長編小説 Vaio Stera ~転生先で推し変しかけてる~ 2章#4あーちーちーあーちいいいい!! 物理的炎上回
「ええ!?!?!? 熱い!?!?」
突然のレーザーらしきなにかにフィンが包まれ、創田から手錠がちぎられる。
そして、何故か若干黒こげになったフィンがそこにいた。
「はーい。フィン、そこまで! 色々デスティニーとか感じるのはわかるけど、割と出会って間もない人を口説くのはそこまで!!」
扉から入ってきたのは、None Lose Day。Cat Flying Galaxyのプロデューサーだった。
そこから、顔と砲塔を覗かせていた人物がいた。
「None Lose Dayさん!? これは!? あと、おでゅーさんが天井に!?」
「やっほー」
天井の空いた穴から顔を覗かせるおでゅー。頭のユニットらしきものから、砲台らしきものが見えていた。
「いや親方から連絡があって。一回『なんでフィンが創田君の事を好いてるのか』をフィンの口から吐いてもらおうと思って」
「いや、その作戦は合ってるとは思うんですけど、攻撃が酷すぎません? 若干黒こげですよ?」
「きゅう……」
結構なレーザーを見てドン引きしている創田。フィンは無事なのか、と若干心配していた。
「大丈夫よ。フィンは頑丈だから。砲撃の1つや2つ喰らっても全然死なないのよ」
「初耳ですけどせめてチームメンバーだから大事にしません?」
「いやあ、でもおいたはダメだから」
「いやお仕置きが酷すぎるでしょ」
None Lose Dayのやり方に引き気味の創田。そこで、フィンの方を見ていると、既に起き上がっており、創田はそこでも驚いた。
「あの……無事、ですか?」
「大丈夫……。ダーリンへの、愛で生き返ってこれた……地獄の入口に立ってたけどね」
「ほぼアウトな件について」
「プロデューサああああああ!! 毎度毎度思うけどウチへのお仕置きの度がすぎるでしょ!! もうちょっと手加減しなさいよ!!!」
(いや手加減しろとかそういうレベル?)と創田は思わずにはいられなかった。
「えー? だって、フィンここまでやらないと言う事聞かないじゃん? 教育よ、これは」
「教育の度が過ぎるっていうのよ!! おでゅーも!! なんでチームメンバー砲撃するのよ!!」
「フィン、おいた、めっ」
「あらかわいいね~、ってめっ、じゃねぇから!!」
その後、フィンとNone Lose Dayとおでゅーのやり取りを見ていた創田。その時の印象としては、「お互い気の合う仲なんだなぁ」と感じていた。
そしてその後、ねおんわーるどのメンバーが入ってきた。
「おっつー、ノンちゃん、フィンちゃんから何か聞けた?」
「おっす親方、色々聞けたよー。なんか、輪廻転生がうんじゃらこうじゃら」
「よくわかんないね~、10000年と2000年前から~、的な~?」
「それにしてもなんでフィンさん黒こげなんです……?」
「げっ、フェニカスとその仲間……」
フィンは、黒こげでも分かるほど怪訝な顔をする。
「あー、ダーリンからの誘いじゃなかったら、コラボとか断っていたのに」
「それも、しゃーなしっすよ~フィン氏~。アティクシらいるから気楽に気楽に~」
いつの間にかいた、宇宙浩りゅう。影の薄さで、創田は気づ気づくのに少し遅れた。
「りゅう、アンタもちゃんと過激なお仕置き止める係になりなさいよね。ウチの体が持たないから」
「へいほ~い、考えときま~あす」
「ほんとなんだか……」
やれやれ、といった感じのフィンだった。
〇ー〇ー〇
ねおんわーるどとCat Flying Galaxyのメンバーは時同じくして、コラボ配信を行うスタジオに移動していた。
ここで、None Lose Dayから話が切り出される。
「ルールは事前資料で教えたわよね?」
「あー、それならねおんわーるどにも資料を配っています」
創田はスマホを取り出して、資料を今一度確認をする。
スタジオで行う配信というのは、シューティングゲームだった。といっても協力プレイをするのではなく、それぞれ別のチームに分かれて、対面で撃ち合うというゲームである。
お互いはだるま落としのような円柱の積み重ねを、ハンマーで相手の方に飛ばし、相手プレイヤーへ向けて当てる事を狙うゲームである。
「ようするに、だるま落としみたいなので当てたもん勝ちよね」
「そうね。それで良いと思う」
よっしゃ、フェニカスぶっとばしたろ、意気込むフェニ。
まぁほどほどにね、とNone Lose Dayはある程度諫めていた。
「確かその後、Virtul Battle Royaleの模擬戦をするんでしたっけ」
「そうね、今回はソングバトルをメインに、他はついでといった感じね」
「いや~、そいつは助かりやす。アティクシ、Xe氏程上手くはないので」
「まあね~。わたしはゲームだと容赦ないからね~」
(ぜし……って凄い呼び方だな……)
