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令和6年度 弁理士 論文式筆記試験(選択)「理工V(情報理論)」 非公式過去問解答

はじめに

本投稿は有料となっていますが、有料部分にはコンテンツはなく、無料ですべてご覧いただけます。

本記事は速報版につき、無料で公開しております。

本記事は、令和6年度弁理士試験論文式筆記試験(選択科目)のうち、「理工V「情報理論」について、非公式に筆者が作成した解答例(およびメモ)です。試験問題は、下記の弁理士試験に関する特許庁サイトから参照が可能です。

https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/index.html

なお、内容にはできるだけ誤りがないよう注意しながら執筆していますが、万一「おかしいんじゃないかこれ?」といった箇所がありましたら、コメントいただければ幸いです。可能な限り加筆修正等させていただきます。

各問題の解答例

1: ハミング符号(40点)

(1) $${ wH^t = 0 }$$ であるから、

$$
\begin{align*}
& (\begin{matrix}
u_1 & u_2 & u_3 & u_4 & c_1 & c_2 & c_3
\end{matrix})\left(
\begin{matrix}
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
1 & 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1 \\
\end{matrix}\right)^t \\
& = (
\begin{matrix}
u_4+c_1+c_2+c_3 & u_2+u_3+c_2+c_3 & u_1+u_3+c_1+c_3
\end{matrix}) \\
& = 0 \\
\end{align*}
$$

すなわち、

$$
\begin{align}
u_4 + c_1 + c_2 + c_3 & = 0 \\
u_2 + u_3 + c_2 + c_3 & = 0 \\
u_1 + u_3 + c_1 + c_3 & = 0 \\
\end{align}
$$

である。

式$${(1)}$$と$${(2)}$$ の和から、

$$
c_1 = u_2 + u_3 + u_4
$$

を得る。また、式$${(1)}$$と$${(3)}$$の和から、

$$
c_2 = u_1 + u_3 + u_4
$$

を得る。さらに、$${3}$$ つの式の和から、

$$
c_3 = u_1 + u_2 + u_4
$$

を得る。

(2) 

$$
(\begin{matrix}
u_1 & u_2 & u_3 & u_4 & c_1 & c_2 & c_3
\end{matrix}) = uW
$$

であるから、前問の結果を用いて、

$$
\begin{align*}
& uW \\
& = (\begin{matrix}
u_1 & u_2 & u_3 & u_4
\end{matrix}) W \\ 
& = (\begin{matrix}
u_1 & u_2 & u_3 & u_4 & u_2+u_3+u_4 & u_1+u_3+u_4 & u_1+u_2+u_4
\end{matrix}) \\
& = (
\begin{matrix}
u_1 & u_2 & u_3 & u_4
\end{matrix})
\left(\begin{matrix}
1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 0 & 1 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\
\end{matrix}\right)
\end{align*}
$$

したがって、

$$
W = \left(\begin{matrix}
1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 0 & 1 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\
\end{matrix}\right)
$$

(3)
受信符号と検査行列を用いて、

$$
\begin{align*}
& yH^t \\
& = (\begin{matrix}
1 & 0 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1
\end{matrix})
\left(\begin{matrix}
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
1 & 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1 \\
\end{matrix}\right)^t\\
& = (\begin{matrix}
1 & 0 & 0
\end{matrix})
\end{align*}
$$

であり、得られた値 $${(\begin{matrix}1 & 0 & 0\end{matrix})}$$ は、検査行列$${H}$$ の$${4}$$列目に一致する。従って、$${y}$$ には $${4}$$ 番目の符号に誤りがあり、受信すべき符号は $${(\begin{matrix}1 & 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1\end{matrix})}$$ であったことがわかる。

従って、元の情報記号は $${(\begin{matrix}1 & 0 & 1 & 0\end{matrix})}$$ である。

(4)
本問の符号は、単一誤り検出・訂正符号であるから、受信語に含まれる誤りが高々$${1}$$符号語になる確率を求めれば良い。

すなわち、

$$
\begin{align}
P & = (1 - 0.1)^4 + {}_4C_1 (1 - 0.1)^3 0.1^1 \\
& = 0.6561 + 0.2916 \\
& = 0.9477 \\
\end{align}
$$

(訂正:2024/07/25 4語ではなく7語で計算すべきでした。)

$$
\begin{align}
P & = (1 - 0.1)^7 + {}_7C_1 (1 - 0.1)^6 0.1^1 \\
& = 0.4783 + 0.3720 \\
& = 0.8503 \\
\end{align}
$$

との計算から、求める確率は $${0.948}$$ $${0.850}$$ となる。

2: ハフマン符号(40点)

(1) 
長さ$${1}$$の場合、情報量は

$$
\begin{align*}
& -1/2 \log(1/2) - 1/4\log(1/4) - 1/4\log(1/4) \\
& = -1/2 \times -1 - 1/4 \times -2 - 1/4 \times -2 \\
& = 3/2 \\
\end{align*}
$$

