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日記35

自分の心の中で、ウゴウゴしている感情を発見して驚いている。

他人の輝かしい半生を偶然耳にしてしまった。僕はデスクワークをしていて、同じ部屋で、別の同僚が誰かとおしゃべりしている。よくある状況だ。なんでか、そのときはその会話がよく僕の耳へ届いた。僕が無意識のうちに耳をそばだてていたのかもしれない。

その同僚は、とても充実した研究員としての側面も持ち合わせていた。
自分の特許(!)を持っていて、その技術が最新のテクノロジーの発展寄与しているのだと。学会で発表したりしているらしい。しかも1000万クラスの良い車を所有している・・・

僕は率直に、嫉妬したのだと思う。心の中が赤黒いグラデーションに変化していくのを感じた。嫉妬!アカデミックな生活への羨望、経済的な成功への妬み、そんなものが心の中で代わる代わる姿を現し、そして海中へと没していく。しばらくそんなモグラ叩きのような状況にあった。僕は岸に立って、赤黒くうごめく海を眺めていた。どうすることもできない。ただ時折顔を出す嫉妬の海坊主を見ていることしかできない。やっと平穏になったかと思えば、また次の瞬間に別の海坊主が顔を出す。そのたびに僕は眉間にしわを寄せ、キッと一瞥をくれてやる。でも、そんなことをしても空しいだけだ。

僕自身が人生の中で、捨て去ってきた価値観の数々をコレクションしている人に対して、こんなことを感じるなんて。僕は途端に自信がなくなった。グラグラと土台が揺らいでいる。揺らいでいながら、それでも僕は、僕自身の生活をやっていくしかない。

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