釜石大観音仲見世通り:16歳・高等学校1年生のローカル起業家がイベントスペース「crush on」を創るべく奮闘するシャッター商店街
高等学校1年生の頃の自分が何をしていたか。思い出せる人々はどれだけいるだろうか。筆者にとって高等学校1年生の頃は、釜石市に通い始めた頃であり、ある種大きな転機と言っても過言ではない時期だった。
地元という言葉が意図するスコープを自治体に限定するならば、筆者は地元の高等学校に行かずに釜石市を選んだ。実質的に一人として知っている人間のいない学校を選んだ形である。
東京都などの大都市であれば、自分の住んでいる自治体以外の自治体にある学校に通うのは、何らおかしくない、いっそありふれた話だと思う。しかしながら、弩がつくほど田舎の岩手県では、高等学校が1校しかないような小さな自治体に住んでいなければそうではない。
もっともそれは当時の環境を指した表現で、人口減少が進む中にあって、高等学校が1校しかない自治体は増えつつあるが。何にせよ、30分程度の通学時間で行ける同じ自治体にある高等学校ではなく、1時間程度の通学が必要になる高等学校を選ぶ人間は、とても珍しかった。
現代だとN高のようなオンライン高等学校があるので、筆者のような選択は珍しいというよりも非合理的といった認識を持たれそうな印象を受ける。筆者の生徒時代にN高があったなら、恐らくN高を選んでいたと思う。
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そんな未知の環境への通学生活を3年間続け、以降も何かあれば訪れるようになった釜石市は、筆者にとって第2のふるさとと言って良い町である。ちなみに通学生活をしている頃の話は、以前少しだけ書いている(全くの余談になるが、本noteにおいて2番目に多く読まれている記事である)。
さて、そんな釜石市で、高等学校1年生の生徒が起業するという話題を目にしたのはつい数日前だ。それも仲見世通りという昔の賑わいを失った商店街に店を開くという。
9月28日は、たまたま釜石市を訪れる必要があった。良い機会である。開店準備が行われている仲見世通りに立ち寄り散策してみよう。そう思い、車を走らせた。
16歳・高校1年生の起業家が創るイベントスペース「crush on」のある釜石大観音仲見世通りの現在
釜石大観音仲見世通りは、釜石市の南側、平田地域にある。平田地域は、鉄の博物館や岩手大学のサテライト施設の他研究センターがあるなど、釜石市の学術・研究分野が集まった地域という顔を持っている。
釜石大観音仲見世通りは、釜石市のランドマークである釜石大観音のお膝元にある商店街であり、昔はとても賑わった場所として知られる。昨今は年明けに初詣に訪れ人々が訪れるくらいで、日頃から閑散としており、店々の大半が閉店し、シャッター街になっている。
東日本大震災以降、ほとんど廃墟街に近くなっている仲見世通りを再生しようと様々な人々が尽力しており、直近ではマルシェを開いて関係人口の増加を図っている。一方で、再生施策の一つとして開店したカフェが2024年初めに閉店するといった形で、厳しさも露わになっている。
もっともco-ba KamaishiやLIFULL FaMといったシェアオフィスは現存しており、先述したようにマルシェが開かれ、関係人口は着実に増加しているため、後退は止められつつあるのは確かである。また、高等学校1年生による起業・開店も、そうした繋がりの中で生まれたものだ。
仲見世通りの入り口にある大鳥居をくぐって釜石大観音仲見世通りに入る。目の前に広がるのは、ほんのりとした絶望感を漂わせるシャッター街の姿である。遠目にも建物の寂れが見て取れ、空は晴れているのに通りにはほの暗さが感じられる。
仲見世通りを歩き進めると部分的な崩壊を見せる家屋や閉店の知らせを掲載した建物が見られ、寂れが何によってもたらされているかを感じさせられる。sofa cafeには2度ほど訪れた経験がある。田舎では見られないような美しい料理の数々が楽しめて素敵なカフェだった。
しかし続かなかった。何事も続けなければ意味がないなどとは思わない。けれども仲見世通りの再生の一端を担っていたお店の閉店は、やはりダメなのかと失望感を生み出すには十分すぎた。建物裏に掲示されているアートもどことなく寂しさを漂わせている。
さりとて仲見世通りのすべて絶望に染まっているわけではない。co-ba KamaishiやLIFULL FaMといった再生の芽はまだ息づいているし、すべての建物が閉まっているわけでない。
建物の入り口を開放し、中で仕事に勤しむ人々の様子を伺わせる建物群が見られる。仲見世通りの入り口から見られた絶望的な景色は、仲見世通りを歩いて行く中で薄れていくのだ。
今回、高等学校1年生が起業し、開店を決心したグッズ販売・イベントスペース、加えて母親の古着屋もその一つだ。現在は開店準備であるが、建物の外観はできつつある。ガラス張りの入り口には「さつきちゃんのお店」とポップでかわいらしい文字が描かれている。
高等学校1年生が店主となるグッズ販売・イベントスペース crush onは開店に向けてCAMP FIREでクラウドファンディングを行っている。
集まった資金は、開店準備資金や資金提供者への商品、あち券(あちらのお客様からです券)などの提供に活用される。
若者が去って行き、人々の高齢化とともに町全体が老衰していく昨今、若者が声を上げて若者を呼び寄せる場所を作る。それは、町にとっての希望そのものに違いない。そんな声に呼応するように、CAMP FIREを見て心に火をつけた人々が支援に動いている。
crush onのクラウドファンディング・プロジェクトは、釜石市を盛り上げるためのプロジェクトである。一方で、すっかりと廃墟と化してしまった商店街を再生する希望を生み出すプロジェクトでもある。この火を絶やさないように、ぜひ寄付に協力して欲しい。
crush onから少し歩くと、不思議なグッズ無料提供コーナーと釜石大観音へと続く門がある。
門の前からは仲見世通りが一望できる。この通りが、再び活気に溢れる日を願ってやまない。たまたま出会った猫もそう思っているのでなかろうか。
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