネスモデルの幅も広がります。
法を変えるのは一筋縄ではいきませんが、
環境意識が高まり、コーヒーかす活用を考える事業者が増えれば、日本も制約が改正されるかもしれません。
そうした行動変容を起こすためにも、Value wayでは、まずは今できることから取り組んでいます。
「地域や行政と協力した実証実験」や「再生製品の開発」を通して、「活用できないもの」から「活用できるもの」という認知拡大に繋げていきたいと思います。
次回、Value way が現在取り組んでいることについてご紹介します。
ライター:小川
情報通信機器を主体に製造するメーカーで勤務中。入社から3年間営業を経験し、現在は新しいサービスの商品企画や売り方改革を担当。休日はカフェでゆっくり一息つくのが癒し。そんな癒しの時間の裏側で起きている気候変動の課題に向き合うValue wayの取り組みに共感し、プロボノ活動中。一緒に循環社会を創造する仲間探しを目指してnoteを発信!