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まぶたを閉じて愛のかたちを感じたい


『ウィステリアと三人の女たち』(川上未映子さん)

単行本を読んだ時、好きすぎて呼吸をするのを数秒忘れた。どれくらい好きかというと冒頭をまるごと読書ノートに書き写すくらい。お気に入りのカクノ、インキの色はブルーブラックで、一文字一文字書き写した。

写経と似たようなものを感じるので、勝手に〈写経〉だと決めている。わたしの気を鎮めるひとつの作業だ。


「彼女と彼女の記憶について」の冒頭(9ページ)は…

記憶に、もしもかたちというものがあったとしたら、箱、っていうのはひとつ、あるかもしれないなとは思う。


「記憶」「かたち」「箱」「ひとつ」で、こういう文章が出来上がるなんて……。川上未映子さん好き!すぐにノートを取り出した。


こんなにゆっくり字を書いたのは久しぶりだ。ボールペンで書く時と違って気持ちがすっと落ち着く。万年筆は魔法の文具だとおもう。書くことに、とても集中することが出来るから。


『ウィステリアと三人の女たち』の単行本を読んでから文庫化されるのをずっと待っていたので、新刊のお知らせが届いた時に小躍りした。藤の花が咲く季節に発売されてよかったなぁ…思う。表紙ある花はきっと藤で、しかも帯まで藤色で凝っていて読む前から心がときときする。


藤棚の下 木漏れ日がさす場所で、目を閉じるとこの本を読めたら最高なのに…。窓を開けて目を閉じて藤棚がある公園を思い浮かべながら読もうと思う。




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