#9 Indifood (静岡県島田市)
2016年1月15日
『今日は一人で呑んで来ます』
同僚の誘いを断ってホテルの大浴場で疲れを癒しながら何となく思い出したのが群馬館林でPROCEEDを見つけた晩のことだった。
昨夜ホテルのフロントで手にした飲食店のチラシを見て『どこかで読んだことがあるコピーだな……』と思い、この店に行けば何か面白いことがありそうな予感がした。
いわゆるダイニングバーと呼ばれるような雰囲気の店で作業ジャケットを羽織った三十路男が一人で飲むにはふさわしくない気もしたが、カウンターに座って飲み始めるとなかなか居心地が良かった。
内装も良く店内には活気があり、料理も美味しい。いい店じゃないかと何杯目かのビールを注文した頃、不意に店員が話し掛けてきた。
『あの~突然こんな事をお聞きするのも何ですが、何のお仕事されてますか?』
は……いきなり何だ……と困惑。
『現場仕事です。出張で転々と……』
さらに彼が尋ねてきた。
『音楽関係の仕事では無いですか……?』
ん……
そのとき彼の顔をまじまじと確認して謎が解けた。
『ヒデキくん!えー!まじか!?』
まさかこんな場所で再会するとは思わなかった。数年前、彼は渋谷のとあるバーで働いていて、ライブイベント等でもよくお世話になっていた。
『そう言えば静岡出身だったね、帰って来てたのか!元気そうで何より!』
今週は現場の状況が思わしくなくこちらの余裕が無いせいか、この町との呼吸も合わないままで金曜日の晩を迎えてしまったが、最後の最後にご褒美が待っていた。
帆立のカルパッチョ
ジャークチキン
牛スジ煮込み(バケット添え)
フレッシュトマトとアボカドのパスタ
ハートランドにレッドストライプに美味しいワイン。
ごちそうさまでした。
今夜のような出来事を偶然とは思わない。
人より少しだけ引きの強さがあるとしても
これまで生きてきた日々の先に今日がある、それだけの事だ。