従って、長さ $${K}$$ の場合の情報量は、$${3K/2}$$ ビットとなる。

(2)
単純に計算する。

$$
\begin{alignat*}{2}
P_{aa} & = 1/2 \times 1/2 & = 1/4 \\
P_{ab} & = 1/2 \times 1/4 & = 1/8 \\
P_{ac} & = 1/2 \times 1/4 & = 1/8 \\
P_{ba} & = 1/4 \times 1/2 & = 1/8 \\
P_{bb} & = 1/4 \times 1/4 & = 1/16 \\
P_{bc} & = 1/4 \times 1/4 & = 1/16 \\
P_{ca} & = 1/4 \times 1/2 & = 1/8 \\
P_{cb} & = 1/4 \times 1/4 & = 1/16 \\
P_{cc} & = 1/4 \times 1/4 & = 1/16 \\
\end{alignat*}
$$

(3)
なっていない。例えば記号列 $${ab}$$ に対して符号語 $${3}$$ を割り当てることで、より平均符号長を短くすることが可能であるため。
(なお、平均符号長は $${7/4 = 1.75}$$ である)

(4)
最短符号の例として、ハフマン符号を構成する。

本問では$${4}$$元ハフマン符号を構成するが、記号列は$${9}$$種類あり、記号列の個数$${q = 9}$$とアルファベット数$${r = 4}$$ に対して $${q = 1 \pmod{r-1}}$$ を満たさないから、これを満たすようダミー記号 $${x}$$ を追加して考える。

まず、出現確率の低いほうから$${4}$$つ、$${bc, cb, cc, x}$$ を選び、符号 $${0, 1, 2, 3}$$ を割り当てる。これらを縮退させた記号を $${X_1}$$ とすると、その出現確率は $${1/16 \times 3 + 0 = 3/16}$$ に相当する。

次に、改めて出現確率の低いものを $${4}$$ つ、$${bb, ab, ba, ac}$$ を選び、符号 $${0, 1, 2, 3}$$ を割り当てる。これらを縮退させた記号を $${X_2}$$ とすると、その出現確率は $${ 1/16 + 1/8 + 1/8 + 1/8 = 7/16}$$ に相当する。

最後に、残った記号列 $${ca, X_1, aa, X_2}$$ に符号 $${0, 1, 2, 3}$$ を割り当てる。

こうして以下のような符号が生成される。

$$
\begin{align*}
aa & \rightarrow 2 \\
ab & \rightarrow 31 \\
ac & \rightarrow 33 \\
ba & \rightarrow 32 \\
bb & \rightarrow 30 \\
bc & \rightarrow 10 \\
ca & \rightarrow 0 \\
cb & \rightarrow 11 \\
cc & \rightarrow 12 \\
\end{align*}
$$

また、この符号の平均符号長は、$${ 1/4 \times 1 + 1/8 \times (2 + 2 + 2 + 1) + 1/16 \times (2 + 2 + 2 + 2) = 13/8 = 1.625}$$ である。
(参考:(3)の値より小さく、$${K=2}$$ の場合の (1) の値を $${1}$$符号あたりの情報量$${2}$$ で割った $${3/2}$$ を下回っていないことを確認)

3: 用語説明 (20点)

以下の説明は、必ずしも辞書的な定義等にはなっていないものがあるが、試験の場において答案を作成する場合にはそのような「品質」の解答を期待するのは現実的ではないうえ、そのような高品質の解説は教科書や情報源となるサイト等においていくらでも参照可能である。

そこで以下は、筆者が個人的に「このくらい書けていれば十分では」という程度の内容としている。基本的には、持っている知識に基づいて書いた上で、その後定義や解説を参照して誤りがないか確認し、必要な箇所は加筆修正をしたものである。

「RSA 暗号」
いわゆる公開鍵暗号において用いられる暗号化方式の一つ。素因数分解の計算困難性に依拠した暗号で、暗号化に用いる鍵と、復号に用いる鍵を異なるものとできる点に特徴がある。

「ナイキスト間隔」
連続信号を離散化する際、必要な周波数帯域の信号を表現するために、そのサンプリング間隔は十分に小さいものでなければならず、これをナイキスト間隔という。具体的には、必要な帯域の上限周波数 $${f}$$[Hz] に対し、$${1/2f}$$[s] と求められる。

「HTTP Cookie」
いわゆる Web サイトを構成するサーバが、アクセスしてきたユーザに対して返す、サイト独自の情報を含んだ小規模のデータを指す。サービス提供におけるセッションの管理や、広告提示のためのユーザ行動のトラッキング等に用いられる。

「ワンタイムパスワード」
認証に用いるパスワードをその場限りの使い捨てとする方式。パスワードが窃取された場合であっても、そのパスワードはすぐに無効となることから、安全性を高めることができる。

「エントロピー符号」
情報源シンボルの出現確率、ひいては情報エントロピーの量に基づいて構成される符号。情報エントロピーに基づき、情報量の多い符号に短い符号語を割り当てることで、より効率的な符号となることが期待される。ハフマン符号、算術符号が代表例。

以上

解答は以上です。

本記事は速報版につき、無料で公開しております。近日中に内容を精査した上で、有料化する予定です。

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