「ネイティブはこう言う」けど使えない
最近,ずいぶんと自分の感覚が変わってきたと思うのは,「ネイティブはこう言う」系の,ちょっと気の利いた言い回しとして紹介される英語表現の捉え方です。
以前は,「なるほど,そんな言い方があるのか,おもしろい」という捉え方でした。「ネイティブはこう言う」系の表現には,ノン・ネイティブ・スピーカーがたどたどしい英語で言ったらさぞかし滑稽だろう,というものも珍しくありませんが,それでも,あわよくば,自分でもちょっと試しに使ってみたい,という気持ちにはなったものです。
ところが,最近,某所で「ネイティブはこう言う」系の話が出たときに,反射的に「ああ,つまり使えない表現ってことね」と思ってしまう自分に気が付きました。
どういうことかと言うと,私の英語との付き合い方が変わってきたということなのだと思います。
私が今英語を実務で使う相手は,授業でTTをするネイティブ・スピーカーを除けば,ほとんどがタイの連携校の先生たちです。また,今はコロナ禍で停止していますが,ワンショットで学校訪問に来られる海外の学校も,ほとんどが非英語圏から。昨年度はマレーシア・韓国・中国からでした。
とすると,当然,相手もノン・ネイティブ・スピーカー。こちらが昨日今日覚えたような「気の利いた」表現を使っても,相手が(正しく)理解してくれる可能性は低く,コミュニケーションを阻害するリスクが高まるだけです。実務を進めるために英語を使う以上,余計な不理解や誤解は避けて,間違いなく伝わる表現こそが「使える表現」なのであり,それが,ネイティブ・スピーカーっぽいかどうか,気が利いているかどうか,というのは,どうでもよい話です。
じっさい,タイの先生たちとやり取りする中で,私の意図がうまく伝わらなかったり,逆に先方の意図がつかめなかったり,という経験を何度か繰り返す中で,徐々に「この範囲の表現を使えばわかってもらえるな」というのが,おそらくお互いに分かってきた経緯があります。
たとえば,行程を確認し,「では,15分後にここで再集合でよいですか?」というような話の後で,特に何も考えず,Let's go with the plan. と言ったのですが,「え?今から移動するの?」という反応をもらって,I mean, I agree with the schedule. などと言い直した経験があります。
そういうわけで,「ネイティブはこう言う」系のものに,以前のようには心惹かれなくなっている現状です。
もちろん,英語を教える立場としては,どんな表現でも知っておくのに越したことはないので,「専門教養」として頭に残しておきたいとは思うのですけれど,「理解にとどめる」場合が多くなっています。
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