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アニメ『サマータイムレンダ』をみた(ネタバレ感想)

なるほど、これは上質なホラー&SFジュブナイルだった

いつの時代にもティーンエイジャーに響く作品というものは生まれ続けていて、そういった作品に対してど真ん中の世代で巡り合った時のインパクトはものすごい。僕なんかは「女神異聞録ペルソナ」や、高畑京一郎「タイム・リープ あしたはきのう」がその一つだったりする。

それから、そういった作品はSF、ホラー、現代、夏が良く似合う。むせかえるような暑さで、夏休み。ひと夏の冒険をするには絶好の舞台。
現実そっくりな舞台設定の中で、主人公の少年少女は奇妙な事件に遭遇して、大人達に頼らずに事件に挑み解決する。

だけど現実の自分には何も起こらないというのに!
現代が舞台だからこそ容易に自分と比較してしまって、ひたすら眩しかった。

サマータイムレンダ
『サマータイムレンダ』は、そんな経験を思い出しながら一気に見終わった作品だった。
そう、ティーンエイジャーに響く作品というのは結局アラフォーにも刺さってしまうのだ。今度は思い出がエッセンスになる。それに、そもそもそういった作品を作られているのもまた自分に近い世代の大人なのだから。

上でも書いたように、『サマータイムレンダ』はジュヴナイルに相応しい全部の要素が詰まっている。
SF、ホラー、現代、夏。
もっと掘り下げると、離島、土着信仰、風土病。
クトゥルフ的要素、スワンプマン。
タイムリープ!死に戻り!頼れる親友!謎の味方!
数少ない大人の理解者!!周回によっては味方になる敵!!負けヒロイン!!終盤に戦闘能力を得る主人公!!!
こんなの面白くないわけがないじゃないですかーー!!

とはいえこんだけの要素をほんとに詰め込むと消化不良になってしまいそうなのに、きちんと作品として成立させた構成力は見事というしかない。

ここから先は、『サマータイムレンダ』の良かった点、気になった点を挙げてみる。

はちゃめちゃにやられる主人公が好き
いきなりだけど僕はズタボロになる主人公が好きだ。ズタボロどころか、ぐっちゃぐちゃの肉片になるレベルだとなお良い。
『3×3アイズ』の八雲とか超好きなんだ!19巻くらいまでは最高の漫画だった!『無限の住人』の万次とかもいい。
その派生として「死に戻り」系のタイムリープも好き。主人公だけじゃなく仲間も壊滅させられるし、孤独感と終盤の逆転を効果的に演出できるのがメリットだ。
『サマータイムレンダ』の主人公はその「死に戻り」能力を得ている。
一方で、近年ループものの物語が世の中に溢れかえってきた。死んで過去の時間に戻る程度では驚かない時代になってしまった。
ところが本作の面白いところは、途中で死に戻り能力を見抜かれ、補足されてしまうところ。死に戻りが見抜かれてしまう作品は他にもあれど、ここまで利用されてしまう作品はまだあまりないんじゃないだろうか。
これによって、終盤に気の抜けない展開が生まれている。うまい。

主人公がかしこい
かしこいというのは頭脳の話だけじゃなくて、「愚かな行動をしない」「馬鹿な発言をしない」というのも含んでいる。

どう考えても罠と思えるところに無策で飛び込んでいって死ぬ、仲間になりうる人物とうまくコミュニケーションができず結果協力が得られず死ぬ。重要なアイテム・キーワードを人に見せるのを後回しにして死ぬ。
こういうパターン、結構あるあるで、トンチキな行動をするキャラになかなかストレスが溜まるんだけど、本作の主人公はそういうシーンがあまりない。他のキャラクターもかしこい。

やはり舞台設定
「零」とか「SIREN」とか和ホラーが好きだ。離島で、土着信仰があって、風土病があって、夏の湿気を3倍増しにするようなジメジメ感が最高。
「排他的な村人」まで入れちゃうと結構しんどくなるから、その辺の要素が無いのはいいバランス感覚だと思った。

主題歌
「星が泳ぐ」が本当にすばらしい。夏のけだるさ、青春や切なさを感じるだけじゃなく、ゆったりとした爽やかさが、上記の和ホラーの恐怖感を引き立てるのに一役買ってると思う。
対して、二期の「夏夢ノイジー」は悪くはないけど、一期のテイストで見続けたかったかな。逆転していく展開にも合ってはいるんだけど、「シュタゲ」系の手癖が出てしまったかなと感じた。

意外と強力で個性的な仲間
朱鷺子ちゃんが特に面白い。影を操る意外な戦闘能力。パスを切ってもらったとはいえ、そうはならんやろって思ってしまった。
それから影ミオ。包丁が得物なのもおいしすぎるし、人間澪とのやりとりがすごく良かった。そうそう、人間の内面との葛藤的な要素が盛り込んであるのもこの作品のすごいところた。Fateの桜のような雰囲気もあり。
根津さんは言うまでもない。ラブ。
他の仲間もみんな好き。
本作はバトル展開にしない方向性もあったと思うけど、好意的に受け止めている。

結末について
結末はオールリセット&ハッピーエンドだった。リセットされず生き残った人たちで生きていくのも美しいと思っていたんだけど、ちゃんとそうなる理由付けもできていたし、ラストの思い出すシーンでもしっかり泣いてしまった。

そう、思い出すシーンがあるからこそ、このオールリセットを単なるご都合展開として決着させず、大きな問いかけを投げかけた秀逸な結末にしていると思う。
影ウシオの記憶が蘇った(?)潮は何者なんだろう?平行世界を移動した慎平は本人と言えるのか?記憶まですべてコピーされた影は同一人物とは言えないのか?
作中で慎平は自分なりに結論を出していると思うけど、視聴者に対しては謎かけされたままだ。
この読後感がまた良いな。

夏が嫌いになってたけれど、子供の頃みたいにまた少し好きになった。



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