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SCMはキュレーションか?— 美術展から考える流れと最適化

こんにちは、梶野透です。このNoteでは、SCMに携わる社会人10年前後の皆さん に向けて、キャリアや仕事の本質について考えるヒントを発信しています。

SCMは、物流、製造、生産管理、購買、需要計画などの多岐にわたる専門領域 を持つだけでなく、経営視点を持ち、全体を俯瞰する力が求められる仕事です。また、業界や国を超えて視野を広げる機会も多く、選択肢が増える分だけ「次のキャリアをどうするか?」と悩むタイミング も出てくるのではないでしょうか。

私自身、10年目を迎えた頃には、SCMの専門領域を深めながらも、「次に何を目指すべきか?」 と考える時期がありました。これまでのキャリアで培ってきたものを活かしながら、次のフェーズに進むためには何が必要なのか? そんなことを考える中で、美術館がヒントになると気づきました。

今日は、趣味の延長線上の記事にで、軽めに書いてみます。目次はこちら


🖼 美術館は思考の整理に役立つ

そんな背景もあり、私は美術館に足を運ぶことを習慣にしています。特に東京に戻って来てから、木曜や金曜の夜は、20時前後まで開館している美術館も多く、仕事終わりに訪れることができる のが魅力です。たとえば、以下のような美術館は遅めまで開館しているため、立ち寄りやすいですね。

  • 森美術館(六本木):23時まで(基本的に金・土)

  • 東京都写真美術館(恵比寿):20時まで(木曜、金曜)

  • 国立新美術館(六本木):20時まで(金曜・土曜)

  • 東京国立近代美術館(竹橋):20時まで(金曜のみ)

東京に戻ってきてから、この環境のありがたさを改めて感じています。美術館では、展示の流れをたどるうちに、「点」が「線」になり、さらに「面」として広がっていく感覚 があります。まるで、バラバラに見えていた情報が、ある瞬間につながって理解が深まるような感覚です。

SCMの仕事も同じで、目の前の業務や部分最適に囚われていると、本質を見失ってしまいます。しかし、全体最適の視点で見ると、バラバラなピースがつながり、システムとしての流れが見えてくる のです。


📸 美術館の『キュレーション』から考えるSCMの本質

先週金曜日、仕事終わりにふと立ち寄ったのが東京都写真美術館の「総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです―」 でした。コロナ前は年パス購入(これがお得なんです!)するぐらい好きな美術館で、また来年度は購入しようかなと検討している、回数としては最も通っている美術館。
写真美術館という名前ですが、今回の30周年記念の展覧会は写真作品ではなく、むしろ「映像」「動画」「インスタレーション」など、時間軸のある作品が中心でした。

いくつか共有させていただくと、

今回は3階から、美術館全体が展示となっています。


本展示の一押しはこちら。詳細は割愛しますが、映像が写真へ。今回の展示の中で、個人的に一番メッセージ性があるなと感じました。
地下一階の入り口。こちらも可愛い。

その中でも、「写真は画像へ、映像は動画へ」 というキーワードが印象的でした。この言葉が示すのは、技術の進化によって「作品の意味合い」そのものが変化している ということ。写真はもはや静止画ではなく、デジタル処理によって情報を持つ「画像」になり、映像は単なるフィルムではなく、インタラクティブな「動画」へと変化しているのです。

ここで思い出したのが、美術館の「キュレーション」とSCMの仕事の共通点 です。

  • キュレーターの役割:展覧会のストーリーを考え、どの作品をどの順番で配置するかを決める。

  • SCMの役割:サプライチェーン全体を設計し、どこにどのリソースを配置するかを決める。

美術展もSCMも、「個々の要素をどう配置するか?」によって、鑑賞者や消費者にとっての価値が決まります。しかし、一方で「全体のストーリー」にとらわれすぎると、各作品(各プロセス)の持つ本来の価値が薄れてしまう というジレンマもあります。

SCMにおける全体最適と個のバランス を考える上で、このキュレーションの視点はとても示唆に富んでいると感じました。


🔄 SCMにおける「全体最適」と「個」のバランス

SCMの世界では、「全体最適」を考えることが重要だとよく言われます。たとえば、JILS(日本ロジスティクスシステム協会)が定義する「高度物流人材」 の概念にも、次のような視点が含まれています。

  • 部分最適ではなく、経営全体を見据えた戦略的な判断ができること

  • 機能ごとの分業を超えて、SCM全体の流れをデザインできること

  • 現場のオペレーションに精通しながら、経営層と対話ができること

これらはまさに、美術館の「キュレーション」と共通する部分があるのではないでしょうか?
美術展とSCMの共通課題

  • どの作品を配置するか?(どのプロセス・機能を強化するか?)

  • どの順番で見せるか?(どの情報を優先的に扱うか?)

  • 来場者にどんな体験を提供するか?(顧客やサプライヤーにどんな価値を提供するか?)

こうした視点を持つことで、SCMの仕事そのものが、より創造的で価値のあるものになるのではないかと思います。

※参考までに、過去の記事を載せておきます


💡 おわりに

東京に戻ってきてから、美術館に通う機会が増えました。美術館での体験は、SCMの仕事にも通じるヒントを与えてくれます。

美術展のキュレーションが「全体のストーリーを考えながらも、個々の作品の魅力をどう伝えるか?」 を重視するように、SCMも「全体最適を考えながら、各プロセスの価値をどう最大化するか?」 を考える仕事です。

この記事が、SCMの仕事をより広い視点で捉えるきっかけ になれば嬉しいです。