謙遜するりゅうを見て、(実際どの程度の腕前なんだろう)と思わずにはいられなかった創田。
Cat Flying Galaxyの面々とはフィン以外はまだそこまで交流が無く、創田の中ではどんな人達なんだろう、という考えがあった。そこで創田は、このコラボ中、None Lose Dayから、それぞれどんな人物なんだろう、と聞く予定ではあった。
だが、実際少し聞いてみようと思った。
「りゅうさんは、何か普段ゲームとかやられたりはしますか?」
「アティクシですか? いや~、普段はもっぱらノベルゲー、とかですね~。こう、ストーリーを楽しみたい的な」
「あー、そういうのありますよね。アクションとかはできるのですか? 対戦ゲームとかは」
「いや~、アティクシチームの『ゲーマー』ではあるんですけれども、Xe氏や久遠氏、スノウ氏程目立った上手さはございやせんね」
「な、なるほど……」
「あ、でももも~、……勝負の時は容赦しませんから」
「……、」
「まあ気楽にいきやしょう! お互い、『遺恨を残さない』とは決めてるんで!!」
「遺恨を残さない……?」
「そのうち分かります。あ、りゅうさん入りま~す」
とたとた、と、りゅうはその場を去っていった。
遺恨を残さないとは、何だろう、と思った創田。遺恨とは、このVirtul Battle Royaleでの事なのだろうか。
以前にも、None Lose Dayが『遺恨を残さない』と言っていた事を思い出す。創田。
遺恨。
その言葉が出てくる事は、何かがあったという事なのだろうか。
ここのメンバーを見ていると、別チーム同士でも仲が良さそうに見えている創田。
フィンもチーム内だけで話すのではなく、さりげなくレンやXesyと会話をしていた。
強いのはわかってるから容赦なくいくね、と笑顔で。ただそれは、恨みがどうこうではなく、ただ仲の良い友達との会話に見えた。
遠くからりゅうを見ているが、創田からはフィンとりゅうは仲良さそうに話し合っているように見える。
いわゆる、アイドル番組の撮影現場を見ている気分になったが、そうじゃなくても普通に仲の良い友達同士に見えていた。
どうして仲が良いのに。
……争う事をためらわないのだろう。
そう物騒な疑問を持った創田だったが。
ちょんちょんとついてくる感覚を感じ、その疑問を忘れる。
振り向いてみると、頭に大きなユニットのついた小さな少女が、自身の指でこちらをついていた。
おでゅーだった。
「え、と、なにかな?」
「こんど、さんぽいこう」
「え? ああ、うん」
「あと、みんなともだちなの。みんななかがいいの」
「え……」
「それじゃー」
ふよふよと、その少女はスタジオの方へ入って行った。
(確かあの子はおでゅーといったっけな……)
フィンからそう呼ばれた少女に関してのイメージは、少し過激というイメージがあった。
フィンを軽々飛ばす程の力。そしてレーザーらしきもの。
創田の中には、「兵器」という文字が浮かびあがっていた。
(まさか)とは思い、その考えを振り払う。あんな幼そうな女の子が、とは思う創田。
そこで、None Lose Dayから創田は声をかけられる。
「おでゅーはね、要塞の擬人化なのよ」
「要塞の、擬人化……?」
「そ。あの子は元はね、要塞だったのよ」
「元が、要塞だったって、どういう事ですか?」
正確にはね、と繋げるNone Lose Day。
「私達の世界では、あの子は戦争の要であった要塞の中にあるAIでね。元の世界では、兵器として使われていたらしいの。それが何故か、バーチャルの星海に来た時には人間と化していた」
「人間に、なる……」
「元のプログラムとか調べてみたのだけれど、スノウいわく『人間に近い思考を持っている』らしいのよ」
「それが、バーチャルの星海に来たら人間になるとか、まるっきりSFですね」
「そうね。でも貴方から見たら私達の世界はSFかもしれないわね」
「どういう事ですか?」
そうね、とNone Lose Dayは近くの椅子に座る。
「コロニー曰く、私達の世界は宇宙開拓世界って言われてるらしいの。確かに、私達の世界は、遥か彼方の宇宙までARを通して宇宙を調べてたりしていた。そこから言われているのかもね」
「宇宙開拓世界、ですか」
そう、とNone Lose Dayは繋げる。
「私達の世界ではAR技術が2代目楠咲フェニによって発展化していって、ARを映し出したその先を見る事ができる技術となっていったの。そこから、宇宙への開拓が進んでいって、最終的には火星に居住区を設ける事ができたの」
「2代目楠咲フェニ……? も気になりますけど、火星開拓は、凄いですね!」
そうね、と応えるNone Lose Day。だけどね、と次の返しが来た。
「人類が進んだのはそこまでだったの」
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