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【創作エッセイ】アイドルになれたら㉛
※作中に登場する団体や固有名詞等は、現実とは一切関係ありません。全て「うゆ」の夢をもとに書かれたフィクションです。
誰が悪い?
Side of ルイ
社長「じゃあ、うゆが歌ってくれと言ったら?」
私の脳内で、何かが鳴り響いた。地鳴りのような、雷のような、唸り声が。
本当に何もわかってない、この曲の本質を。うゆの苦しみを。
ルイ「…うゆがそう言ったんですか?」
恐る恐る聞くと、社長はソファの背もたれに背中を預け、足を組み替えた。
社長「いや、まだ了承はないんだけどね。でもきっとOKしてくれるはずだし、それまで説得するつもりだよ」
ルイ「でも、うゆもだいぶ頑固ですよ。特にWellBeeのことになると」
社長「うゆも大人だ。話せばわかってくれるだろう、これもWellBeeのためだってことが」
やんわり諭したつもりだったが、どうも効かないようだ。
ルイ「うゆはこの曲にお金を払ってほしくないんですよ。WellBeeのために作った曲なら、発売前に無断でアップしたりしないじゃないですか」
社長「でも結果的にこれだけ大きな話題になってるんだ。発売したらきっと爆発的な反応になるぞ。ルイも良い曲だと思うだろう?」
どこまで自分本位なのか、はたまた楽観的なのか。呆れて言葉を出すのも面倒になってきた。
ルイ「…良い曲だとは思いますけど、歌いたいかどうかは別です。私は うゆが発売したがらない限り歌いませんし、歌うとしたら うゆのソロ曲にすべきだと思います」
率直な意見をぶつけてみる。社長がいい顔しないのはわかってたが、はっきり言わないと平行線のままだ。
そして勿論、いい顔はされなかった。
社長「じゃあもしこのチャンスを逃して会社が傾いたらどう責任とるんだ?うちも利益で動く企業なんだから、評判が落ちたら潰れるんだぞ?」
急に態度が変わった社長に困惑したが、言い分もわからなくはない。でももう、私たちも急に潰れるほど弱小グループではないし、献身的に支えてくれるWeBelieveのことは強く信頼してる。
ルイ「そんなにすぐ潰れそうな状況なら、そもそもアルバムもリリースできないんじゃないですか?それとも私たちが今まで出してきた結果に不満があるってことですか?」
もう引いてはいられない。こちらにもWellBeeとして精一杯活動してきたプライドがある。それに、うゆをこの世界に巻き込んだ責任も私にある。とにかく今は負けていられない。
その後少し話をした後、正午を知らせる放送が流れた。
社長「…今日はここまでにしよう。長らく引き留めて悪かった。作業に戻ってくれ」
目を合わせずにそう言うと、社長は席を立って出ていった。広い部屋にひとり取り残され、持ってきたアイスティーの氷も全て溶けてしまっていた。
ルイ「…何なの、もう」
キャプション
「U-MELLOD」(ユーメロディ)
由来:「君(U)に向けて(-)音楽(MELLOD)を届ける」という意味を持つ5人組ボーイズグループ。
どんなコンセプトも消化するため、天才アイドル集団という異名を持つ。
ファンダム名は「U-HALMONY」(ユーハーモニー、通称ユハモニ)。
・ジュンホ:95年生まれ。長男。メインラッパー。
・シウ:98年生まれ。リードボーカル。
・ジョンソク:99年生まれ。リーダー。メインボーカル。
・ジヒョン:00年生まれ。メインダンサー。
・チャンミ:01年生まれ。サブラッパー、ビジュアル担当。愛称はローズ。
「WellBee」(ウェルビー)
由来:「音楽を通じて”自分らしい豊かな生き方”(=ウェルビーイング)を実現する」「全てをこなすオールラウンダー集団になる(doing WELL + BEcomE)」の意味が込められた5人組のガールズグループ。
現実に少しだけ幻想が混ざったような世界観を得意としており、ダイナミックなダンスと繊細かつ緩急の効いた歌声に定評がある。
ファンダム名は「WeBelieve」(ウィービリー)。
・レミ:99年生まれ。長女兼リーダー。ビジュアル担当。リードダンサー。
・うゆ:01年生まれ。WellBeeの音楽PD。リードボーカル。
・ルイ:02年生まれの01Line(早生まれ)。メインダンサー兼サブラッパー。
・カヤ:04年生まれの03Line(早生まれ)。メインラッパー。
・ヒヨ:04年生まれ。マンネ。メインボーカル。