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変革を担う、高度物流/SCM人材を目指してみますか?

はじめに: このNoteの趣旨

本Noteをお読みいただきありがとうございます。このNoteは、SCM(サプライチェーンマネジメント)領域でキャリアを築いている方、特に社会人10年前後の方を主なターゲットとして書いています。日々、実務に追われる中でキャリア形成について考える時間を持つのが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

「次の一歩をどうすればいいのか?」
「自分の役割をどう広げていけばいいのか?」

こうした悩みを抱える皆様に向けて、実務で活用できる視点や、キャリア形成のヒントをお届けすることを目的としています。

今回はその一環として、物流における「高度物流人材」という概念を通じて、SCMプロフェッショナルとしてのキャリアを考えるヒントを提供します。物流を題材としていますが、SCM全体に通じる学びがあるはずです。ぜひご自身のキャリアに置き換えてお読みください。


1. あなたのキャリアの次のステップは?

物流やSCMの実務に携わる中で、以下のような疑問を感じたことはありませんか?

  • 「物流は経営にどう貢献しているのか?」

  • 「自分の役割を広げるにはどうすればいいのか?」

  • 「業務を超えた挑戦をする機会はあるのか?」

昨年度から、JILS(日本ロジスティクスシステム協会)のイノベーション推進特別委員会に委員として参画させていただいています。名前の通り、既存の何かを達成するためではなく、各セクターにおいて尖がったメンバーが招集されて、何か新しいことを社会のためにという観点で議案を精査する中で決めていったのが、「高度物流人材」という新しい人材像の議論です。この概念は、従来の物流部門のイメージを刷新し、現場での実務と経営の視点を橋渡しする役割を担う人材を指します。

物流やSCMの分野は、単なる「受け身の業務」から「経営の中核」へと変化しています。この変化にどう適応し、キャリアを築いていくのか。今回はその一助となる視点を、委員会、通称イノ推の事例をもとに教諭させていただきます。
本稿にある内容は、JILSの書きHPを参考に、委員会での議論の内容も踏まえて執筆しています
JILS 物流変革を目指す全ての方々へ「人材×変革」URL: https://www1.logistics.or.jp/innovation/booklet.html


2. 高度物流人材の定義と従来型との違い

JILSの委員会で議論された「高度物流人材」とは、物流領域にて変革を推進するプロフェッショナルをと定義しました。以下に従来型の物流部門、高度物流人材、CLOの違いを整理しました:

従来型物流部門

  • 役割:受け身のタスク遂行。営業や製造部門の補完的業務。

  • 視点:限定的な現場視点。部分最適化が主。

  • 課題:経営における全体最適に関与しづらい。

高度物流人材:物流の課題や制約は、商品設計・調達・生産・販売などの他機能に起因する要因も多くあり、物流の変革に向けては、各機能が設計から実行まで連携・同期をとりながら推進していく必要があります。そのためにも、経営層・管理職から現場のリーダー層、スペシャリストまで様々な階層で高度な人材が活躍することが求められます。

  • 役割:様々なフィールドにいる

  • 視点:現場と全体を橋渡しする俯瞰力を持つ経営層から、ソリューションを提供する側でのデジタルや打ち手への深い知見。また体系化するためのアカデミックな観点など様々な視点をそれぞれ持つ。

  • 特徴:年次や職責に関係なく、課題解決に取り組む。

CLO(Chief Logistics Officer)

  • 役割:経営戦略に基づき、物流・SCMを最適化。

  • 視点:経営視座で全体を俯瞰。投資判断を含む戦略的意思決定。

  • 特徴:物流領域を経営の中核として捉え、組織全体を動かす。

添付する図では、これらの違いを視覚的に説明しています。高度物流人材は現場と経営をつなぐ重要な存在であり、SCM全体での役割も広がっています。

3. 高度物流人材の具体像:5つのフィールドと支える要素

JILSの委員会では、高度物流人材の役割を整理するために「5つのフィールド」を設定しました。このフィールドは、高度物流人材が活動する主な領域を示しています。

  1. 経営視点での戦略立案
    経営層と直接対話し、SCMや物流の価値を最大化する戦略を描く。

  2. サプライチェーン全体の統合管理
    部分最適ではなく、全体最適を目指したサプライチェーンの設計と運営を推進。

  3. 高度な物流計画の策定
    データ分析やテクノロジーを駆使して、効率的な物流計画を立案。

  4. 現場課題の解決策提案
    現場で発見された課題を的確に捉え、具体的で実行可能な解決策を提案。

  5. 知見の体系化と共有
    組織のナレッジを標準化し、再現性のある仕組みを構築する。

これらのフィールドは、読者の皆様が自身のキャリアを振り返り、「どのフィールドで貢献できるか」「どの領域を強化すべきか」を考える際の指針となるはずです。

さらに、高度物流人材を支える3つの要素も同時に整理されました:

  • マインドセット
    挑戦を恐れず、変化を柔軟に受け入れる姿勢。

  • 環境
    組織として個人の成長を支える文化や仕組み。

  • ケーパビリティ
    実務を通じて培われるスキルと知識。

これらの要素がかみ合ったとき、高度物流人材としての力が最大限に発揮されます。添付する図は、これらを視覚的に理解する助けとなるでしょう。

4. 多様なフィールドで活躍する9人のペルソナ

高度物流人材は、特定の職種や業界に限定されるものではありません。JILSの委員会で作成された9つのペルソナは、物流やSCM領域において「変革を推進する」役割を担う多様な人材像を具体化しています。このペルソナには、事業会社の社員や物流事業者の担当者だけでなく、スタートアップやコンサルタントなど、さまざまなフィールドで活躍する人々が含まれています。

ペルソナの多様性

以下は9人のペルソナの一部を紹介します:

  • 物流事業者の現場担当者
    現場のオペレーションを改善し、効率化を実現するエキスパート。実務経験を活かし、部分最適から全体最適への変革を推進。

  • スタートアップのツール開発者
    最新のテクノロジーを活用し、従来の物流フローに革新をもたらす。技術的な視点から課題解決に貢献。

  • 事業会社のSCM担当者
    データ分析を基に戦略的な物流計画を立案し、経営層との連携を強化。サプライチェーン全体の最適化を図る。

  • コンサルタント
    業界の枠を超えた視点から、クライアントの物流課題を解決。理論と実践を融合し、変革を促進。

これらのペルソナに共通するのは、物流やSCMを単なる「実務の延長」ではなく、「戦略的価値を生み出す場」として捉えている点です。それぞれのバックグラウンドを持つ人々が、個々の視点から業界に変革を起こしています。

多様性がもたらす価値

物流領域における「高度人材」という概念は、特定の役割に閉じたものではありません。それは、事業会社、物流事業者、スタートアップ、コンサルなど、多様なフィールドにいる人々が共に変革に寄与できることを示しています。

添付する表(9人のペルソナ)をご覧いただくと、それぞれの人材像が具体的にイメージできるはずです。これらのペルソナは、読者の皆様自身のキャリアを考える上で、指針やインスピレーションを提供するでしょう。
9人それぞれの詳細は、ウェブサイトからPDFをご参照下さい

JILS 物流変革を目指す全ての方々へ「人材×変革」URL: https://www1.logistics.or.jp/innovation/booklet.html


5. 高度SCM人材としての未来を描く

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。高度物流人材の定義や具体的なペルソナを通じて、「次のキャリアステップ」を考える材料をお届けしました。この章では、皆様が次の一歩を踏み出すための具体的なステップを示します。

次の一歩を踏み出すために

  1. ペルソナを参考に自己分析を行う
    9人のペルソナを基に、自分のスキルや経験を客観的に見つめ直してください。自身の「現在地」を把握し、「次に目指す姿」を明確にすることが重要です。

  2. 他流試合を積極的に取り入れる
    自社や業界の枠を超えた経験が、新しい成長を促します。異業種交流会や外部セミナー、スタートアップとの連携などを通じて、多様な視点を得る機会を作りましょう。

  3. 小さな成功体験を積み重ねる
    現場での課題解決や新しい提案を実行に移し、小さな成功を重ねることで、自己効力感とスキルの向上を実感できます。

6. SCM全体に通じる視点を共に考える

今回の記事では、物流における高度人材の重要性について掘り下げましたが、SCM全体でも同じようにキャリア形成を考えることができます。SCMは、物流に限らず、調達、生産、計画、販売といった広範な領域にわたります。その中で自分の役割を俯瞰し、新たなステップを描く視点を共有したいと思います。

これからも、このNoteを通じて、SCM全体のキャリア形成や業界変革に役立つ視点をお届けします。皆様からの感想や質問、次に取り上げてほしいテーマがあれば、ぜひコメント欄でお寄せください。