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切り花

わたしが小学校に入学してしばらくした頃、母が「お友だちはできた?」と尋ねると、わたしは「ううん、できてない。友だちとかいらん。」と飄々と答えたそうです。今、自分が母になってみると、子どもがこんなこと言ってたらちょっと心配してしまいますよね。母も当時は心配したそうです。

当時の事を思い出しても、ひとりでよく登下校していたし、家に帰ってから誰かと遊ぶなんてこともほとんどありませんでした。ひとりでいる方が好きな子どもでした。何となくだけど、人と一緒にいるのがあんまり好きではなかった気がします。物事に対してもあんまり深く考えない、割と何でもどうでもいい性格だったのかなと思います。

3年生の頃だったか、詩を書いてみよう、という宿題が出ました。思った事を何でもいいから書いていいよ、と先生が仰っていたので、わたしは「花」というタイトルで書きはじめました。

「花はきれい。だけどかわいそう。人間にちぎられたり、水につけられたり。あそこに咲いていたかったかもしれないのに。花はきれいだけどかわいそう。」

今でもはっきりと覚えている詩。思い返すだけでも恥ずかしい内容です。もし自分の子どものノートにこんな詩が書いてあったら、「ど、どした?なんかあったか?」と気にしてしまうと思います。当時の担任の先生はこんな風なお返事をくれました。「そうだね、お花は切られたりしてかわいそうだね。でも私たちの心をよろこばせてくれたりいやしてくれたりするよ。かんしゃしようね。」と。

お返事をもらったことが嬉しかったのを今でも覚えています。それから、感謝してみたい!と思いたって、母の日にお小遣いを持ってお花屋さんへ行き、赤いカーネーションを買って母に贈りました。母が「ありがとう!」と笑顔で受け取ってくれた時、本当だ!花はかわいそうって思ってたけど喜んでもらえるんだ、と初めての体験をしたのでした。

今でも頻繁にお花屋さんへ行きます。何でもない日でも花があると嬉しい気持ちになっちゃうんです。心が豊かになったり、癒される。おしえてくれた先生にも、喜んでくれた母にも、お花屋さんにも、お花にも、感謝する日々です。相変わらず、お友だちはできないけれど。

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