USCPAが活躍するFASのM&A業務、その実態は?その2 職場環境編
USCPAのキャリアパスとして、最高峰の一つとして挙げられるM&A業務。
最近ではM&A仲介業者が増えてきていますが、それ以前からM&Aのメインプレーヤーである、大人気のFASについて解説する第2弾。
なお、本稿では、Big 4の大手監査法人グループ(KPMG、Deloitte、PwC、EY)のFASに限定して話を進めます。
なお、当記事の第一弾は以下です。こちらも併せてご覧下さい。
FASで働く人たちの雰囲気
FASはどこも業務が似ているため、あるFASから別のFASへ転職する人も多いです。中には、4社ある中で、3/4或いは4/4を制覇している人や、出戻りをしている人などもたまに見受けられます。
合う・合わないは誰にでもありますが、FASの場合、ハマる人にはそこそこ居心地がいい職場と言うこともできます。激務さえ耐えられれば。
基本的には人もよく、きちんと教えてくれる上司なども比較的多いように思います。最も、M&Aの案件の増加に伴い、忙しすぎて手厚く研修を重ねて行くと言うよりは、いきなり実戦で、案件に打ち込まれてぶっつけ本番で覚えて行くスタイルです。
最近は新卒採用なども始めたため、研修制度などに力を入れているファームもあるようです。
しかし、良くも悪くも人間関係が希薄な部分があるのがプロフェッショナルファームです。
下っ端の内は積極的に色々な所に顔を出して覚えてもらい、上の人に使ってもらえるようになる必要があります。気に入られると、次々にアサインを獲得できます。ハッキリ言って、使える奴ほど仕事が来て忙しく、実力も上がって行きます。
ちなみに、性格のガツガツっぷりは、
投資銀行>>>>>>>>FAS>>>>>>>>>>>監査法人
と言う感じ。
個人的にはFASはフレンドリーで接しやすい人が多いと思います。
女性比率
昨今のESGの高まりで、どこの会社も表示している「女性比率」と「女性管理職比率」ですが、FASの場合は残念ながら、低いとは言えません。
正確に計算したことはないのですが、感覚では、女性スタッフ率が2割前後、女性管理職は1割前後、パートナーに至っては1~2人いるかどうか、という印象です。
中には、女性管理職比率を開示しているファームなどもあるので、見てみてのもよいでしょう。
どのファームもこの点を気にしてはいて、向上を目指しています。
最も、深夜残業が多い業務の特性上、特に出産後に女性がM&A業務を継続するのは本当に難しく、産休から復帰してもM&A業務ではなくバックオフィス系の業務に移ったりすることが多い印象です。
会社としては、その辺はサポートして行きたいと思っており、働き方改革など色々考慮はしているものの、クライアントへタイトなスケジュールの中でクオリティ高くサービスを提供する必要があるため、中々進んでいないというのが現状のように思います。
仕事の忙しさ
忙しさは、プロジェクトの状況次第の仕事なので、午前2時や3時になることも多々ありますが、案件が動かなくて割と早く帰れることも時々あるでしょう。そんな状況だからか、みんな大好きな口癖が、
「帰れる時に帰っておいた方がいいよ」
です。
辛いのが、案件が動かなくて暇そうにしていたせいで、追加で別の案件にも入れられて、その業務をしていたら、元の案件が急に動き出してしまって、ダブルで案件を抱えるパターンです。
こればかりは読めないことも多いので、事故としか言いようがありませんが、うまくやりくりするしかありません。
ちなみに、僕自身は投資銀行(IBD)に勤めたことはないですが、FAS在籍時に、投資銀行の人たちと共に案件をいくつかやったりして把握している所から察するに、勤務時間は投資銀行よりかはFASの方がマシでしょう。
その分、投資銀行よりも給料は安いですが、もう少し、ちゃんと人でいられます。
投資銀行(IBD)との協業や業務の違い
FASにおいては、CFチームが投資銀行(IBD)と同じ業務を提供しています(FASの業務の詳細は下記の記事を参照)。
つまり、CFチームはクライアント規模は違う可能性はあるものの、プレM&Aのディールを最初から最後まで見れるという環境になります。
一方で、その特性上、CFチームは同じプロジェクトで投資銀行と協業することはありません(相手側のFAが投資銀行ということはあるかもしれませんが)。
その点、TSやCSチームであれば、案件のFAが投資銀行の案件で協業することもあり、密にやり取りすることもよくあります。
FASと投資銀行の大きな違いの一つに、FASはあくまでコンサルティング会社の立場からのアドバイザリー業務である点です。投資銀行のように、資金調達のお手伝いまでは行っていません。
また、Big 4のFASは、監査クライアントからのM&Aの依頼などもあります。その影響から、公認会計士の倫理問題が根底にあるために、一方の考え方に肩入れせず、ファクトを伝えることを心掛けています。要は、「こうするべきです」と勧めることはせず、クライアントが自身で判断を下すための情報を提供するというスタンスです。
ですが、この点が協業しているクライアントや投資銀行を苛立たせることもよくあり、「それで結局、どうすればいいの?」と聞かれるのこともあります(この辺は、踏んだ場数で倫理に違反しない範囲で上手にクライアントへ有用なプレゼンができるようになっていきます)。
ちなみに、CFチームは、投資銀行同様に成功報酬型のフィー体系ですが、その他の部門はコンサルティング会社同様に関与時間×各タイトルごとの単価でフィーを請求します。
会社によっては、やや薄利で数で勝負、と言った所もあるように思います。
FASの給与水準
VPやマネージャーがメインでプロジェクトを回し、アナリストやアソシエイトがそれを補佐する形は、投資銀行と同様です。
投資銀行との大きな違いは、営業チームと案件遂行チームが明確に別れていない所。特に少数でやっているファームはこのパターンが多いです。
最近では一部のファームでは組織の拡大に応じて営業のみを行うVP以上の人が増えてきてはいますが、特にアナリスト・アソシエイトのうちは、案件を回しつつ、空いている時間にパートナーやVP/マネージャーの営業用の提案書作りの手伝いをすることもよくあります。
給料に関しては、投資銀行のような破格な金額ではありませんが、監査法人よりは給料が高く設定されています。昇進していけば、かなりの高水準となります。ざっくりですが、以下のイメージです。
ただし、1点補足しておくと、FASは退職金がなく、退職時に払い出される年金も雀の涙程度なので、その点も考慮すると、給与にはマイナスポイントでしょう。
ちなみに、アメリカでは、パートナーになってから10年間勤続して定年を迎えると、定年後も退職時の給与が年金として保証されると言う話をNYのシニアマネージャーから聞いたことがあります。残念ながら、日本ではこのようなことはないようですが。
さてさて。あなたも、FASへ転職してみたくなりましたか?
「その1 業務内容編」を読んでいない方はこちら:
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